求人情報

スペシャリスト・インタビュー:JTB代理業 三重旅行サービス 林崎清さん

一つの印象ですべてが決まる
お客様にとっての価値ある感動を演出したい


時刻表を見るのが好きという趣味を活かし、友達の旅行を計画したら、喜んでもらえた――。そんな旅行業者の喜びを、高校生のときに体験していたという林崎さん。旅行会社でのアルバイトも体験し、そこで出会ったスタッフの人柄と仕事の魅力に、卒業後は旅行会社への就職を心に決めたそうです。勤務21年目のベテランが、インタビュー中に何度も口にした「お客様に学ぶところが多い」「勉強中」の言葉には、想像以上の奥深さがありました。

ジェイティービー代理業
株式会社三重旅行サービス
 外商部 次長 林崎清さん
 2005年度(第1回) デスティネーション・スペシャリスト 香港・マカオ認定


Q.学生の頃に、友人や知人の旅行を企画していたのですね

 時刻表を見るのが好きだったので、旅行の企画が楽しいものでした。たいてい昼休みに依頼されるのですが、夏休み前の7月ごろは昼食を食べられない日もあったほど。母校では生徒同士で旅行をする場合、学校の許可が必要でしたが、私が計画した旅程表はしっかりしていると判断され、許可が下りやすかったのです。先生のハネムーンの計画も頼まれたことがありましたよ。興味が高まり、高校2年生で一般旅行業務取扱主任者(現在の総合旅行業務取扱管理者)試験に挑戦し、3年生のときに取得しました。

Q.それほど熱中した旅行会社の就職が、当初は叶わなかったそうですね

 当時はオイルショックによる不況の影響で就職が厳しく、旅行の専門学校に進みました。熱海のホテルで働きながら通学し、卒業後は国鉄に就職。民営化の2年前に株式会社日本交通公社(ジェイティービー)に出向し、民営化と同時に現在の旅行会社に入社したので、ちょっと遠回りしましたね。ただ、ホテルも国鉄も旅行の要素である「あご、あし、まくら」の「あし」と「まくら」を担う企業です。その現場はもちろん、ホテルで働いている人の気持ち、旅客の安全確保などの姿勢など学ぶことができました。あごは私が食べることが好きなので、それでカバーです(笑)。

Q.林崎さんがお客様に旅行をお勧める際、大切だと思っていることは何でしょうか

 お客様のニーズをつかむことで、価格だけでなく、お客様にとって価値あるものを提供し、満足していただけるように努めています。そのためには、お客様と心を開きあうことからスタート。旅行に対する認識や期待度、趣向などまで把握できれば、旅行で利用するホテルやレストランもお客様のメリットあるものを選定でき、説得力ある提案ができますよね。ですから、お客様が帰ってきてから「払った金額以上の感動があった。相談時から全てが良かった」と話してくれると、本当にうれしいです。

 旅行はいろいろな体験や感動が得られますが、私はそのうちの1つの感情が旅行の全てに波及すると思っています。お客様の心に敏感に触れるものなので、1つがものすごく良ければ全体が良くなるし、逆に台無しになる可能性もある。だから、旅行のピークにお客様にとって一番良いものを企画するようにしています。同じ費用をかけても印象が良い方が、お客様にとってもうれしいことであるはず。エンターテイメントのように、旅行感動を演出することも重要です。

 そのためには、自分が感動を知らなければその素晴らしさが分かりませんよね。私は後輩にたくさん旅行に出かけて感動し、そして自分の感動体験をお客様に体験していただき、そしてお客様の感動を倍増して自分が感じ取るプロになってもらいたいです。私もまだまだ、勉強中だと思っています。


Q.DSでは香港・マカオを受講されたのですね

 どちらも私の好きな場所。特に街歩きが楽しいところです。香港では私が添乗する場合、決められた行程のあとに「シティ・ウォーキング・ツアー」と称して、希望者と一緒に街を訪れています。トラムやフェリーの切符なども全部、自分で購入してもらい、街での体験を楽しんでもらっています。

 香港には賑やかなカオルーン地区や植民地時代の面影が残るスタンレー地区のほか、観光客があまり行かない田舎にも楽しさがあります。面白いものでは、現地の人が集まる安い食堂で食べたラーメンの話があります。本当に美味しかったのですが、ガイドさんが原料を見せてくれたところ、実は日本の即席ラーメンの「出前一丁」だったんです。なんでも、香港の人は「出前一丁」が好きということで、そんな市民の文化に出会える体験も面白いですね。


Q.DSを取得されたのはなぜですか

 以前から、自分の持つ知識がどの程度のレベルにあるか知りたいと思っていました。DSは私にとって、まさに「登りたい山がそこにあった」というもの。講座を修了して試験に合格し、認定をもらえたことも率直にうれしかった。ただ、今回のインタビュー依頼が、DSとして私が初めて、外部と接触したケースです。まだ消費者にとってDSの認知度が低い。資格に権威がなく、消費者にとっても「だから何なのだろう」と思うだけでしょう。そこでDSを活かすための、ちょっとした企画を考えてみました。

Q.ぜひ、アイディアを教えてください

 DSの普及には、消費者に対する認知向上と、業界内での有資格者の増加が必要です。トラベル・カウンセラー制度推進協議会のホームページでDSを告知していますが、一般の人がこのホームページを見る機会は少ないでしょう。また、業界内で普及するには、スタッフや経営側のメリットがなくてはならないと思います。そこで私が考えたのは、消費者向けにウェブサイト「DSマップ」を立ち上げることです。地図上に旅行会社を示し、この店舗にはこの方面のDSがいると紹介するのです。

 私は旅行業界には、人を旅行に行きたいと思わせるような、旅行のワクワク感を演出する企業を超えた協力関係があってもよいのでは、と思っています。例えば由布院温泉が全国的に人気がある理由は、旅館経営者が自分の旅館の利益だけでなく、他の旅館のお風呂や食事を紹介しあい、結果的に由布院の魅力を伝え、観光地の質の向上に繋がったことにあると思うのです。

 DSマップでも同じことができると思います。「今回は香港に行くから、この人に話を聞いてみよう」「この旅行会社にはこんな人がいるんだ。行ってみよう」といった、単なる申し込み窓口ではなく、旅行会社を訪れる楽しみを打ち出すのです。お客様にとって魅力あるツールとなれば、業界内で発展していきますよね。旅行業界にはもともと「もてなす力」があるのですから、業界をあげて取り組めば、今よりももっとすごいことができると思うのです。


ありがとうございました。


<過去のスペシャリスト・インタビューはこちら>