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スペシャリスト・インタビュー 日中平和観光 東京支店 今井絵美さん

旅行者のタイプにあわせ、中国の楽しみ方を提案

国交正常化35周年を迎え、人的交流がますます活況となる中国旅行市場。多数の旅行会社が参入する中で、1964年に創業した日中平和観光は中国専門の旅行会社の草分け的な存在で、業界内外から一目置かれるエキスパート集団といえるでしょう。同社で10年のキャリアを持ち、現在はホームページ経由の問い合わせに対する「個人旅行手配」やツアー企画、添乗などに携わる今井さんに、ご登場いただきました。

日中平和観光株式会社 
東京支店 営業第二部 第二課 今井絵美さん
 2005年度(第2回)トラベル・コーディネーター認定
 2006年度(第3回)デスティネーション・スペシャリスト 中国認定、インドシナ認定


Q.中国のデスティネーションの利点といえば

高校時代の香港・マカオ・広州への修学旅行で刺激を受けて中国に興味を持ち、以来30回以上、渡航するたびにどんどん好きになりました。2等列車や夜行長距離バスなどに乗るバックパッカー的な旅行も経験しましたよ。北京・上海などの都市はもちろん、シルクロードやチベットの街、熱帯気候で自然豊かなシーサンパンナなども行きました。

各地を訪れれば、歴史、文化、宗教、自然、景観、気候、環境が全く異なり、1つの国に多様なテーマを持つデスティネーションであることが分かります。9割が漢民族なのですが、田舎と都会では人々の気質が異なり、別の国を訪れたような気分になるでしょう。毎年1回中国を旅行するお客様も多く、飽きのこない旅行先といえます。

Q.旅行を提案する際、気をつけていることはありますか

ホームページ経由の問合せでも、手配の際にはできるだけ電話で旅行期間と要望を伺い、お客様の旅行タイプを把握するように努めています。例えば、できるだけ自分で自由に旅行したいお客様でも、苦労しても安いバックパッカー的な旅行をしたいとか、自由がいいけど不自由はしたくないなど、いろいろなタイプがあります。きれいなホテルが良いとか、食事の面倒だけは見て欲しいなど、要望もさまざま。

例えば、FITで安く手配して欲しいとの依頼では、実は現地に不安があることが分かり、現地ガイドと車の手配を提案しました。予算の関係上、都市間の移動は公共バスを利用することにしましたが、初めてで乗り方が分かりませんから、乗車までガイドに見送ってもらいました。お客様に希望の旅行タイプで安心して出かけてもらうのが本当のカウンセラーだと思います。

Q.添乗業務ではどうですか

「中国はこんなに楽しいんだ!」と、共感してもらえたら成功。お客様に信頼してもらい、ツアーメイトだと思ってもらえたらうれしいですね。例えば、日本では見慣れないひまわりやかぼちゃの種といった庶民のおやつや屋台の料理など、ちょっと手が出にくいものでも、美味しいものは「美味しいから食べてみて」って、ついつい勧めちゃいます。体験しないと本当の魅力がわかりませんから。もちろん、気が進まない方には無理強いはしません。

Q.今井さんでも思い付かないような旅行の依頼などはありましたか

つい先ごろ、2泊3日で敦煌を訪れたいという、20代の女性とその父親からの依頼がありました。国際線のチケットは購入済みで国内の手配だけですが、出発まであと1週間なのにどこの旅行会社にもその日程では無理といわれ、困っているということでした。

確かに敦煌は、北京や西安で1泊してから行くので、4泊以上が普通です。きっと会社の休みが取れない中で、どうしても敦煌だけ行きたいとの意志が強かったのでしょう。調べてみると、実は順調に進めば日程が組めることが分かりました。プロとして「国内線のフライトが遅れ、予定日に帰国できないかもしれない」と、リスクを説明しましたが、その上でお客様の希望を叶えられるように努力をする必要性を、改めて実感しました。

Q.こんなに詳しいのに、なぜDSを受講したのですか

TC制度の概念に共感したからです。2001年以降のテロやSARSなどが起こると、中国旅行でも価格競争が始まりました。その一方で航空会社の中国路線が増加し、どこの旅行会社も中国を取扱うようになったのです。会社や自分に武器がなければ生き残れないと思い、そのきっかけになればと思ったのです。

ただ、講座は知識の再確認の意味で自信になりましたが、8割が一般のガイドブックで学べることだったので、少しがっかりしました。コーディネーターやプランナーの立場で言えば、お客様の持っていない情報やアップデートな情報を蓄積しなければ、お客様にお金を払っていただくことはできないと思います。それから、DSには更新制度がありますが、中国については5年ごとでは追いつかないとも思います。

Q.今、注目している旅行はありますか

デスティネーションでは貴州省。今年、「中国南方カルスト」として世界自然遺産に登録された地域で、自然豊かで少数民族が多く、文化的にも楽しめる場所です。同地域のツアーは既に企画化していますが、今後は環境活動として植林ツアーもどんどん進めていきたいと思います。また、羽田発の定期チャーターで、上海も売りたい。中国経済視察株ツアー、エステや高級料理、デラックスホテルに宿泊する内容で“サン・キュッ・パ”ではなく、また行きたくなるような、魅力のある上海旅行を作りたいと思います。

Q.今井さんにとって旅行とは何ですか

旅行は旅行者にとって、自分の為だけに費やすもの。人によって目的や感じるものは違いますが、私は旅行にエネルギーを貰っています。人に触れ合うことはもちろん、自然や町の景観を見ているだけでも、安らぐ気持ちになって、旅行をしても、お客様の旅行手配をしても、それが私の活力になる。私は一生旅行をし続けたいし、そんな旅行のお仕事ができて幸せです。

ありがとうございました。


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