豪州、路線増で国全体に期待感、周遊やセルフドライブに可能性も

  • 2019年4月17日

南とタスマニアでも活動強化の兆し
さらなる路線拡充に期待も

ATE会場の様子

 オーストラリア政府観光局(TA)は4月8日から12日にかけて、今年で40回目となる旅行商談会「オーストラリア・ツーリズム・エクスチェンジ(ATE)2019」を西オーストラリア州・パースで開催した。日本からオーストラリアへの旅行市場は日豪路線の拡大に比例して増加し続けているが、今年9月予定の全日空(NH)による成田/パース線は2011年以来の西海岸路線で更なる需要獲得が期待されるところ。直行便は就航地以外にも波及効果を与え、会場では日本への熱意を失ったかに感じられた州でも動きが見られた。TAと各州の現状と今後の見通しを戦略とともに伝える。

オーストラリア政府観光局
ジョン・オサリバン氏(本局局長)
中沢祥行・ジョー氏(日本局長)

 TAは、18年の重点戦略としてパース線の就航実現を掲げてこれに成功。18年の日本人訪問者数は約47万人だったが、TA本局局長のジョン・オサリバン氏は「就航の効果で50万人、60万人に届く可能性がある」と語るとともに、「パース線が呼び水となって、さらにNHや他社が路線を増強する可能性もある」と期待。そのうえで、「日本は現在5位の市場だが、座席供給量を考えれば今後上位3市場に迫っていくのではないか」と継続的な成長を予測した。

 また、中長期的な成長余力としては「(過去最高であった)70万人、80万人の規模も可能」とコメント。「1990年台のプロダクトで受け入れられていたのだから、今の環境ならばもっと増えてもおかしくない」との考えで、「まずは往時のレベルを取り戻さなければ」と意欲を示した。

 そうしたなかでの19年の活動については、パース線により「日本市場に新しい可能性を提案できるようになる」(オサリバン氏)との考えで、パース、スワンバレー、マーガレットリバー、エクスマウス、キンバリー、ブルームといった西オーストラリア州内のエリアに加えて、隣接する南オーストラリア州のクレアバレーやバロッサバレー、カンガルー島、あるいはNHのシドニー線との組み合わせの可能性なども模索する。

 また、中沢氏は日本での活動について、旅行会社との共同キャンペーンのほか「まだ知らないオーストラリア」のプロモーションに言及。これは本局が「UnDiscover Australia」と題しステレオタイプなイメージからの脱却をめざして開始したもので、中沢氏は一例としてマーガレット・リバーでのトレッキングを挙げた。このほかオンラインマーケティングなどテクノロジーの活用にも積極的で、オサリバン氏は「テクノロジーで勝利した観光局がマーケットシェア獲得でも勝利する」と断言した。

 なお、TAでは「ハイバリュートラベラー」をターゲットとしているが、これは、オーストラリアへの旅行でより多く消費する旅行者を意味。オサリバン氏は、富裕層への注力を意図したものではなく「シニア層でもミレニアル層でも、誰でも可能性はある。何にどれだけの金を使うか」で、この観点からも「日本の可能性は非常に大きい」と期待を語った。

西オーストラリア州政府観光局
吉澤英樹氏(日本局長)

 TWAでは、9月のNH就航に向けた準備が進む。州政府観光・競馬賭博担当大臣のポール・パパリア氏はATE開幕の記者会見で、「これまでは年間35万豪ドルを投じていたが、路線の成功に向けて100万豪ドルに引き上げる」と表明。就航からの3年で最低でも合計7万5000人の日本人訪問者増を見込むと期待を語った。

 吉澤氏によると、6月から9月にかけて、TWAとNH、そしてTAの3者が共同でキャンペーンを展開。25歳から45歳程度の女性をターゲットとしてオンラインを中心にプロモーションするほか、TWAが長期間に渡って継続してきたシニア層へのアプローチも強化する方針で、TWAとNHの2者で3ヶ年に渡って活動する計画について協議中という。NHのシドニー線やスターアライアンスの東南アジア線と繋ぐ旅程も考えられるが、「来年3月まではモノ」を前提に活動していく。

 一方、これまでのオフラインであった期間に協力して市場を拡大してきた航空会社各社との協業も継続。成田で往復ともにパース線に同日接続できる国内線の就航地が限られていることもあり、地方市場は引き続き地方ごとに航空会社と手を組んで需要喚起に取り組む。また、カンタス航空(QF)との「ワイルドフラワーキャンペーン」を引き続き予定しているほか、並行してセルフドライブのプロモーションも実施するという。

 また、トレッキングや登山などのSITやハネムーナーなど特定のセグメントへのアプローチも強化。さらに4月から6月のショルダーシーズンも課題で、20年の年明け頃には販促を開始する。なお、NH便については就航に向けて予約受付が開始されたが、現時点では「良い数字」であるといい、「今の段階で不安はない」という。