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しまなみ海道自転車旅ガイド|経験者が魅力やルートの選び方を紹介

しまなみ海道は、サイクリングでしか出会えない景色を堪能できる旅を実現できる場所です。自転車旅初心者でも楽しめる多数のコースがあり、挑戦したいと考える人も多いでしょう。

実は、しまなみ海道はスタート地点を今治にするか尾道にするかで、実際の自転車旅が大きく変わります。筆者も「今治と尾道、どっちから行けば良いの?」と悩みながら、最終的に今治からスタートすることを選んだひとりです。

本記事ではしまなみ海道について、今治と尾道それぞれをスタート地点とした際の特徴や魅力、また旅のスタイルに合った選び方などを、体験談を交えてご紹介します。

しまなみ海道ってどんなところ?

しまなみ海道は、愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ海と島を行き来できるルートで、車道のほか自転車専用道が整備されています。瀬戸内の自然を間近に感じながら、旅の風景と達成感を味わえるため、自転車旅に人気のスポットです。

ここでは、しまなみ海道のサイクリングルートの基本情報や、概要などを解説していきます。

サイクリングルートの基本情報と全体像

しまなみ海道のサイクリングルートは全長約70km。今治から尾道までを7つの島と6つの橋で結んでいます。自転車道が整った橋を渡ったり、坂道を上り下りしたりしますが、しまなみ海道内では大島の宮窪峠(標高約79m)が最もきつい区間として知られています。

1日で走破する人もいますが、ゆったり楽しむなら最低でも1泊2日がおすすめ。初心者向けのモデルコースもあり、観光しながらのんびり走るのにぴったりです。

高低差や距離に不安があっても、複数のサイクリングルートやレンタサイクル、乗り捨てサービスなどが整っているので、初心者でも安心して全線走破に挑戦できますよ。

“サイクリストの聖地”と呼ばれる理由

しまなみ海道は台湾との姉妹道協定や国際大会の開催などをきっかけに、世界的な注目を集めたことから、国内外のサイクリストから“聖地”と呼ばれています。

多々羅大橋近くには、旅の記念にもなる「サイクリストの聖地」碑があります。自転車をモチーフにした石碑は現在、「しまなみ街道を走った記念に」と多くの人が写真を撮りに訪れる人気スポットとなっています。

スタート地点は今治or尾道

しまなみ海道は、愛媛県今治市と広島県尾道市のどちらからでもスタートが可能です。ルート自体は同じでも、出発地によって絶景に出会う順番や坂道の感じ方、寄り道の楽しみ方などが変化します。

そのため、今治と尾道、どちらをスタート地点にすべきかと迷うのはよくあること。それぞれのルートの特徴を理解し、自分に合ったほうを選ぶと良いでしょう。

今治スタートのしまなみ海道ルートの特徴【筆者体験談アリ】

「自転車で、しまなみ海道を走ってみたい」という思いから筆者がスタートしたのは、今治からでした。自身の体力と相談したり事前に行きたい場所をピックアップしたりした結果、3泊4日(うちしまなみ海道内で1泊2日)のゆったり自転車旅を実践。

ここでは、しまなみ海道を今治からスタートする際の特徴や魅力を、実際の体験談を交えながらご紹介します。

自転車旅のウォーミングアップがしやすい

今治は交通量が比較的少ないため、自転車に慣れていない人でも旅のウォーミングアップがしやすい点が特徴です。観光スポットも近くに点在しているので、のんびりまわりつつ、自転車に慣れた状態で本格的にスタートできます。

筆者は大人になってからは自転車に乗る機会が減っていましたが、今治市内は平坦な道が多かったため、出発前にウォーミングアップするのにぴったりでした。またレンタサイクルの操作に慣れたり、事前に用意していたクッション付きのサイクルインナーパンツを今治市内で試したりできたことも、初めての自転車旅に挑戦する筆者にとっては良い点であったと感じています。

走る前に歴史スポット巡りを楽しめる

今治からの自転車旅スタート前には、ちょっとした歴史探訪も楽しめます。市内には築城の名手・藤堂高虎が手がけた今治城をはじめ、見どころが点在しています。

今治城で地元の歴史に触れながら海沿いの道を走ることで、翌日から始まる、しまなみ海道の自転車旅へのワクワク感を膨らませていきました。

体力があるうちにキツい坂道を終わらせられる

今治スタートなら、まだ体力があるうちに「難所」と呼ばれる勾配をクリアできる点もメリットです。しまなみ海道には、標高約79mの「宮窪峠」や橋を上るための坂道が複数点在するなど、初心者にとって体力を使うポイントがあります。

筆者も体力に自信がなかったこともあり、なるべく序盤で頑張りたい気持ちがありました。今治側である宮窪峠や、同じく難所である「来島海峡大橋」を体力がある初日にクリアできたことから、何とか2日目で無事完走できたと考えています。

「最初に頑張るか、最後に残しておくか」は人によって分かれるところかと思いますが、体力配分を考えるなら今治スタートがおすすめです。

今治スタートがおすすめの人はこんなタイプ

今治スタートでのしまなみ海道の自転車旅は、以下のようなタイプの人におすすめです。

  • 混雑を避けてのんびり走り始めたい
  • 飛行機でスタート地点にアクセスしたい
  • 旅の序盤に絶景といわれる「来島海峡大橋」を体験したい
  • ローカルな雰囲気や歴史ある街並みを楽しみたい
  • 今治城などでの観光と組み合わせたい

旅の始まりに地元らしさや静けさを感じたい人にとって、今治は良いスタート地点となるでしょう。

初心者でも安心だった!今治発ルートの体験レポ

筆者は普段運動しないタイプで、しまなみ海道は初のサイクリング旅でした。予算の都合上、電動アシストなしのクロスバイクをレンタルして、今治から尾道までを2日間で走破しました。

クロスバイクも初めて乗ったため、練習がてら初日は今治城や港をゆったり自転車で散策し、2日目に今治からスタート。途中、村上水軍博物館や渦潮体験を経てそのまま大島に宿泊し、3日目に尾道へ到着というスケジュールでした。

今振り返れば難所である宮窪峠を越えたあと、そのまま大島に宿泊したため、翌日に体力を温存できたのかもしれません。坂道はきつかったけれど、交通量も少なく、想像以上に気持ちよく走れました。3日目の尾道でのゴールで、地元ラーメンとビールに癒やされたのが最高のご褒美であったことを覚えています。

尾道スタートのしまなみ海道ルートの特徴

尾道からスタートする場合は、アクセスや観光のしやすさに加えて、スタート地点には自転車旅をするための設備や環境が整っているため、初心者でも安心できる点が特徴です。旅の雰囲気を味わいながら、ゆるやかにサイクリングを始めたい人にぴったりだといえます。

ここでは尾道スタートが選ばれる理由を、詳しく見ていきましょう。

新幹線駅に近くアクセスがしやすい

「移動に手間をかけたくない」という人に、尾道スタートはぴったりです。新幹線停車駅の福山駅または新尾道駅から在来線で到着でき、旅の最初から移動疲れを最小限にできます。ただし新尾道駅を利用する場合、新幹線はこだま号のみ停車となるため注意が必要です。

また主要観光地やレンタサイクル施設が尾道駅から近いため、到着後すぐに観光や準備に取りかかれるのも、初心者にとってうれしいポイント。サイクリング前のストレスを減らしたい人に、おすすめのスタート地点といえるでしょう。

観光地としても有名

尾道からのスタートなら、しまなみ海道を走る前に有名な観光地を楽しめるのもポイントです。千光寺や坂道の風情ある町並み、名物の尾道ラーメンなど、散策が楽しい要素がそろっており、スタート前から“旅のワクワク”を感じさせてくれるでしょう。

歩きながら町の雰囲気を感じたり、旅の記念写真を撮ったりする時間も取りやすく、観光とサイクリングをどちらも存分に楽しみたいという人にぴったりです。

サイクリングスタート地点の設備が充実

尾道駅周辺には、サイクリスト向けの施設が集中しています。中でも尾道駅からすぐの場所にある「ONOMICHI U2」は、サイクリストにうれしい設備がそろった、おしゃれな複合施設として人気です。自転車旅のはじまりに必要なものがすべてそろうだけでなく、宿泊施設も兼ねていることから、準備や休憩がしやすい環境が整っています。

さらに、尾道のレンタサイクルは朝から利用可能なので、時間を有効に使いたい人にもおすすめです。

序盤がゆるやか→終盤に達成感が感じられる

コース序盤がなだらかなため、尾道からスタートするルートは、自転車旅に不慣れな人でも安心してペースをつかみやすい点が特徴です。

広島から愛媛に向かって進むコースは全体的に標高が下がっており、体への負担も少なめ。終盤には、しまなみ海道最大の橋「来島海峡大橋」が待ち構えていますが、旅のラストにふさわしい絶景と達成感を味わえます。

最後に大きな橋を渡る達成感で旅の印象がぐっと良くなる構成ですので、充実した自転車旅にできることでしょう。

尾道スタートがおすすめの人はこんなタイプ

尾道スタートでのしまなみ海道自転車旅は、次のような人に向いています。

  • 東京・関西など都市圏から新幹線でアクセスしやすい場所から始めたい
  • 尾道観光を組み合わせて、しまなみ海道を体験したい
  • 終盤に絶景スポット「来島海峡大橋」を楽しみたい
  • 徐々に走行距離を延ばして達成感を味わいたい
  • 体力面で負担の少ないルートから自転車旅を始めたい

走り終えたあとに感じる“やりきった感”は、尾道ルートならではです。

初心者はどっち?今治 or 尾道サイクリングルート比較

しまなみ海道は今治と尾道、どちらからでも走れますが、「どっちが初心者向けなの?」と迷っている人もいるでしょう。

ここでは、アクセスや街の雰囲気、景色、走行のしやすさなど、初心者目線で押さえておきたい4つの観点から両ルートをわかりやすく比較します。自分に合うほうを選ぶための参考にしてみてください。

アクセスのしやすさ

今治と尾道では、アクセスのしやすさに明確な違いがあります。尾道は新幹線の福山駅または新尾道駅から在来線で行けるため、特に新幹線の駅がある都市部からの移動がスムーズです。

一方、今治は飛行機のほか、新幹線と特急電車を使う行き方があり、後者はやや乗り換えが多め。東京・大阪からのアクセス時間も今治のほうが長くなるケースが多いです。

ただし今治をスタート地点にすれば、ゴール後の尾道では交通の選択肢が豊富にあります。万が一途中でリタイアする場合にも、尾道側(広島)に近づけば近づくほど交通手段が豊富で、柔軟に対応しやすいというメリットがあります。

街の雰囲気とレンタサイクルの環境

今治と尾道は、街の雰囲気やレンタサイクルの環境にも違いがあります。

今治は静かで落ち着いた港町です。観光客も少なめで、地元ならではののんびりとした空気の中で準備ができます。レンタサイクルの手続きも比較的スムーズで、混雑しにくいのが特徴です。

一方、尾道は観光地として国内外で知られています。時期によっては、今治と比べた際に混雑してしまうケースもあるでしょう。ただし、早朝から営業しているレンタサイクルターミナルもあり、スタート時間の自由度が高い点がポイントです。

道中の景観や絶景スポット

今治スタートでは、旅の序盤に絶景「来島海峡大橋」が登場するため、出発直後から大きなワクワク感を持って旅を始められます。瀬戸内の多島美が広がる中で自転車のペダルをこぐことで、旅のテンションが上がりやすいでしょう。

一方、尾道スタートでは、最後に「来島海峡大橋」を走破することになります。じわじわと景色の変化を楽しみながら、最後には最高の絶景と達成感が味わえるでしょう。

どちらも魅力的なものの、「最初に盛り上がりたい」か「最後に感動したい」かで、スタート地点の選び方が変わってくるといえます。

走行距離と勾配、体力面

しまなみ海道の自転車旅では、体力の残し方にも工夫が必要です。しまなみ海道の距離は今治・尾道どちらからのスタートでも約70kmですが、坂道の感じ方にも差があります。

今治スタートは序盤に勾配が集中し、体力があるうちに来島海峡大橋や難所・宮窪峠を越えられるのがメリットです。

反対に、尾道スタートは全体的に下り基調であるため、比較的なだらかなスタート。最後に来島海峡大橋に登るための長い坂道が控えていることから、「最後が一番きつかった」と感じる声も見受けられます。

登り坂をなるべく先に終わらせたい人には今治スタート、体力を温存してラストに達成感を味わいたい人には尾道スタートがおすすめです。

どんな自転車旅にしたい?タイプ別ルート選び

しまなみ海道の自転車旅は、「どこから走るか」だけでなく、「どんな旅にしたいか」でもルート選びが変わってきます。

歴史探訪を楽しみたい、レトロな街歩きをしたい、軽く試してみたいなど、あなたの自転車旅の目的やスタイルに合ったコースを選ぶことで、満足度の高い旅行になるでしょう。

歴史やローカル感をメインに味わいたいなら:今治

歴史とローカル感をメインに楽しみたい人には、今治スタートがぴったりです。

今治城や村上水軍の史跡・博物館、渦潮体験など、歴史やローカル感を味わえる見どころがサイクリングコース付近にあります。静かな港町の雰囲気は、スタート地点までの移動で疲れた心を落ち着かせてくれ、落ち着いたスタートを切れるでしょう。

有名な観光地での街歩きも楽しみたいなら:尾道

観光地らしい雰囲気を味わいたい場合には、尾道スタートがおすすめです。

スタート地点の尾道は、千光寺公園やロープウェイ、レトロな商店街「尾道本通り商店街」など、見どころが満載。尾道市内には映画やドラマのロケ地として使われた場所も多く、国内外から多くの観光客が訪れます。旅の始めに千光寺や坂の町並みなどを散策して、尾道ラーメンで腹ごしらえしてからスタートしても良いでしょう。

尾道からのルートはスタート直後の勾配が緩やかなので、観光のあとでも無理なく走り出せますよ。

短距離だけ試してみたいなら:一部区間ライドもアリ

「いきなりしまなみ海道全線はハードルが高い……」という人には、気になる区間だけを走る「区間ライド」もおすすめです。

しまなみ海道内には、季節の花が咲く「よしうみバラ公園」や、尾道から船でアクセスできる「生口島一周コース」など、短時間で景色やご当地グルメも味わえるルートがそろっています。旅程や体力に合わせて、柔軟に自転車旅を楽しむのもひとつの手ですよ。

自分に合ったルートで、しまなみ海道を自転車で走ってみよう

島と島をつなぐしまなみ海道の自転車旅は、今治・尾道どちらのスタート地点にも魅力があります。しまなみ海道を思い切り楽しむためには、自分に合ったルートを選ぶことが成功のカギ。体力や観光スタイル、アクセス手段に合わせてルートを選べば、初めての自転車旅でも不安なく楽しめるでしょう。

筆者のように「一度しまなみ海道を自転車で走ってみたい!」という気持ちがあるなら、それだけで十分な旅のきっかけです。思い切って一歩を踏み出せば、海風や島々の景色があなたの旅を忘れられないものにしてくれる、すばらしい自転車旅を堪能できることでしょう。

  • 記事を書いたライター
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あさひなペコ

ドイツ・カッセルに住み、マイペースに活動する大学院生x在宅ワーカー。ドイツ語歴15年以上、元旅行販売員&元添乗員です!現在はカッセル大学院で修士号「歴史と公共(GÖff)」に挑戦中。そのかたわら、Webライター/編集業や、ドイツガイドとしても活動。寒いのが嫌いなウィンタースポーツ好き。こう見えて一児のママ。

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