米国の航空需要回復の裏で、顕在化する航空会社の労使対立、パイロットの過剰労働が問題に

米国の航空会社で、組合と経営陣との対立が強まっている。パイロット組合は、コロナ後の需要増加に対応するために賃金の引き上げを求めている。

サウスウエスト航空のパイロットは2022年6月21日、ダラス・ラブフィールド空港で抗議の声をあげた。パイロットの労働組合「エアラインパイロット協会(ALPA)」によると、約1300人が集結。経営陣に対して、賃上げを求める圧力をかけた。

連邦法によって、航空会社の組合がストライキを行うことはできないため、交渉は長引く恐れがある。同航空の客室乗務員は、今でも2018年に交わされた契約のもとで働かざるを得ない状況だ。

サウスウエスト航空は昨年から、パイロットの雇用を続けているが、組合側は労働時間の増加に対して公平な補償はされておらず、経営陣は相変わらず古いスケジュール管理しかしていないと不満の声をあげている。

サウスウエスト航空のパイロット組合のケーシー・マレー会長は、運航スケジュール過多のため、パイロットに「フライトメア(flightmare:航空旅行時の不快な状態)」が起きているという。「パイロットは1年前の3倍以上の疲労を感じており、これは安全上の懸念となる」と警鐘を鳴らす。

乗員組合のALPAは6月中旬、デルタ航空について、確保できるパイロットよりも多くのフライトを予定しており、それがすべて運航されれば、バイロットの残業時間は記録的になると非難した。

アメリカン航空のパイロットは6月初旬、主要空港に続いてニューヨーク証券取引所の近くでもピケを張った。彼らは、今夏の旅行需要の増加に対して、賃上げと特別手当を勝ち取ろうとしている。

一方、ユナイテッド航空は先月、ALPAと合意。条件は明らかにされていないが、賃上げが含まれている可能性があり、ユナイテッド航空のCEOはそれを業界をリードする提案だとした。この合意が実行に移されるには、最終的にパイロットに承認される必要がある。

地域航空会社も、深刻なパイロット不足に悩んでおり、パイロット確保のために長期的な賃上げに加えて、2024年8月まで50%の追加手当を提供することを決めた。

旅行アナリストのヘンリー・ハートベルト氏は、現状について、パイロット不足と広範囲にわたる遅延や欠航によって、パイロットたちは強い交渉力を手に入れていると分析。しかし、「交渉事はタイミングがすべて。もし、景気が後退し、航空会社のビジネスが落ち込めば、今彼らが手に入れている力は無くなってしまうだろう」との見方を示した。

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