日光、那須、観光客戻らず、過去最少 コロナ禍にあえぐ
【栃木】県内有数の観光地がコロナ禍による打撃にあえいでいる。昨年、世界遺産や温泉を抱える日光市を訪れた観光客の数は、過去最少を更新。那須塩原市や那須町でも宿泊者が戻らない。「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が繰り返された影響が大きいとみられる。コロナ下で3度目の春を迎え、関係者が気をもむ日々が続く。
日光市では昨年、市内を訪れた観光客の「入り込み数」と、ホテルや旅館などが利用されたのべ日数を示す「宿泊数」がともに、今市市などと合併した2006年以降で最少だった。
入り込み数は789万583人で、一昨年比で5・4%(45万3489人)減。宿泊数は169万6515人で、同8・4%(15万4707人)減だった。
外国人の宿泊数は2113人で、同88・7%(1万6566人)減だった。
また、コロナ禍前の19年と比べると、入り込み数は33・2%減、宿泊数は48・5%減、外国人宿泊数は98・2%減となった。
市によると、緊急事態宣言が解除された昨年10月以降は、入り込み数は徐々に回復している。県の観光振興策「県民一家族一旅行」や修学旅行の再開がプラス要因となり、宿泊数も同月以降増えているという。
粉川昭一市長は3月25日の定例会見で「コロナの見通しが立たず非常に厳しい状況だが、旅行への機運は高まっており、収束後に日光に来てもらえるよう態勢を整えていく」と話した。
日光温泉旅館協同組合の赤沢正理事長は「かなり厳しい状況が続いている」と話す。組合に加盟する27施設は世界遺産「日光の社寺」周辺にあり、コロナ禍で来日しにくくなった外国人観光客の割合が比較的高かったことも響いているという。ただ、5月の大型連休明けの修学旅行のキャンセルは今のところないといい「ぜひ日光を訪れてほしい」と話す。(中野渉)
苦しい状況に「めげぬ」動きも
那須塩原市では昨年、観光客の入り込み数は677万2087人で、一昨年より1万3817人増えた。
だが、宿泊数は、合併で同市が誕生した2005年以降最も少なかった。46万3406人で、一昨年より3万8232人減った。
塩原温泉郷の旅館「湯守田中屋」(同市塩原)に泊まった人は一昨年は例年の6割ほど。昨年は過去最低の5割まで落ちた。
でも、めげていない。客足が低迷していた今年1月、国の補助金も受けて新しい熱交換器を導入した。シャワーで使っている沢の水を、重油を燃やす従来の方法ではなく、温泉の熱で温められるようにした。
二酸化炭素の排出量と旅館の経費を抑える狙いだったが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で原油が高騰し、予想外の効果を感じている。経営者の田中三郎さんは「重油代はほぼ半分に減った」。ただ「うちの温泉は約60度と高温だからできる」といい、加温が必要な温泉宿では難しい。
那須町でも、苦しい状況が続いている。
昨年の観光客の入り込み数は一昨年比で62万7199人増の410万8071人だったが、宿泊数は、統計がある1991年以降で過去最少だった一昨年からさらに1万4475人減り、122万5409人だった。町は、コロナの感染を避けるため日帰りを選ぶ人が増えたとみている。平山幸宏町長は「伊丹(大阪)空港から福島空港に飛べば那須までは2時間。県の大阪事務所を通じて『栃木県の入り口は那須』とPRしたい」と話す。(小野智美)
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