格安航空のキャピタルA、前期850億円の最終赤字
【シンガポール=中野貴司】マレーシアの格安航空(LCC)大手、キャピタルA(旧エアアジア・グループ)が28日に発表した2021年12月期決算は、最終損益が31億リンギ(約850億円)と3期連続の赤字となった。赤字額は前の期(51億リンギの赤字)より縮小したものの、債務超過額は約60億リンギに達しており、財務改善が急務になっている。
売上高は17億リンギと前の期より47%減った。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、年間の旅客数が481万人と20年比で6割減、コロナ前の19年と比べると9割減となったことが響いた。
マレーシアとシンガポール間で隔離なしの入国制度が始まった21年10~12月期は旅客数が前年同期の2倍に増えるなど、回復の兆しもみえた。ただ、損益を改善するほどの力強さはなく、同期も8億8000万リンギの赤字に陥った。
キャピタルAは航空事業の低迷を補うため、貨物や配車などの新規事業を強化している。21年10~12月期は貨物事業の売上高が前年同期の3.7倍、配車や食事宅配などの「スーパーアプリ」事業の売上高が51%増となり、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は共に黒字だった。航空事業を統括するボー・リンガム氏は「22年は東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の移動制限の緩和も進み、国際線の需要は大幅に回復する」と、本業の収益改善も強調する。
ただ、キャピタルAは大幅な債務超過が続いており、損益の改善に加えて、バランスシートの立て直しが不可欠になっている。マレーシア証券取引所は1月に、キャピタルAを財政難に陥った企業の指標である「PN17」銘柄に指定した。「PN17」銘柄に指定されると、1年以内に取引所から経営再建計画の承認を得たうえで、2四半期連続で最終黒字を計上しないと、上場廃止になる恐れがある。
航空需要は22年もコロナ前の水準まで戻らない見通し。このため、キャピタルAは事業売却や追加のリストラを迫られる可能性がある。
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