旅館・ホテルの過剰債務、深刻に 月商倍率30倍に増加


 新型コロナの感染拡大から約2年。帝国データバンクは、全国の旅館・ホテル経営業者の動向についてリポートをまとめている。月商に対し、借入金などの有利子負債が何倍に当たるのかを示す有利子負債月商倍率は、コロナ禍前の2019年度の平均12.45倍に対し、昨年12月時点では30.13倍と大きく増加している。昨年1年間の倒産件数は前年比約40%減少したが、休廃業・解散件数は増加。「今後、過剰債務問題に苦しむ企業の淘汰(とうた)が進む可能性が考えられる」と同社では見ている。

 昨年1年間(1~12月)の旅館・ホテル業の倒産件数(負債1千万円以上の法的整理)は70件で、前年の118件から40.7%減少した。「金融機関による“コロナ融資”や雇用調整助成金など各種支援策で持ちこたえている格好だ」(同社)。

 一方、倒産以外の休廃業・解散件数は174件。前年の131件から32.8%増加し、過去5年で最多となった。「新型コロナウイルス感染収束が見通せない中で、事業継続を断念する企業が多く見られる」(同)。

 旅館・ホテルの売上高は、2020年度(20年4月~21年3月)が約2.9兆円。近年のピークだった18年度の約5.1兆円に比べ、43.1%減と5割近く減少している。損益ベースでも、20年度は最終で6028億円の赤字。営業段階で赤字となる企業が80%を超えている。

 月商に対し、有利子負債が何倍に当たるかを示す有利子負債月商倍率は、コロナ禍前の19年度は全体平均で12.45倍。そして20年度はコロナ融資など借入金増加で倍率は21.65倍と大きく増加。昨年12月時点では30.13倍とさらに大きく膨れ上がった。

 業態別内訳では、旅館が30.46倍、ビジネスホテルが25.41倍、シティホテルが21.02倍、リゾートホテルが19.82倍。旅館が他業態に比べて多くの債務を抱えている実態が明らかになった。

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