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旅行の高付加価値化と事業の多角展開に活路-KOKK小柳肇氏

コロナ禍は「良いこと7割」、危機をチャンスに変えて進化を目指す

 新潟県新発田市を本拠地とするケー・オー・ケー・ケー(KOKK)は、主催旅行のハミングツアーを主力とする旅行業のほか、バス事業やイベント事業、ホテル事業を多角的に展開。観光産業への逆風にも下を向くことなく、小柳肇代表取締役はコロナ禍を「悪いこと3割、良いこと7割」と表現する。その前向きな姿勢と気概はどこから来ているのか。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

小柳氏

-はじめに自己紹介からお願いいたします。

小柳肇氏(以下敬称略) 新潟の工業高校を卒業後クラレに入社し、化学技術者として10年間勤務しました。退社してフリーターをしていた際に、知り合いの経営者から新たに旅行業を始めるので手伝ってほしいと頼まれたのがこの業界との出会いでした。4年ほど勤めた後に、今度は新店舗を出店する旅行会社に誘われ転職。5年ほど店舗運営に関わりましたが、店舗業績が悪化し撤退することになりました。その際に会社から店舗事業の買取りを持ち掛けられ、これに応じる形で旅行事業者として独立することになりました。

 独立以前の1997年、サラリーマンの傍らイベント制作会社として前身の有限会社KOKKを設立していたので、店舗事業の買収に合わせてKOKK内に旅行部門を新設し2001年から「ハミングツアー」をスタート。KOKK設立から25年、旅行業を始めて21年になります。経営の基礎が無いことを痛感して2009年から新潟大学経済学部に社会人入学して、6年がかりで無事卒業しました。

-現在、KOKKの社員数は何人ですか。

小柳 常勤役員2名と正社員で計30名。ほかにパートを含めると常勤スタッフが約40名です。

-旅行業とイベント事業だけでなく、バス事業やホテル事業も手掛けられていますが、それぞれの売上比率を教えてください。

小柳 コロナ前の実績では旅行業70%、バス事業15%で、残りの15%がイベント制作とホテル事業でした。

-いずれもコロナ禍に直撃されている事業分野ですが、影響はいかがでしょうか。

小柳 もちろん苦労していますが、一般的な旅行会社より比較的ダメージが少ないと思います。バス事業は自社の旅行事業での利用が大部分で、バス事業単体の事業収入は直で受注しているスクールバスと送迎ビジネスだけなので、コロナ禍の影響は限定的です。

 旅行業は自社で値付けできる主催旅行が主体で、自社バスを使うことで利幅が大きく、需要が戻れば一般的な旅行会社よりは収益を維持できる上、雇用調整助成金などを組み合わせて凌ぎました。バス事業では毎日23台運行しているスクールバスはコロナ禍でも減らず、大部分を占める市立学校は休校中も契約金額の7割程度を発注者が負担してくれました。

-新潟観光コンベンション協会の主催イベント「ランチ付き新潟花街茶屋」の販売を手掛けることになった経緯は。

小柳 新潟市では古町芸伎の文化が継承されていますが、コロナ禍による宴会需要激減で危機に直面しており、市が集客支援のためイベントの主催・実施を担い、予約受付業務の委託先を探していました。当社は地場の旅行会社には珍しく、主催旅行用に独自開発した予約システムとコールセンター機能があったので、地域貢献の一環で受託しました。

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