日本発 2029年宇宙の旅が実現へ 今年無人機で試験開始、27年有人飛行計画

2022年1月20日 12時33分

開発中の宇宙機のイメージ図=PDエアロスペース提供

 空気が十分にある高度15キロまでは航空機のようにジェットエンジンで行き、そこからはロケットエンジンに切り替えて宇宙に向かう-。そんな宇宙船の独自開発に乗りだすベンチャー企業が出てきた。機体は上空で分離せずに繰り返し使えるため、コストを下げられる。目標は1人約3000万円での宇宙旅行の提供だ。(平井良信)

◆1人3000万円で8人乗り

 このベンチャー企業は名古屋市のPDエアロスペース。独自開発の機体とエンジンで2029年に、1人約3000万円で8人乗り宇宙機に搭乗できる宇宙旅行の商用化を目指している。
 PDエアロは三菱重工業で戦闘機開発に携わった緒川修治社長(51)が、07年に設立。エイチ・アイ・エス(HIS)やANAホールディングスなどが出資する。開発拠点を愛知県碧南市に構え、高度110キロの宇宙空間で約5分間の無重量状態を体験し地球に戻る「サブオービタル飛行」の実現を目標に定めている。
 21年は海外企業の手で多くの民間人が宇宙に行くなど「宇宙旅行時代の幕開け」と言われた。PDエアロは22年、まず無人機による長距離飛行の試験を開始。同年4月には全長5メートルの小型無人機に他社製のジェットエンジンを載せて飛ばして機体性能や通信システムを確認し、夏には自社開発のロケットエンジンを載せて飛行試験する。

◆上空で切り替え可能な独自エンジン

 試験は宇宙旅行の離着陸の拠点となる「宇宙港」として整備中の沖縄県宮古島市の下地島空港で行う。順調に開発が進めば、24年春には宇宙の入り口となる高度80キロまで無人機を到達させ、27年中に有人宇宙船で飛行を実現させたい考えだ。

開発中のエンジンを前に話すPDエアロスペースの緒川修治社長=愛知県碧南市で(小嶋明彦撮影)

 PDエアロの宇宙船の特徴は、上空で切り替えが可能な独自開発のエンジン。宇宙からの帰還時も、高度が下がった後にロケットエンジンからジェットエンジンに切り替えて飛行し着陸する。
 飛行試験は20年中に計画していたが、新型コロナウイルス禍で出資元の業績が悪化するなど資金確保に苦労し延期。この間、従来の100倍以上の燃料を一気に燃やし、推力を高める新型エンジンの開発に取り組むなど技術的な改良を重ねてきた。緒川社長は「宇宙旅行を待っている人たちが一日も早く乗れるようにしたい」と決意を語る。

◆21年は「宇宙旅行時代の幕開け」

 2021年は海外の民間企業によって宇宙旅行の事業化が大きく前進した年だった。7月に英起業家が設立した米「ヴァージンギャラクティック」と、米アマゾン・コム創業者が設立した「ブルーオリジン」が、高度80~100キロの有人宇宙飛行に成功。ヴァージン社が8月に宇宙旅行のチケットを1席45万ドル(約5000万円)で販売した。
 9月には米「スペースX」の宇宙船に民間人が乗り、高度約580キロの地球周回軌道上で3日間を過ごした。12月には実業家の前沢友作さんがロシアの宇宙船に搭乗し、日本の民間人として初めて国際宇宙ステーション(ISS)へ渡航。12日間滞在した。

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