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日本郵政グループは1日、全国33か所の宿泊施設「かんぽの宿」を全て売却すると発表した。来年4月に32施設を計88億円でホテル運営会社などに売却し、残る1施設も売却に向けて地元自治体と協議を進める。従来の赤字体質にコロナ禍が重なり、経営の重荷となっていた。過去には売却が頓挫した経緯があり、長年の懸案にようやくめどがついた。
米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」傘下の国内ホテル運営会社などに29施設を一括売却し、菓子製造「シャトレーゼホールディングス」(甲府市)など3社に1施設ずつ売却する。2年間営業を続け、雇用継続を希望する従業員を受け入れることを条件とした。残る「かんぽの宿 恵那」(岐阜県)の売却は恵那市と協議する。
かんぽの宿は、簡易保険加入者向けの福祉施設として1955年に設置された。通常の宿泊施設に比べ、人件費や食材費などが高コストで赤字が続いてきた。
2007年の郵政民営化で事業を引き継いだ日本郵政は翌08年、当時あった70施設を109億円でオリックスに売却すると発表したが、認可権限を持つ鳩山総務相(当時)が「安すぎる」と反対して頓挫した。その後は徐々に閉鎖や売却を進めてきた。
民営化以降14年間の累積赤字は約650億円に上る。日本郵政の増田寛也社長は1日の記者会見で「経営資源を新規ビジネスに振り向けようとする中、意欲のある事業者に譲渡するのが最善だと考えた」と述べた。