ブリティッシュ・エアウェイズのエアバスA320neo。
British Airways
- ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、ヒースロー空港からグラスゴー空港まで、持続可能な航空燃料を使用した「パーフェクト・フライト」のデモンストレーションを行った。
- これは、2010年の飛行を再現し、11年間でどれだけ二酸化炭素排出量が削減することができたかを示すものだ。
- 航空業界は、「フライト・シェイミング(温室効果ガス排出量の多い飛行機に乗ることを恥として他の交通機関を利用を推奨する活動)」が広がるにつれて、環境汚染問題への対応を迫られている。
航空業界が環境保護活動家の厳しい目にさらされる中、ブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways:BA)は、持続可能なジェット燃料と再生可能エネルギーの使用した「パーフェクト・フライト」への進展を示すデモンストレーションを行った。
2021年9月15日、BA1476便はロンドンのヒースロー空港を出発し、58分をかけてスコットランドのグラスゴー空港に到着した。このデモンストレーションは、石油メジャーの1つ、BPから提供されたSAF(持続可能な航空燃料)を直接的な動力源としたBA初のフライトになった。
今回のデモンストレーションは、2010年に行われたヒースロー空港からエジンバラ空港へのフライトを再現したものだ。当時は燃料節約能力の低い旧型の航空機を使用していたが、11年間の「パーフェクト・フライト」の取り組みへの進捗を示す今回のフライトでは、二酸化炭素排出量が2010年に比べて62%減少したことを実証できた。
グラスゴーへの短いフライトは、エアバス(Airbus)との提携で特別に塗装されたエアバスA320neoで行われた。塗装のデザインは、二酸化炭素排出量の削減を目的としたBAの「Better World」プログラムを象徴するものだ。この機体は、BAが保有する短距離用ジェット機の中で最も静かで燃費がよく、旧世代の機体に比べて二酸化炭素排出量を20%削減しているという。
ヒースロー空港は、BAの「パーフェクト・フライト」を支援するために、機体を牽引・運搬するためのMototok社の電動車両に100%再生可能エネルギーを使用している。ヒースロー空港のジョン・ホランド=ケイ(John Holland-Kaye)CEOによると、同空港は2017年から100%再生可能エネルギーを購入しており、700万ポンド(約10億円)を投じて空港内に電気自動車の充電ポートを設置し、小型車両の90%を電気自動車に変えているという。
BAによると、今回の歴史的フライトのために、燃料を節約するためのさまざまな技術を実践したという。例えば、片方のエンジンでのタクシーング(航空機の地上走行)や、上昇速度の事前プログラミング、航空ナビゲーションサービスプロバイダーのNATSと協力してヒースロー空港からグラスゴー空港までの上昇と下降を連続的に維持して水平を保つようにするといったことだ。
BAの「パーフェクト・フライト」は、気候危機と「航空業界が環境に深刻な影響を与えている」と主張する活動家からの反発の両方に対応するものだ。2019年以降、航空会社は、持続可能性を促進するためにオペレーションの変更を行うようプレッシャーをかける「フライト・シェイミング」運動と戦っている。
ロサンゼルス・タイムズによると、スウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)は、フライト・シェイミングの広がりや、その後のスウェーデンにおける民間航空会社の利用者数の減少に一役買っているという。Voxによると、トゥーンベリは気候変動問題における航空業界の役割について声高に発言してきた。そのメッセージはヨーロッパ全土に広がった後、徐々にアメリカにも浸透し、活動家と航空会社の間の緊張が高まっているという。
エールフランス(Air France)のアン・リゲイル(Anne Rigail)CEOやエミレーツ航空(Emirates)のティム・クラーク(Tim Clark)社長などの航空会社幹部は、飛行機の利用を避けるべきだとする「アンチ・フライト運動」は、業界最大の課題だと語っている。航空アクショングループ(Air Transport Action Group)によると、全世界で排出される二酸化炭素排出量のうち、航空業界からの排出が約2%を占めているという。
「何十億トンもの二酸化炭素を空気中に放出することは、我々(航空業界)にとっても決していいことではない。対処しなければならない」と、クラークは2019年にBBCに語っている。
「この問題に焦点を当てたエクステンション・リベリオン(XR:環境保護団体)とグレタ・トゥーンベリに感謝している」
航空会社は業界の環境汚染問題を認識しているが、二酸化炭素排出量への配慮とビジネスの成長のバランスを取ることは困難だ。しかし、それでも環境保全対策を止めることはできない。
ヨーロッパの航空会社、KLMシティホッパー(KLM CityHopper)は、2019年に「Fly Responsibly」キャンペーンを実施し、できるかぎり飛行機の利用を避け、代わりに電車などの交通機関を利用することを呼びかけ、脱炭素化への支援を示した。一方、アメリカではデルタ航空(Delta Air Lines)が2030年までにカーボンニュートラルを実現するために10億ドル(約1100億円)を投資するとしており、ユナイテッド航空(United Air Lines)とアメリカン航空(Air Lines)は電動航空機に投資している。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)