ホテル、「エグゼクティブラウンジ」新設相次ぐ

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、高価格帯の客室に泊まる客だけが使える「エグゼクティブラウンジ」を新設するホテルが相次いでいる。休業や時短営業で半ば遊休化したレストランを改装するなどし、客を限定して「密」を防いだ空間で、飲食を無料提供したりする。コロナ禍でも堅調な高額消費を取り込み、感染収束後に来日する富裕な外国人客も念頭に置く。

想定通り稼働

ハイアットリージェンシー東京ベイ(千葉県浦安市)はブランドを変更して7月12日に再開業したのを機に、スイートルーム、高価格帯客室階とその専用ラウンジを設けた。レストランの個室を改装したラウンジには、専用のチェックインカウンターや食事の無料サービスもある。

緊急事態宣言が長引く中、東京ディズニーリゾート目当ての観光客らをターゲットにしていた同ホテルにとって集客は難しいが、新設した高価格帯客室は想定通りの稼働で推移しているという。

広報担当者は「(高価格帯客室の専用ラウンジは)大勢と接しない空間で過ごせ、料理のレベルも高いとお客さまから感謝が寄せられている」とした上で、「仕事しながら余暇を楽しむワーケーション利用や富裕旅行者らを増やしたい」と意気込んだ。

ゆったり220平米

帝国ホテル大阪(大阪市北区)は10月1日、同ホテルで初となるエグゼクティブラウンジを開設する。昨年3月以降休業し、今年7月に閉店した23階のバーを改装する。酒類提供の自粛要請などで営業再開の見通しが立たず、高級志向の客を取り込む施設へと衣替えすることを決めた。

担当者は「都市へ出かけての観光が難しいからこそ、ホテルの中で安心して過ごせる場所が必要。将来に向け訪日富裕層の需要にもつなげたい」と話す。

全客室の約2割に当たる計75室の宿泊客だけが使えるプライベート感を売りに、人同士の距離も十分に取れる約220平方メートルを確保。専用タブレット端末で600冊の雑誌が読めるほか、軽食やドリンクが楽しめるようにする。

ラウンジ開設後はこの75室の販売価格を、平成30年度比で約15%上げることを目指す。

高額消費を取り込め

コロナ禍で個人消費の弱さが指摘されるが、株高などを背景に高額消費の市場は意外に堅調だ。

高級輸入車の販売増も続き、百貨店では足下も「高額時計や高級ブランドの服飾品などの売れ行きが好調」(高島屋大阪店)という。ホテルのラウンジ開設にはこうした高額消費を取り込む狙いがある。

このほか神戸メリケンパークオリエンタルホテル(神戸市中央区)、クロスホテル大阪(大阪市中央区)もレストランを改装するなどし、エグゼクティブラウンジを今夏新設した。クロスホテルの担当者は「客数をしぼった空間なら感染を気にせず客室以外でテレワークや気分転換もしやすい」とアピールする。

より上質な施設とサービスを提供する特別客室階はエグゼクティブフロアと呼ばれ、「ホテルの中のホテル」とも称される。その代表的な付帯施設がエグゼクティブラウンジだ。

ホテルジャーナリストの井村日登美氏は「客が限定される点で感染対策が取りやすく、ホテル滞在の幅を広げられる。国内で開発が続く外資ホテルに対抗するため、高級感を上げる狙いもあるだろう」と指摘している。(田村慶子)

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