イギリス、フランスからの入国者の隔離不要に 英ワクチン事業での接種完了が条件

Saint-Gilles-Croix-de-Vie (central-western France): holidaymakers on the embankment and the main beach, on the coast of the Vendee department.

画像提供, Getty Images

画像説明, 仏中西部サン・ジル・クロワ・ド・ヴィの行楽客

イギリス政府は4日、イングランド、スコットランド、ウェールズに入国するフランスからの渡航者について、新型コロナウイルスワクチンの接種をイギリス国内あるいはイギリスの接種プログラムに基づいて国外で完了していることを条件に、入国後の隔離措置を免除する方針を示した。8日午前4時から施行される。

イギリス政府は渡航制限をグループ分けしているが、フランスは「黄色(アンバー)プラス」リスト国から、一段階制限が軽い「黄色」に変更されることとなる。

イギリス政府先月、新型ウイルスのベータ株に対する懸念から、フランスを渡航制限リストに加えた。科学者はベータ株はワクチンに対して耐性が強い可能性があるとみている。

ドイツ、オーストリア、ノルウェーなど7カ国は、隔離や検査などが不要になる「グリーン」リスト国に追加された。

スペインは「黄色」リスト国にとどまり、ワクチン接種を完了した同国からの渡航者は引き続き、入国時の隔離措置が免除される。一方でスペインからの渡航者は、「国内での新型ウイルスとその変異株の流行に備えて」、出発前の必須検査として「ラテラル・フロー」と呼ばれる安価な迅速検査ではなく、PCR検査を受けることが推奨される。

「赤色(レッド)」リスト国から「黄色」リスト国に制限が緩和されたのは、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦。

現在「黄色」リストに含まれるメキシコは、「赤色」リストへ追加される。

8月午前4時以降、入国時の隔離措置を免除される「緑色(グリーン)」リストに含まれる国と地域は29から36へと増える。

ただし、各国が入国者について独自のルールを設けていることから、イギリスの「緑色」リストに含まれていても実際にイギリスへ渡航できるとは限らない。

また、帰国前と帰国後にウイルス検査を受けなければならないルールにも変更はない。

日本は引き続き「黄色」リストに含まれており、出発前後のウイルス検査と入国後の10日隔離が必要。

渡航制限リストの変更は次の通り――。

  • 「黄色」から「緑色」へ引き下げ:オーストリア、ドイツ、スロヴェニア、スロヴァキア、ラトヴィア、ルーマニア、ノルウェー
  • 「赤色」から「黄色」へ引き下げ:インド、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦
  • 「黄色」から「赤色」へ引き上げ:ジョージア、メキシコ、仏領レユニオン島、仏領マヨット島
  • 「黄色プラス」から「黄色」へ引き下げ:フランス

グランド・シャップス英運輸相は、「ワクチン接種事業は成功している。ワクチン接種による前進を生かして、海外旅行を安全に再開し、世界中の家族や友人やビジネスが再びつながれるよう支援している」と述べた。

サジド・ジャヴィド英保健相は、今回の変更により「緑色」リストに加わる国が増えた一方で、「赤色」リストに追加される国があるということはすなわち、「ワクチン展開の聖火を守る」ため、引き続き慎重な対応が必要だというあらわれだと話した。

隔離費用が値上げ

渡航制限リストの変更に加えて、隔離用ホテルの宿泊費も値上げされる(「赤色」リスト国からの入国時には、専用ホテルでの隔離が義務)。

12日から、大人1人の宿泊費は1750ポンド(約26万円)から2285ポンド(約35万円)に、大人2人目は1430ポンド(約22万円)となる。

英政府は、隔離措置にかかる費用を適切に反映したものだとしている。宿泊費にはホテルまでの交通費のほか、セキュリティや福祉サービス、滞在2日目と8日目に受けなければならない2回分のPCR検査の費用が含まれる。

5歳から12歳までの子供の宿泊費に変更はなく、325ポンド(約5万円)のままで、5歳未満は無料。

「場当たり的」と批判も

英政府はイングランドに関する渡航制限リストを設定しており、イングランド以外の地域はそれぞれ独自のリストを設けている。スコットランドと北アイルランドは、イングランドと同じ変更を加える方針だと認めた。

一方でウェールズは、英政府は「場当たり的に」渡航制限を決めていると批判。今回の変更にならうかどうかは検討するとし、「依然として感染リスクがあることから、必要不可欠な海外渡航を除くすべての渡航を控えるよう、引き続き推奨していく」と付け加えた。

英野党・労働党のジム・マクマーン影の運輸相は、政府が「フランスに対する対応を急転換」させたと批判し、どのように決定に至ったのかを説明する必要があるとした。

そして、「適切な戦略立てて完全なデータを提供し、国際的なワクチンパスポートについて世界のパートナーとの取り組みを進める必要がある。そうすれば旅行者や旅行業界は無謀な後戻りや混乱ではなく、明確な見通しを持てる」と述べた。

旅行業界の反応

英航空ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)のショーン・ドイル最高経営責任者(CEO)は、今回の変更を歓迎するとしつつ、政府にさらなる努力を求めた。

ドイル氏は英経済の回復は「盛んな旅行部門に依存しているが、現在は欧州の他の国よりも厳しいウイルス検査の条件や赤色リストの大幅な拡大により、欧州各国に後れを取っている」とした。

政府の発表にがっかりしたという英格安航空イージージェットのヨハン・ランドグレンCEOは、どの国がリストに含まれるのかがわからない状況が何日も続いていたため、顧客にとっては「いくらか安心感」が得られるニュースだと述べた。高額なウイルス検査については、是正が必要だとした。

空港運営協会のキャレン・ディーCEOは、イギリスの「海外旅行の意味ある再開にはまだ程遠い」と述べた。

英国旅行業協会ABTAのマーク・タンザーCEOは、「カタツムリのようなスピード」の対応では、ワクチン接種プログラムでの成功は生かせないと指摘した。