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ワクチン接種と未接種で海外旅行予約に4倍の差、ワクチン普及が旅行市場回復のカンフル剤 —トリップアドバイザー調査

2021.07.05

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新型コロナウイルス感染症のパンデミック発生以降、トリップアドバイザー(Tripadviser)では定期的に旅行動向調査を実施し、国内旅行や海外旅行はいつ回復するのか、新たに旅行者が求める旅行スタイルはどのようなものかなどを追跡してきたが、このほど、夏のレジャーシーズンを前にワクチンの登場が旅行市場にどれくらい影響を及ぼしているか把握する最新の分析結果を発表した。

調査は2020年5月4日~2021年5月9日までに収集された検索動向の分析及び、アメリカ、イギリス、オーストラリア、イタリア、日本、シンガポールの6市場、計2413人の旅行者を対象としたアンケートをもとに行った。その結果、ワクチン接種と未接種では海外旅行予約に約4倍の差があり、目的地選びにも違いが出ていることがわかった。
(図表出典:Travel Trends Report June 2021)

 

2021年の旅行意欲、6市場で日本が最も慎重派

今年に入って各国でワクチン接種が本格化しているが、世界の旅行者の2021年の旅行への意欲について、最新の調査では「慎重派」、「積極派」、「パンデミック前と同等」がほぼ同数で3等分された形となった。ただ、6市場別にみてみると、ワクチン接種の開始が早かったアメリカが最も積極派で、ワクチンで出遅れている日本が突出して旅行に対して慎重派であることがわかった。

 

ワクチン接種数が増えるほどホテル検索数が上昇。相関関係がはっきり

Tripadviserでの検索数を見てみると、2021年に入ってからは増加傾向にあり、旅行への意欲が高まっていることが分かるが、その度合いも国ごと差が出ている。

主要6市場にブラジル、カナダ、フランス、スペインの4カ国を加えた10市場において、ホテル検索数の増減を比べたところ、ワクチン接種が進んでいるアメリカやイギリスは2月以降上昇傾向であるのに対し、ワクチン接種が遅れている日本やインドでは逆に検索数が減っていることがわかった。特にアメリカではワクチン接種が開始された昨年12月を機に検索数が急上昇し始め、2021年3月と5月には新型コロナウイルス感染症発生以降、最も高いレベルまで回復している。

ワクチン接種が旅行市場を好転させる大きなカギとなることは当初から予想されていたが、その予測通り、ワクチンの普及が旅行者に自信を与え、旅行計画を立てるという具体的な行動に直結していることが証明されたといえる。

さらに、先進国のなかでも特にワクチンの接種数が多いイギリスとアメリカに絞ってみてみると、2021年に入ってから5月までの間、ワクチン接種が進むにつれて、国内のホテル検索数も増えるという相関関係がはっきり出ている。

ワクチン接種と未接種で海外旅行予約に4倍の差

国内のホテル検索数だけでなく、海外旅行の予約についてもワクチンの有無が大きな差を生んでいる。2021年の海外旅行を既に予約していると答えた人は全体では11%だったが、ワクチン未接種者に絞るとわずか5%しかおらず、ワクチン接種済みの回答者では21%にのぼった。ワクチン接種と未接種で約4倍の差があった。

国別にみると、アメリカでは25%が既に海外旅行を予約しているのに対し、日本はわずか3%だった。トリップアドバイザーによると「予防接種が消費者の旅行に対する態度と自信にプラスの影響を及ぼしていることは明らかだ」と指摘している。

ワクチンの安心感が食事と体験も後押し

ワクチンの好影響は、旅行中の楽しみである食事や体験にも及んでいる。トリップアドバイザーのレストラン検索動向をみてみると、パンデミックの最初の波が和らいだ昨年の夏に一つのピークができ、その後年明けのワクチン本格化以降は上昇傾向にある。実際、2021年5月の第1週には、分析された10の主要市場のうち8つで、レストランの検索数が前年比で増加した。特にアメリカでは今年5月第1週の時点で、昨年の夏のピークを越える程まで回復している。ただ、日本とオーストラリアでは、ほぼ横ばいのままだった。

一方、体験の検索動向で人気を集めているのが、自然や公園が31.2%で、全体の3分の1に当たる。次いで観光スポットやランドマークが25.6%、3位がショッピングで9.4%だった。ショッピングの9.4%という数字は、パンデミックの前の2019年同時期とほぼ同数で順調に回復したといえる。

旅行計画中の人を実際の予約まで取り込めるか

ワクチンの普及により旅行を計画し始めている人がある程度存在することは明らかだが、実は、旅行を計画はしているが、まだ予約していない人は全体の50%にのぼる。観光事業者にとっては、彼らに実際の予約を促せるかどうかが大きな分岐点となる。

2021年5月時点で感染状況が落ち着いていたオーストラリアでは、 21%が今年海外旅行を予定していると回答したが、既に予約済みは6%にとどまっている。英国でも海外旅行予定者は39%だが、既に予約済みは13%に留まる。潜在的な客を確実に取り込めるように、ホテルや観光事業者側からお得なプランの訴求など積極的なアプローチが必要かもしれない。

とはいえ、国境をまたぐ移動が規制されている現在は、まだまだ国内旅行が主流だ。5月の第1週時点でのチェックイン日に関するホテル検索動向をみると、6月分の検索の75%は国内の目的地が占めている。徐々に海外旅行の検索が増え、国内旅行の割合は減っているが、海外旅行と国内旅行が反転するのは11月になりそうだ。

 

ワクチン接種の安心感から、都市観光への回帰も

2020年11月当時のレポートでは、混雑した有名観光地を避けて、自然豊かな目的地へ行きたいという旅行者の傾向が出ていたが、ワクチン接種が進んできた今は都市観光への回帰傾向が読み取れる。実際、2021年に旅行を計画または予約している旅行者のうち、ワクチン接種済みかどうかで行き先に違いが出ている。ワクチン接種済みの旅行者では32%が都市観光を予定しており、次いでビーチが26%、アウトドア・自然への旅行は20%だった。逆にワクチン未接種者ではビーチ、アウトドア・自然、都市観光の順だった。

旅行解禁されれば、より長く高額な旅行がトレンドに

ワクチン接種の安心感は旅行先を都市観光へ変えただけでなく、消費者が失われた時間を埋め合わせようと、より長い旅行に向かう傾向を示している。2021年に旅行を計画している人のうち、パンデミック前より長く滞在したいと回答した人は全体で22%だったが、ワクチン接種済みの人に絞ると30%にのぼり、ここでもワクチン接種のほうが意欲的である傾向が出た。6市場別にみると、長期旅行への意欲はシンガポールが最も高く30%。最も低いのは日本でわずか6%しかいなかった。

特に海外旅行を計画している人は長期滞在になる傾向が強く、5月第1週のホテル検索の平均滞在期間をみると、6日以上の滞在が国内旅行では12%だったのに対し、海外旅行では46%と約4倍多かった。イギリスではその傾向が特に顕著で、57%が6日以上の旅行であり、16%が10日以上と回答した。

国内よりも海外旅行のほうが長期滞在になる分、かける予算も多くなる。5月の第1週時点でのホテルの平均予約額は国内旅行よりも海外旅行の方が軒並み高かった。

パンデミック前と比べて、次の旅行により多くを費やすと回答した人は、全体の26%だったが、ワクチン接種済みの人では35%にのぼり、未接種者では20%止まりとここでもワクチン接種の有無により差が出た。

 

ワクチン接種が進めばグループ旅行も可能に

旅行支出額の多寡は同行者の人数にもよる。大家族で旅行したいと答えた人は、ワクチン未接種者では7%に過ぎないが、接種済みでは13%と約2倍にのぼる。特にイタリアではその傾向が顕著で大家族で旅行したいと答えた人は25%と最も多かった。これは、予防ワクチン接種率が上がるにつれて、より大きなグループ旅行をする人が増える可能性を示している。宿泊施設やレストラン、アクティビティ提供者においては、個人客だけでなくグループ客への対応も視野に入れて、今後数か月、ワクチンの普及推移に留意しながら感染予防対策を進めておくとよいだろう。

今回の調査では、ワクチンが旅行需要回復のカンフル剤として機能していることが明らかになった。アメリカやイギリスのようにワクチン普及のペースが速い国では、宿泊施設の検索数が急増し、食事と体験の需要につながり、国内・海外とも旅行市場回復へ有望な兆候がみられた。その一方で、ワクチン接種が出遅れている日本をはじめアジア太平洋地域では旅行に対してまだまだ慎重派が多く、回復のペースは鈍化している。ワクチン接種が普及している国かどうかで明暗がくっきり分かれた形となった。

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