日本発欧州便では最大シェアを誇る人気のフィンランド航空(フィンエアー)。気候変動対策でも一歩時代をリードする取り組みを始めるようだ。
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世界で最も安全な航空会社の1つに数えられ、日本からの欧州便では最大シェアを誇るフィンランド航空(フィンエアー)は、コストダウンと気候変動対策を狙いとする燃料節約のため、機内誌を廃止するとともに、機内食を軽量化する取り組みを始める考えを明らかにした。
フィンランドの日刊紙ヘルシンギン・サノマットによると、フィンエアーは今後数年かけて、機内販売カタログと機内誌「ブルーウイングス」をいずれも廃止する。燃料の節減が第一の理由という。
使用機種によって異なるものの、カタログと機内誌の重量は1機あたり平均23〜57キロで、これらを載せて運ぶ燃料は全フライトの合計で年間473トン(2019年実績)になる。
フィンエアーの年間消費燃料は113万2187トン(同)なので、カタログと機内誌の運搬に使われる燃料は0.04%を占めることになる。
また、嘔吐時などに使うエチケット用紙袋については、「(機内誌などのように)デジタルで置き換えることは不可能」(フィンエアー担当役員)なので、廃止しないという。
機内誌や紙袋を減らしたところで、どれだけの差が……との声も聞こえてきそうだが、搭載重量の削減による燃料の削減効果は実はきわめて高い。
フィンエアーは最近、すべての利用客に1人あたり靴1足(右左合わせて約1キロ)の荷物を減らしてもらえた場合、どの程度の燃料を節約できるかを試算。結果は、年間でヘルシンキ〜東京間10往復分に達した。
なお、フィンエアーは独自の気候変動対策として、2025年までに温室効果ガスの排出量を19年比で半分にし、45年にはカーボンニュートラル(=排出量を実質ゼロ化)することを宣言している。
機内食にもスリム化の波
フィンランド航空は、コロナ禍を受けて雇用維持の原資を稼ぎ出すため、機内食を地元スーパーで試験販売する奇抜な作戦も展開している。
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また、これまでは「肉と魚、あるいは野菜」などとメニューを選べていた機内食についても同じく、燃料節減のために提供方法を変更するという。
フィンエアーではすでに、利用客にあらかじめメニューを指定して登場してもらうフライトを増やして、搭載する機内食の総量を減らす取り組みを行っている。
今後はほかにも、機内食にまつわる無駄を省く手法を検討し、燃料節約だけでなく(大きな社会問題となっている)フードロスの削減にもつなげていく。
コロナ感染拡大による移動制限のため、航空業界にとっては厳しい状況が続く。
日本の航空会社でも、国際線・国内線ともに減便が続き、日本航空(JAL)は2021年3月期の通期決算で2866億円の最終赤字を計上。ANAホールディングスの2021年3月期最終赤字も4046億円と過去最大に膨らんでいる。
JALでは地方自治体やコールセンター、教育機関、家電量販店など、さまざまな業種の130団体に1日あたり1700人が出向。ANAでも2021年4月までの累積出向者が約750人に達するなど、コスト削減に向けた努力が続く。
フィンエアーも、減便による収入減を受け、雇用維持のために定評のある機内食を地元スーパーで試験販売するなど、従来とはまったく路線の異なる施策を2020年から導入している。
今回明らかになった機内誌廃止などの取り組みには、燃料削減によるコストダウンを実現する狙いもあるとみられるが、それを気候変動対策にからめて進めるあたり、環境先進国が集まる北欧企業の面目躍如といえるのではないか。
(文:川村力)