持続的な観光推進へ 沖縄次期振興計画素案 量から質へ政策転換

 県が策定した2022年度からの新たな沖縄振興計画の素案に、増えすぎた観光客が自然や住民生活に負の影響を及ぼす「オーバーツーリズム」を取り上げ、「サスティナブル・ツーリズム」(持続的な観光)への転換を掲げたことが31日、分かった。観光政策の「量から質への転換」を打ち出し、自然環境の保全や地域の文化・生活環境を尊重する観光管理を進める。

 

 地域や離島単位で適切な入域観光客数を設定することや、各国で開発される「持続可能な観光指標」(STI)を沖縄でも導入する必要性を挙げた。

 

 県は「入域観光客数1千万人」を目標に掲げ、18年度に達成した。だが自然環境への負荷や住民生活にさまざまな不和を生む事例もあった。このため、観光客と地域住民の双方が共存を図るレスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)の推進も盛り込んだ。新型コロナウイルスの影響で観光産業が大打撃を受けている現状も踏まえ、感染症への防疫体制の強化や最新テクノロジーを用いて企業や社会の課題を解決する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」化などを進める。

 

 「自然と文化の魅力」と「安全・安心・快適な旅行環境」の両立で、高い付加価値を提供する世界水準のリゾート地形成を目指す。

 

 一方、次期振計のたたき台として1月に公表した骨子案では、克服すべき固有課題の中に「日米両政府に沖縄県を加えた協議の場『SACWO(サコワ)』の設置などを強く求める」と明記したが、素案で「サコワ」の文言を削除した。代わって、「日米両政府に沖縄県を加えた新たな協議の場の設置等が必要である」と抑制的な表現になった。

 県は31日、県振興推進委員会を開催し、素案と施策ごとに成果指標を設定した「関連体系図」の内容を正式決定した。玉城デニー知事は「新たな振興計画の特徴としては、沖縄らしいSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れ、新たに環境の枠組みを入れた。社会、経済、環境の三つの側面が調和した持続可能な沖縄の発展と誰一人取り残さない社会を目指していく」と語った。玉城知事は1日に記者会見し、詳細を発表する。 (梅田正覚) 

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