「紀伊路」の魅力再発見 官民連携で観光振興へ 和歌山・日高地域
熊野古道で「中辺路」や「大辺路」などと比べると知名度の低い「紀伊路」の価値を高めようと、日高郡の7市町などと大阪の不動産企画・開発会社が連携協定を結んだ。魅力的な観光資源に発展させ、地域の活性化につなげる狙いだ。
紀伊路は大阪からほぼ海沿いに進み、和歌山県田辺市で中辺路や大辺路につながる。多くが舗装された国道や生活道路と重なっているため、当時の風景をしのばせる場所は少なく、世界遺産にも登録されていない。しかし、飛鳥・奈良時代に都から天皇が白浜の温泉に通った「万葉の古道」とされ、沿道には関連する史跡がある。
7市町、日高広域観光振興協議会(事務局・日高振興局)と協定を結んだユニスト・ホールディングス(大阪市)は、大阪から紀伊路、中辺路を経て那智勝浦町にいたる参詣(さんけい)道を15日間で歩く「熊野街道事業」を企画。15カ所に宿泊拠点の整備を計画している。2021年から取り組んでいる中辺路では、すでに高原、近露の2カ所に宿泊施設を設けた。今年5月には滝尻にもオープンする予定。
日高地域には、3カ所に整備する方針で空き家の活用を想定している。それぞれ2、3軒で10~20人ほどが利用できるようにする。連携協定では空き家提供のほか、地元産品を活用した食事、土産品の開発、街並みの整備や保全、イベントでのPRなどが盛り込まれた。
紀伊路のうち日高地域には約500メートルに及ぶ石畳がある鹿ケ瀬峠(日高町)、「安珍・清姫伝説」で知られる道成寺(日高川町)、熊野九十九王子の中でも格式が高いとされる「切目王子」(印南町)、「伊勢物語」や「枕草子」などにも登場しアカウミガメの産卵地として有名な「千里の浜」(みなべ町)など見どころも多い。
10日に日高振興局であった連携協定調印式には、7市町の首長のほか、日高広域観光振興協議会の金崎昭仁会長、ユニスト・ホールディングスの今村亙忠社長が出席した。御坊市の三浦源吾市長は「これまで紀伊路をPRする機会がなかなかなかった。今回の提案をチャンス、起爆剤として協力していきたいと思う」と期待を込めた。