草津温泉の観光客、過去最高ペース 「若者意識の街づくり奏功」

前田基行
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 草津温泉群馬県草津町)を訪れる観光客が今年度、大きく伸びている。過去最高だった2019年度の327万人を上回るのは確実で、360万人台に達する勢いだ。関係者は「若者世代を意識したまちづくりが奏功した」と口をそろえる。

 町によると、今年度の観光客数は1月末時点で前年度同期比16%増の297万5655人にのぼる。コロナ下の20年度に194万人にまで激減した観光客は、3年連続で前年度を上回りそうだ。

 3月初め、町を訪れると、温泉街のシンボル「湯畑」は春休み中の学生らで大にぎわいだった。名物の湯もみと踊りショーは若者たちが長蛇の列。友達のインスタグラムを見て横浜市から訪れたという20歳の大学生の女性2人組は「(最近人気が出ている)草津温泉プリンを食べたい」と食べ歩きを楽しんでいた。

 「観光客全体の6~7割が若者世代という印象。昨年秋に在日ドイツ大使が町に来ましたが、若者の多さに『原宿にいるみたいだ』と驚いていました」

 そう話すのは、4期目を迎える黒岩信忠町長(76)だ。10年に町長に就任以来、湯畑を始め、西の河原公園など、中心部の再整備をしてきた。

 とりわけ、草津温泉の印象を大きく変えたのが、16年に始めた夜の湯畑のライトアップだ。もうもうと立ち込める湯気に光を当てて幻想的な雰囲気を演出し、夜の街歩きを誘った。「裏草津」と名付けた地蔵地区では、温泉の蒸気で顔を潤す「顔湯」や、若者向けに漫画を読める施設を整備した。昨年秋には新たな玄関口となる「温泉門」も造った。

 ターゲットにしたのは「東京圏の10代、20代の若い女性たち」。「レトロだけど、おしゃれで華やか」をキーワードに、情緒のある古い街並みを大切にしながら、どこにカメラを向けても絵になるまちづくりを意識した。その結果、「若い人が街にあふれ、観光客そのものが景色になった。人が人を見て驚き、さらに華やかさが維持されている」という。

 さらに、「草津温泉アンバサダー」として、モデルやインフルエンサーを任命するなど、草津温泉観光協会も、SNSなどを通じて若者世代や外国人観光客向けのプロモーションを強化しており、「好循環を生み出している」(協会職員)。

 この約15年のまちづくりの投資額はハード面だけで70億円ほど。今後、温泉門から湯畑に通じる中央通りの整備や、スキー場のレストハウスの建て替え、バスターミナルの改修などを予定。黒岩町長は「投資から利益を生む、というビジネスの観点から思い切った投資をしてきたが、それがいま非常に功を奏してきた。手を止めず、進化を遂げるまちづくりを進めたい」と話している。(前田基行)

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草津温泉のまちづくりの取り組み

2010年   黒岩町長が就任し、湯畑の再整備に着手

 11~19年 湯畑周辺の電線の地中化

 13年   源頼朝の入浴伝説がある「御座之湯」再建

 14年   棚田状の「湯路広場」完成

 15年   湯もみと踊りショー舞台の「熱乃湯」建て替え

 16年   湯畑のライトアップ開始

 17~18年 西の河原公園再整備

 18~22年 地蔵地区「裏草津」の再整備

 23年10月 国道の立体交差化に合わせた「温泉門」と足湯完成

   12月 草津温泉スキー場の大型ゴンドラ、展望レストラン完成

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