「子育て・企業誘致・観光」の3本柱を重視 香川県の新年度予算案

多知川節子
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 香川県は9日、総額4866億円の2024年度一般会計当初予算案を発表した。総額は23年度当初より0・4%減ったが、23年度にあった新型コロナウイルス対策費を除いて比べると3・2%増となる。

 池田豊人知事は「子育て支援」「企業誘致」「観光振興」の3本柱を重視しつつ、「財政規模に見合った未来への投資」を基本方針に据えたと話した。

 就任後2度目の当初予算編成にあたった池田知事は発表の会見で、「財政の持続可能性は確保しなければならないが、将来に向けた必要な投資はしっかりしなければならない」と話し、県園芸総合センターと公渕(きんぶち)森林公園(いずれも高松市)、津田の松原(さぬき市)の県有3施設の大規模リニューアルにより、県民らが長く楽しめる新たなにぎわい拠点をつくる考えを示した。3施設には、あわせて4億2800万円を充てる。

 就任時から引き続き重点を置く3本柱については「一歩一歩前に行くメニューを組めた」とした。

新規事業では、建築家の安藤忠雄氏が寄付を申し出ている「こども図書館船」の準備費用や、地元のローカル私鉄「ことでん」の新造車両導入に向けた補助も盛り込みました

 子育て世代の孤立を防ぐため、「かがわ子育てステーション」を既存施設も含めて小学校区に一つ以上、計200カ所の登録を目指し、マップ化する事業に912万円を盛り込んだ。産後ケア利用料の独自補助395万円や、婚姻届を出した新婚夫婦が協賛店で優待を受けられるパスポートの配布633万円なども始める。子育て関連で前年度より6億円増の24億円を計上した。

 社会情勢をふまえての企業誘致や産業基盤育成にも力を入れる。生成AI(人工知能)の急成長に伴い需要が高まっている大規模データセンターの整備や、運転手の労働時間規制による人手不足が懸念される物流業界で、生産性を向上させるための物流拠点施設の賃借に対し、1社あたり5億円を上限に助成する制度を新設する。企業誘致には総額23億円を充てる。

 観光分野では、瀬戸内海国立公園指定90周年の記念事業に1億5700万円を計上。25年の大阪・関西万博にむけて観光客の受け入れ環境の向上を図り、栗林公園(高松市)の音声ガイド多言語化や、空港リムジンバスのキャッシュレス化支援なども盛り込んだ。(多知川節子)

「県債残高減」目標を見直し、積極投資へ

 池田知事は昨年10月、県の総合計画を見直した。21年10月に策定した5年計画の途中だったが、深刻化する人口減少や少子高齢化をふまえ、「『人生100年時代のフロンティア県・香川』実現計画」とタイトルから改め、自身が柱とする子育て支援や企業誘致、観光振興への重点姿勢を鮮明にした。

 一方、その実現に向け、11月には、毎年策定していた財政運営の指針も「財政運営ビジョン」と名称変更し、5年計画に改めた。

 大きな変更点は、借金にあたる「県債残高」を毎年度減少させるとしてきた目標を見直し、財政規模に対する負債の割合を示す「将来負担比率」を、過去10年を上回らない200%以内に維持する、との目標に切り替えたことだ。

 「県債残高を減らすだけでは発展のための投資が難しい」との知事の考えを反映。積極的な投資で地域経済の成長を促し、税収増にもつなげ、「経済と財政の好循環」を生み出す、とうたう。

 新年度当初予算案はこれらをふまえたものとなり、国が返済を肩代わりする臨時財政対策債を除く県債残高は、24年度末で前年度末より49億円増え、4649億円となる見込み。増加は22年ぶりとなる。将来負担比率の見込みは186・6%でクリアした。

 当初予算案は過去20年で見れば、コロナ対策費で膨らんでいた22、23年度に次ぐ3番目の規模となった。

 実際には、来年3月にオープンを控える県立アリーナの建設工事・備品費(前年度比61億円増)や、県職員の定年制度見直しなどによる人件費増(同81億円増)の影響が大きいが、「未来への投資」も各分野にちりばめられた。

 「池田カラー」の強まった新年度当初予算案は、16日開会の2月定例県議会に提案される。(多知川節子)

主な新規事業

◆地震・津波被害想定策定(1億1476万円)

 今年度中に国が南海トラフ地震の被害想定を見直すことをふまえ、14年にまとめた県内の被害想定を改めて見直す

◆断熱改修補助(5000万円)

 すでに建設した住宅のすべての窓と玄関を断熱改修する家庭に20万円を補助する。子育て世帯や高齢者を含む複数世代同居では5万円を上乗せ

◆高松琴平電気鉄道の車両更新補助(9000万円)

 老朽化が進むことでん車両について、新造車両の設計費の一部を国とともに補助し、安定した運行や利便性向上を支える

◆公共交通事業者の運転手確保支援事業(845万円)

 バスやタクシーの人手不足対策として、二種免許取得に対して1人あたり上限10万円、就職説明会の開催に対して上限10万円を事業者に補助する

◆初任者教員の指導・サポート充実事業(1億1560万円)

 初年度から学級担任を担う小学校の初任者教員への指導や業務支援のため、主に60歳を超えるベテラン教員を加配し、負担軽減を図る

◆こども図書館船(仮称)準備事業(1244万円)

 建築家の安藤忠雄さんが寄付を申し出ている船を活用し、離島を巡る「こども図書館船(仮称)」を25年度から運航するため、蔵書約3千冊の収集やPR動画を作成する

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