新型コロナ対策の緩和で社会経済活動が活発化した2023年、鹿児島県内では大型ホテルの開業や全国的なイベントの開催が重なり、観光業界は明るいニュースが目立った。一方で、業界は人手不足などの問題も抱え、「今年以降が正念場」との見方もある。(加治隼人、冨田悦央)

「2024年度以降、大きなイベントない」

 「23年度は総文祭(全国高校総合文化祭)や国体があったが、24年度以降は大きなイベントがない。今後も厳しい環境が予想される」

 昨年9月に鹿児島市で開かれた観光業界関係者と県議らの合同研修会。出席者の間からは、そんな不安の声が上がった。

 「新型コロナ前の経営環境に戻るには相当の時間がかかる。融資の返済もあるのに」「県外学校からの修学旅行の受け入れは危機的状況」といった業界の現状が語られ、県に対策を要望した。

 23年は、5月に新型コロナの感染症法上の位置づけが5類へ引き下げられ、社会経済活動が回復に向かう年だった。

 県内でも韓国からのチャーター便を手始めに、香港便や台湾便など国際線が順次再開。国際クルーズ船も年間125回の寄港があり、インバウンド(訪日旅行)の動きも増えた。

 ホテル誘致も進んだ。世界最大手のマリオット・インターナショナルのホテルブランドが、鹿児島市と垂水市に相次いで開業。地元経済界は「地域経済の発展につながる」などと期待を寄せた。

 県内では7月に総文祭があり、各地から約2万人の高校生らが参加。10月には半世紀ぶりとなる地元での国体が開催され、塩田康一知事は「コロナ禍からの飛躍と再生を象徴する大会」と位置づけた。県の統計によると、国内客の宿泊者数はコロナ禍前の水準までほぼ回復した。

「追い風」が吹いたはずの観光業… 「景気の実感できていない」

 そんな23年の観光業界の実際はどうだったのか――。

 九州経済研究所の福留一郎・経済調査部長は「アフターコロナの起点の年で、回復傾向ははっきりしていた。国体の経済効果ももちろん大きかったはずだ」と評価する。

 研究所の試算によると、かごしま国体・かごしま大会には県外から約38万人が訪れた。県内の約44万人の参加者も加味して算出した観光消費支出額や、会場の施設整備費などを合わせると、経済波及効果は806億円だった。

 「ただ、追い風が吹いていた割に、意外と『力強さ』が感じられない点が気がかりだ」とも指摘する。

 県内事業所を対象とした研究所…

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