富士登山抑制に予約制導入の提案も 官民で議論、来年3月に対策公表

池田拓哉
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 オーバーツーリズム観光公害)が問題となっている富士山の登山者抑制策を話し合う「富士山における適正利用推進協議会」の今年度の初会合が29日、山梨県富士吉田市であった。国や山梨、静岡両県の自治体、関係団体が参加し、抑制策が続々と提案された。来夏の登山シーズンに向けた対策を来年3月に公表する。

 会議では、今夏の登山者数が22万1322人に上り、コロナ禍前の2019年(23万5646人)の水準に戻りつつある状況が報告された。それに伴う登山道での混雑発生や、十分な休息を取らずに徹夜で山頂を目指す「弾丸登山」、軽装での登山の横行が指摘された。

 参加者は、登山者抑制に向けた抜本的な対策の必要性を相次いで訴えた。

 山梨県世界遺産富士山課の笠井利昭課長は「軽装登山者や弾丸登山者を富士山に来させないという議論をしていかないといけない」と提起。国に対しては、省庁の垣根を越えた対応や法律の見直しなどによって、積極的に対策に乗り出すよう注文を付けた。

 吉田口ルートの山小屋関係者でつくる「富士山吉田口旅館組合」は予約制を提案した。担当者は「登山は宿泊者のみ、あるいは午前中早い時間だったら日帰りで登れるなど、きちんと制度をつくることが必要だ」と述べた。

 ふもとの富士吉田市は、山小屋への宿泊予約を条件に登山を認めることが、弾丸登山や混雑などの課題解決に有効だと訴えた。富士山保全協力金(入山料)の義務化も主張した。

 山梨県山岳連盟の担当者は、研修を1時間受けないと登らせないようにするなどの方法で、マナーを徹底させるべきだと提案した。

 静岡県側の富士宮ルートの山小屋関係者による「表富士宮口登山組合」の担当者は「雨量200ミリの悪天候時でも、雷雨があっても通行止めにならない。法改正が必要ではないか」と語った。登山者に対して、5合目に着く前に規制をかける必要性も指摘した。

 御殿場口山内組合の担当者は、海外からの登山者の軽装登山を問題視した。万全の準備を意識づける目的で、外国人に対しては出国の時点で申込制とするなどの方策を国に求めた。(池田拓哉)

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