伝統文化でインバウンド誘致 三嶋大社で究極のツアー

南島信也
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 訪日外国人客インバウンド)を誘致しようと、静岡県三島市の市観光協会がユニークな実証ツアーを企画した。富裕層にターゲットを絞り、三嶋大社で日本の美と伝統文化を堪能してもらう試みだ。三嶋大社の御利益にあやかりたいという願いも込められている。

 ツアー名は「五感で楽しむ究極の神社体験」で、8、9の両日に開催された。8日は首都圏やハワイに住む外国人ら12人のほか、日本の旅行会社の関係者も参加した。イギリス生まれで神職検定1級を持つチャート出意人(デイビド)さんから三嶋大社の歴史や参拝の作法などを教わった。神職や巫女(みこ)から格衣を着せてもらい、正式参拝を体験した。

 さらにライトアップされた舞殿では、華やかな装束をまとった雅楽師・東儀秀樹さんのコンサートが開かれた。東儀さんは笙(しょう)や篳篥(ひちりき)などの雅楽器を英語で紹介し、自身のオリジナル曲などを演奏。ディズニーの名曲「星に願いを」が夕闇に包まれた境内に鳴り響いた。

 雅楽鑑賞後は、自然の趣を生かした回遊式庭園の中にある日本家屋「隆泉苑」で、一流シェフによる地元産品を使ったディナーを楽しんだ。

 三嶋大社には年間約300万人の参拝客が訪れる。その一方で、三島市を訪れる外国人の数は伸び悩んでいる。JR三島駅南口にある観光案内所の集計によると、2015年度以降で最も外国人来店者が多かったのが19年度の9482人で、外国人の比率は10・8%だった。今年度はコロナ禍による落ち込みから回復して過去最高になる見通しで、4~7月の外国人比率は17・5%になった。

 市観光協会では、三島は伊豆半島の玄関口で、箱根と富士山の中間に位置する好立地にもかかわらず、通過点となっていると分析。近年、神社や寺院の文化に触れて心身を清める体験ツアーが外国人の人気を集めていることから、三嶋大社の協力を得て企画した。

 同協会によると、「三島でこんなツアーができるとは考えたことがなかった」「磨けばもっと光る」といった感想が参加者から寄せられたという。担当者は「三島市だけの取り組みでは限界があるので、県や他市町とも協力し、魅力ある企画を発信していきたい」と話している。(南島信也)

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