日本の遊園地やテーマパークは、流行や価値観と呼応しながら浮き沈みの歴史をたどってきた。特にここ数年はコロナ禍によって大きな影響を受けたが、世の中に日常が帰ってくるとともに活気を取り戻している。

 多い時で年間3千万人以上が足を運んだ東京ディズニーリゾート(TDR)。業界の「勝ち組」ながら、コロナ禍に見舞われた2020年2月末から4カ月間にわたり休園した。TDRを運営するオリエンタルランドは20年度の売上高が前年度より63・3%減少。541億円の純損失を計上し、上場以来、初の赤字になった。

 オランダの街並みを再現した「ハウステンボス」(長崎県佐世保市)も入場者数が激減。運営主体だった旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)自体の業績が悪化し、香港の投資会社に事業を売却した。

 経済産業省の調査によると、コロナ禍前の19年に7184億円だった遊園地・テーマパークの売上高は20年には2638億円に急落。だが、その後は復調し、22年には6千億円と19年の8割まで回復した。さらに23年は1~6月で3700億円を超えた。

 一度は途絶えた客足も戻っている。19年に7946万人だった入場者は20、21両年には3千万人台にまで減ったが、22年は5766万人に「U字回復」した。

 日本政府観光局によると、訪日外国人客(インバウンド)数も7月時点で19年同月比の約8割まで回復。テーマパークの集客に追い風となっている。

 コロナ対策として導入した仕組みやサービスの中には、感染拡大が落ち着いた後もそのまま定着したものがある。その一つが、曜日や人出予想などに応じて入場料を変える「ダイナミックプライシング(変動価格制)」だ。USJが19年に始めたが、コロナ禍をきっかけに、他のテーマパークにも広がった。

 園内の「密」対策も兼ねて21年3月に導入したTDRでは、アトラクションの待ち時間が短くなり、グッズの購入やレストランで食事をする入園者が増加。21年度の入園者1人あたりの売上高は19年度比で約3千円増えた。

 人出の回復と共に、混雑緩和をみすえて値上げに動く施設も少なくない。民間調査会社の東京商工リサーチによると、調査対象の40施設の遊園地、テーマパークのうち、26施設で昨年7月以降に入場料などの値上げが行われた。更にテーマパークではUSJの他にも5施設で変動価格制が導入されているという。

 課題は人手不足だ。

 オリエンタルランドは、4月からパートやアルバイトを含む従業員の賃金を平均約7%引き上げた。USJを運営するユー・エス・ジェイも3月に賃上げに踏み切った。ハウステンボスも7月から平均6%引き上げた社員と契約社員の賃金を更に来年も同率で2年連続で引き上げる方針だ。

 一方、業績が回復したことで職場としての人気も戻りつつある。就職情報会社の学情が昨年行った24年の卒業・修了予定者を対象にした就職人気企業ランキング調査で、オリエンタルランドは前年の33位から9位に急回復した。(森下友貴、金子智彦)