城山ホテルが定昇3%など実施 人材確保戦略、公休日数も増やす

冨田悦央
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 城山ホテル鹿児島(鹿児島市新照院町)を運営する城山観光の東清三郎社長は、4月に約3%の定期昇給など正社員約550人の処遇改善を実施する方針を明らかにした。初任給も引き上げ、年間公休日数も増やす。鹿児島の迎賓館とも呼ばれ、今月23日に開業60周年を迎える老舗ホテルの人材確保戦略ともいえ、鹿児島県の基幹産業である観光関連業界をはじめ人手不足に悩む他業種にも影響を与えそうだ。

 新型コロナの水際対策緩和で訪日外国人客が増えることなどをにらみ、来春は16年ぶりに基本給を底上げするベースアップにも踏み切る構えだ。

 同社は2020年度はコロナ禍で計36日間の全館休業を余儀なくされ、定昇の実施時期を半年遅らせるなど打撃を受けた。東社長は「雇用調整助成金を利用するなどして雇用を守ってきた」と話し、21年度(1・9%)、22年度(2・9%)の定昇・昇格昇給に続いて、今春は3%ほどの昇給を実施するとした。

 4月入社の社員の初任給は、高校卒が前年度より5千円アップの15万4千円、短大卒と大卒がそれぞれ同2千円増の16万5千円、18万2千円に引き上げる。年間90日の公休日数は10日増やすという。

 政府の全国旅行支援や行動制限の撤廃で昨年11、12月の宿泊部門の売り上げが過去最高を更新するなど足元の経営環境は改善してきた。東社長は「コロナ感染拡大の第7、8波に見舞われたが、22年度決算は当初計画の96%にあたる78億円の売上高を確保できる見通しになった」と話し、23年度の売上高は前期比15%増の90億円を目指すという。約330人の非正規従業員の時給も一部は今月から100円アップの千円に引き上げ、来春には全部門を千円にする方針だ。

 5月中旬に県初の外資系都市ホテルとなる「シェラトン鹿児島」(鹿児島市高麗町)が開業予定で、県内宿泊業の競争激化は必至とみられる。東社長は「来春にはベアとともに大卒初任給のさらなる引き上げや、公休日数を年間109日に増やすなど従業員の処遇改善を続ける」としている。

 県によると、19年度の県内宿泊・飲食サービス業の生産額は1518億円で県内総生産(5兆7729億円)の2・6%、20年の同業の就業者数は4万4456人で県全体(76万8983人)の5・8%を占める。観光消費・支出の増加は運輸、小売業など幅広い分野の成長にもつながるため、県は観光関連業界を、農林水産業とともに県の基幹産業と位置づけている。(冨田悦央)

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