大阪の迎賓館「名称とブランド守る」 外資と資本提携のロイヤルホテル蔭山社長

ロイヤルホテルの蔭山秀一社長=6日午後、大阪市北区(須谷友郁撮影)
ロイヤルホテルの蔭山秀一社長=6日午後、大阪市北区(須谷友郁撮影)

外資系投資会社と資本提携し、約90年の歴史を誇る「リーガロイヤルホテル」(大阪市北区)の土地、建物を売却することを発表しているロイヤルホテルの蔭山秀一社長は6日、産経新聞の単独インタビューに応じ、「リーガロイヤルホテルとして今後も運営を続ける」と強調した。〝大阪の迎賓館〟とも称される老舗の名称とブランドを守り続けることを誓い、従業員の雇用や労働条件については変更がないことを説明した。

ロイヤルホテルは1月、カナダの生命保険会社傘下、ベントール・グリーンオーク(BGO)との資本業務提携を3月に結ぶことを発表した。BGOはリーガロイヤルホテルに135億円を投じ、大阪・関西万博開催直前の令和7年3月までに客室などの大規模改装を行う。蔭山氏は「10年分の投資を一気にやり、ダイナミックに変わる」と期待した。

「建物の劣化が進んでいることなどがこのホテルの弱点だった」。現在のリーガロイヤルホテルの建物は昭和40年に建てられ、増築を重ねている。今回の提携の背景には、周辺で外資系ホテルの開業が相次ぐ中で、老朽化などによるブランド価値の相対的低下への懸念があったと明かした。

BGOによる改装は、高級タイプの客室棟である「タワーウイング」(計494室)を中心に行い、1室当たりのスペースを広くする計画で、客室は現状の全1039室から減らすことを検討している。1万4千円程度の1室当たり客室単価を倍以上に高めることを目指している。一部のレストランも収容人数を広げる。一方で、宴会場は現在の機能を維持し、地元客の期待に応えられるようにする。

リーガロイヤルホテル=大阪市北区(須谷友郁撮影)
リーガロイヤルホテル=大阪市北区(須谷友郁撮影)

BGOとの資本提携によって英インターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)の独立ホテル系ブランド「ヴィニェットコレクション」の一つとなるが、「リーガロイヤルホテル」の名称は維持する。IHGが全世界に1億人超の会員を持つ販売網を生かして海外富裕層を取り込む狙いがあるという。

一方、ロイヤルホテルは、今後BGOが日本国内で投資を計画している約3千億円超のホテル建設について、運営を受託する優先交渉権を持つ。ロイヤル側にとっては投資の負担なく拠点の拡大につなげられるとみている。

今回の契約ではBGOがロイヤルホテル株の約33%を保有する筆頭株主になるが、蔭山社長は「わが社の従業員が解雇されたり、処遇が変わったりすることは一切ない」と説明。財界関係者がよく利用することでも知られる同ホテルだが「財界との関係性が悪くなることはなく、(海外から富裕層を迎えられる施設に生まれ変わることで)むしろ大阪の財界が活気づくだろう。将来にわたって大阪ナンバーワンのホテルになる可能性が高まる」と話した。(田村慶子、井上浩平)

ロイヤルホテルの蔭山秀一社長の一問一答は次の通り。

--外資系の不動産投資会社への売却を発表後、愛用者らの反応は

「皆さんに応援してもらっているという感触はある。ロイヤルホテルがなくなると捉えている方もいるので、株主を中心に説明している。大阪の財界人には個別に話を聞いてもらう」

--リーガロイヤルホテルは関西財界とのつながりが強いが、今後の変化は

「変化するはずがない。今までできなかったリニューアルをして海外からの国賓などを受け入れることができれば、財界が間違いなくよくなっていく。それが私たちの責任と思っているし、財界からそっぽを向かれるようなことをしたつもりは全くない」

--今後の勝算は

「2025年大阪・関西万博もあり、IHGは必死で富裕層を送り込んでくるし、大阪のリーガロイヤルホテルがすばらしいホテルだと宣伝する。広告宣伝費もかけると聞いており、われわれも必死でお客さんを迎え入れなくてはいけない。まさに一蓮托生だ」

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