IR用地の賃料「不当に安い」 契約の差し止め求め住民監査請求

寺沢知海 箱谷真司
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 大阪府市が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)の市有地の賃料が不当に安く違法だとして、市民有志85人が16日、大阪市に対し、IR事業者との賃貸借契約の締結の差し止めを求めて住民監査請求した。賃料の算定を巡り、市側がIR事業の土地価格への影響を「考慮外」とするよう指示したことなどを違法だと指摘。一方、市側は賃料の設定は適切に行われたとしている。

 IRの予定地は、大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)にある49ヘクタールの市有地。一部は大阪メトロ中央線延伸部に新設予定の「夢洲駅(仮称)」に隣接する。市は事業予定者の米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの連合体に、この土地を35年間貸し出す予定で、賃料は年間で約25億円に設定されている。

 賃料の根拠となったのは、市が2019年に不動産鑑定業者4社に依頼し、作成された不動産鑑定評価書。鑑定では通常、その土地で想定される最も有効な用途を基に評価される。

 市監査課に提出された監査請求書によると、市はIR用地の賃料算定のために鑑定評価を依頼した一方で、4社に対しIR事業による影響を「考慮外」にするよう指示したという。この結果、IR用地の最も有効な用途として、4社とも大型ショッピングモールなどの大規模な商業施設が建設される想定で、賃料が算定されたとしている。

 その上で、市の区域整備計画ではIR用地の約5分の1がホテルの用地になっており、観光拠点で駅前立地のホテルは大規模な商業施設よりも収益力が高いと主張。さらに、市がIR用地に高層ホテル建設などで土地改良費約790億円の負担を決めたことも踏まえ、ホテルを含まない評価は「不当」と指摘した。

 また、鑑定評価額は4社のうち3社が「1平方メートルあたり月額428円」で一致。この点について「業界の常識からもありえない。市の指示ないし誘導があったか、業者間で打ち合わせて価格を合わせたことしか考えられない」と主張している。

 会見で請求人代表の藤永延代(のぶよ)氏は「市民ではなく、IR事業者のために(安い賃料設定を)頑張ったとしか思えない。こんな値段で貸すのは許せない」と話した。

 大阪港湾局は、鑑定業者からIRは国内に前例がないため評価に含めるのは適切ではないなどの意見を受け、考慮外を指示したと説明。「価格を指示した事実はなく、賃料は適正に設定された」としている。監査請求は、監査委員が受理した場合、60日以内に審査し、「勧告」「棄却」などの決定が請求人に通知される。(寺沢知海、箱谷真司

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