旅館・ホテルの景気「急回復」に採用が追いつかない…残業も急増の悲鳴:景気動向調査

ホテルの部屋

写真はイメージです。

撮影:Business Insider Japan

帝国データバンクが11月4日に発表した「TDB 景気動向調査(全国)」の10月調査が興味深い。観光業の急回復と、それにともなう悲鳴とも言える状況が浮かび上がる内容になっているからだ。

同調査は、景気動向の体感を景気DIなどの値として算出して分析したもので、2002年から続いている。今回は調査対象2万6752社、有効回答1万1632社(回答率43.5%)という、規模の大きな定点調査だ。

DI値とは:内閣府が毎月公表する景気動向指数の一つ。事業者が7段階で答える回答を元にDI(ディフュージョン・インデックス)を算出して「景気DI」などに数値化することで、体感値の変化を指数化している。レポートによると、景気DIの場合、DI値50が判断の分かれ目で、50より上なら「良い」、下であれば「悪い」という意味になる。

旅館・ホテルの「景況感」が大幅に回復

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観光関連業種の中でも、10月の回復が著しいのは「旅館・ホテル」だ。飲食店や旅行業も上向いているが、前月比増では圧倒的に伸びている。

出典:帝国データバンク「TDB 景気動向調査(全国)」

調査は「サービス」「運輸」など全10業界を横断したものだが、なかでもレポートが「大きく回復した」としているのが「観光関連」だ。

10月11日から全国旅行支援がスタートしたことなどで、宿泊業、旅行業を中心に景況感の回復が著しい。

10業界、40以上ある業種のサブジャンルのうち、前月比の景気DIが最も大きく好転したのは「旅館・ホテル」業。前月比+15.9ポイントで、景気DI「53.3」と節目の50を超えた。

調査の中では、旅館運営者からの声として、例年の繁忙期であり一番のかき入れ時に全国旅行支援が重なって「過去最高の予約の入り方になった」というコメントもあった。

なお、10月の景気DIで50を超えているのは、「電気通信(52.4)」「情報サービス(52.3)」と前出の「旅館・ホテル」の3業種のみだ。

データに表れた「採用が追いつかない」「残業で乗り切る」現実

観光地

観光地も活気を取り戻しつつある(写真はイメージです)

撮影:Business Insider Japan

ただし、調査データからは、働く環境のきしみも見え隠れする。需要の急回復に現場の強化が追いついていないのだ。

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需要の高まりが急激なため、時間外労働時間DIの増加は調査全体(左)に対しても、旅館・ホテルの高さが際立つ。

出典:帝国データバンク「TDB 景気動向調査(全国)」

「時間外労働時間DI」(上)で見ると、前月比の増加が10業界全体では0.7ポイント増の50.4なのに対し、旅館・ホテル業は7.7ポイント増(66.4)と突出して高いことが分かる。

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