首里城正殿再建へ起工式、沖縄知事「大きな一歩」

2019年10月の火災で焼失した首里城正殿の起工式が3日、那覇市で行われた。入り母屋造りの木造3階建てで、延べ面積はおよそ1200平方メートル。スプリンクラーや放水口の新設などで防火・防災機能を高める。総工費は1992年の前回復元時の4倍近い約120億円で、内閣府沖縄総合事務局は2026年秋の完成を目指す。

新型コロナウイルス禍前は年間約280万人が訪れた「沖縄のシンボル」の復興を願い、起工式には岡田直樹沖縄・北方相や玉城デニー知事らおよそ240人が出席。玉城知事は「首里城の復元を願う皆様の思いの結実に向けた、大きな一歩だ」と語った。

起工式に先立ち、正殿のはりに使う長さ約9メートル、重さ約4トンの材木「オキナワウラジロガシ」を運ぶ木遣（きやり）行列が行われた。首里城完成を祈る琉球王国時代からの古謡を地元保存会の女性がたおやかに歌い上げたのを合図に、約140人の行列が首里城の中山門跡をゆっくりスタート。大勢の見物客が見守るなか、守礼門に向けて約500メートルを進んだ。

セレモニーに参加した首里振興会の玉那覇美佐子理事長（71）は「沖縄の歴史と文化を伝えるのが首里城。火災からの復興は、コロナ禍から立ち直る現状と重なる思いがする」と語った。古謡を奉納した保存会の玉城弥生会長（72）は「首里城は心のよりどころ。無事に完成しますようにと祈った」と話した。

「再建工事にはもっと市民のアイデアを生かしてほしい」と語るのは、焼失した首里城でボランティア活動を経験した那覇市在住の宮城光男さん（46）。「普通の公共事業と同じで、いつの間にか設計されていて私たちの意見を聞いてもらえない。愛着を持てと言われても戸惑う人もいるのでは」と指摘した。

家族旅行中に首里城公園に立ち寄った米国ハワイ・ホノルル市在住で日系3世のレンド・タケオ・中原さん（69）は「6年前に見た首里城は荘厳で美しかった」と笑顔で当時を振り返る。「沖縄の大切なシンボルの焼失は残念だが、再建工事が完成したら必ず見に来るつもりだ」と語った。