残念ながら、「インバウンド需要は急回復する」と考えるのが危険な理由入国者数の制限が撤廃(1/4 ページ)

» 2022年10月31日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

WEB3.0専門のコンサル会社 マーヴェリック株式会社 COO(Chief Operating Officer)

城北宣広株式会社(広告業)社外取締役

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


 政府は新型コロナウイルスの水際対策としてきた、1日当たりの入国者数制限を10月11日より撤廃しました。

 同時に国内の需要を喚起すべく全国旅行支援もスタートしました。

 観光、飲食、航空・鉄道、小売りなどコロナでマイナス影響を被った産業は 大きく期待してると思います。各種メディアでも、海外旅行客が増えたというニュースを連日報道しています。実際に東京の銀座・浅草・築地や、京都などでは明らかに海外旅行者の姿を見ることが増えたかもしれません。

 インバウンドの回復がどれくらい市場へのインパクトを生むのかという点について確認してみたいと思います。

「あの頃に戻ってほしい」と考える人は多い(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 次の図を見てください。これは、東京五輪の前に開催された、リオデジャネイロ五輪とロンドン五輪における観光客数の比較です。

 当然のことですが、開催が決定した年の前年から開催年にかけて、各国の観光客数は伸長しています。特筆すべきは日本の伸長率の高さです。リオデジャネイロ五輪、ロンドン五輪は、開催決定前から開催年までの海外からの入国者数の平均伸長率は123.1%でした。一方、日本は開催前年の2019年までで381.5%と驚異的な数値を誇っています。開催年はコロナ発生年ですから、皆さまもご承知の通りインバウンドは激減しました。

 “五輪後不況”といわれるように、開催後の観光客は減少しているイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、実際は開催後も上昇しています。過去2回の開催国における平均伸長率は105.4%です。

 五輪という情報発信力の絶大な効果と日本の魅力が高いことがみてとれます。

五輪開催国における観光客数の推移
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.