万博へMICE誘致チーム オール大阪、8部隊投入

令和7(2025)年の大阪・関西万博の開催期間に合わせて、「MICE(マイス)」と呼ばれる国際的な会議や展示会を大阪に誘致しようと、大阪観光局など9企業・団体が合同チームを発足させた。8つの営業部隊を作り、来年3月までの誘致成約計8件を目指す。マイスは開催地に大きな経済波及効果をもたらすため、激しい都市間競争が繰り広げられている。全国でも珍しいという業界の垣根を超えた「オール大阪」の取り組みで競争を制する構えだ。

マイスとは、企業の会議(Meeting)や、企業が従業員などを対象に行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体などが行う国際会議(Convention)、展示会やイベント(Exhibition/Event)のことをいい、名称は頭文字を組み合わせている。今月、万博へ参加を表明するなどしている国・地域の代表らが大阪市に集まり開いた「国際企画会議」もマイスの一つだ。

9企業・団体による「Team OSAKA MICE」は7月、大阪観光局が事務局となり、会議場や旅行、ホテルなどの運営会社で発足。7年は万博開催で大阪への国際的な注目が高まることから、マイス誘致の絶好の機会と捉えている。

チームは、マイスビジネスの人材育成やネットワークづくりを目的に、令和元年から勉強会を重ねてきた「大阪MICEアカデミー」が前身となっている。

チームには、参加企業の社員を混在させた3人ずつの営業部隊が8つあり、9月から東京首都圏のマイス主催者への営業活動を始めた。まだ契約を獲得した事例はないが、1部隊1件で計8件の成約を目指す。ひとまず来年3月までを活動期間とし、効果や課題の検証を踏まえて万博に向けた誘致活動を加速させる。

組織づくりなどで旗振り役を務めてきた大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪、大阪市北区)を運営する大阪国際会議場の福島伸一社長は「国内のマイス誘致競争は激化しているが、全国でも例がない競合する企業・団体の団結により戦略的な誘致活動ができる。主催者の要望に応じてチームで連携し、数千人以上の会議や宿泊にも対応可能だ」と話す。

マイス参加者は数千人以上の規模になることも珍しくなく、会議や展示会の開催に伴う宿泊や飲食、観光などによる地域への経済波及効果が大きいとされる。

観光庁によると、新型コロナウイルス禍前の平成28年に国内で開催された海外からの外国人参加者を含むマイスの経済波及効果は約1兆590億円、外国人参加者1人当たりの総消費額は平均33万7千円と推計される。マイス開催と関連の経済活動で約9万6千人の雇用創出効果があったとした。

りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は、未来社会や健康といった万博のテーマと関連の深いマイスが誘致できれば万博自体へのプラス効果も期待できるとした上で、「マイスの誘致は非常に競争が激しいのが実態であり、他地域との差別化やインセンティブ(開催の動機付け)の提供が欠かせない」と指摘する。

チームでは、大阪の観光地や食といった資源もアピールしながら誘致活動を展開する方針。万博への優先入場や関連イベントの参加権などのインセンティブの提示も構想しているという。(井上浩平)

会員限定記事会員サービス詳細