在日外国人も「ふるさと納税」しやすく ラグジュリーク、自治体と来月支援サイト

佐賀県有田町はふるさと納税の返礼品としてろくろに挑戦できる体験ツアーを用意する。試行ツアーに参加した在日外国人(ラグジュリーク提供)
佐賀県有田町はふるさと納税の返礼品としてろくろに挑戦できる体験ツアーを用意する。試行ツアーに参加した在日外国人(ラグジュリーク提供)

日本で働く在日外国人からのふるさと納税を受け入れたい―。そんな自治体と在日外国人を結ぶプロジェクトが動き出す。プロジェクトを手掛けるのは、国内体験型旅行の開発などを手掛けるラグジュリーク(東京都港区)で、10月に多言語対応の納税サイト「ふるさとジャパン」を開設し、ふるさと納税の拡大支援に乗り出す。

「ふるさとジャパン」には当初、佐賀県有田町、静岡県富士市、岩手県一関市、北海道俱知安(くっちゃん)町の4自治体が参加する。ラグジュリークとしては、システム拡張を進めて年内にさらに1~2自治体を加えたい考え。同サイトは日本語と英語でスタートする。来年からはその他の多くの言語に対応する〝マルチリンガル化〟へ移行する。

返礼品については、納税先の地元産品といった〝モノ〟ではなく、〝コト〟を中心にする。このため同社は、ふるさと納税を受け入れたい自治体向けに、在日外国人が好む地域産業の見学会や体験型旅行といった現地に出向くコンテンツを発掘し、それを返礼品として提案していく。

佐賀県有田町向けには、地元でつくられる名産の磁器「有田焼」の原料である陶石の採石場見学や、ろくろ成形体験ができる現地ツアーなどを開発した。

ラグジュリークの眞野ナオミ社長は「今回の取り組みは、日本をより深く知りたい在日外国人と、ふるさと納税をさらに増やしたい自治体を結び付けるもの。(認知度が高まれば)現地を訪れる旅行者の増加も期待できる」とメリットを説明する。

「ふるさとジャパン」の記者発表会に臨んだ(左から)福家朋裕・北海道倶知安市統括監、小長井義正・静岡県富士市長、眞野ナオミ・ラグジュリーク社長、松尾佳昭・佐賀県有田町長、石川隆明・岩手県一関市副市長=28日、東京都港区
「ふるさとジャパン」の記者発表会に臨んだ(左から)福家朋裕・北海道倶知安市統括監、小長井義正・静岡県富士市長、眞野ナオミ・ラグジュリーク社長、松尾佳昭・佐賀県有田町長、石川隆明・岩手県一関市副市長=28日、東京都港区

28日には「ふるさとジャパン」の発表会が東京都内で開かれ、登壇した有田町の松尾佳昭町長は「まずは在日外国人に来てもらい、現地の自然や文化に接してもらうとともに、今後のインバウンド戦略にもつなげていく」との考えを示した。

ふるさと納税は、平成20年にスタートした。当初は受け入れ額も全体で81億円程度だったが、27年から 控除が約2倍に拡充され、手続きも簡素化されたことで利用者が急激に増えた。各自治体の返礼品が充実してきたこともあり、令和3年度には受け入れ額が計8302億円と過去最高を更新している。受け入れ件数も4447万件に達した。

一方で、ふるさと納税に関する自治体の告知やサイトなどは日本語によるものしかなく、日本語に精通していない在日外国人にとって利用することが難しかった。外資系企業勤務や個人事業を展開する在日外国人は300万人弱といわれる。ラグジュリークによると、ふるさと納税制度を知っている在日外国人は比較的多いという。

新型コロナウイルス禍で地方の観光関連業は苦戦を強いられている。今回返礼品として開発された地元の体験型コンテンツは、外国人観光客を誘致する際の旅行商品にも活用できるとみられ、多くの自治体から注目を集めそうだ。(青山博美)

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