旅行業・観光業DX・IT化支援サービス
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訪日回復に備えセールス継続-帝国ホテルシンガポール営業所長 島田浩司氏

オンラインと対面のハイブリット型セールスを展開
需要回復は富裕層レジャーから

-オンラインセールスに関してはどのようにお考えですか

島田 オンラインセールスをスタートして7ヶ月ほど経ちましたが、メリット・デメリットが分かってきました。メリットはパソコンが1台あれば場所や時間を選ばずにどこの国の方とも話せる点です。シンガポールにいながらにしてこれまで出張して面会していたような、中東や香港、タイ、インドネシア、マレーシアなどのお客様とパソコンを通して面会できる点は非常に画期的であり、便利だと思います。

 一方でデメリットは新規セールスへの効果がかなり限定的である点です。人間関係がきちんと構築できているお客様とであれば、オンラインセールスは有効です。しかし、ウェットな人間関係の上にセールスが成り立つ東南アジアや中東の場合、対面でご挨拶をし、目を見て語り合い、できれば食事などで関係構築してからでないと、ビジネスに繋がりにくい風土があります。それをオンラインのみで成し遂げることは、簡単ではないと痛感しています。

 私が入社以来先輩社員のセールスから学んできたなかで、日頃めざしている理想のセールスのあり方は、特に外国人に関して言えることですが、万が一相手が仕事を変えて直接仕事上の関わりが無くなっても、親しい知人としてコンタクトを継続できるような深い信頼関係を構築する姿勢です。そうすることで仕事も楽しくなるし、自然と問い合わせも増えると考えています。

 そうした深い関係構築をめざすセールスを前提にすると、やはり現状はオンラインセールスよりも、対面セールスの方が効果は圧倒的に高いと感じています。依然としてオンラインでの面会を打診されるケースも多いですが、現状シンガポール営業所ではできる限り対面でのセールスをお願いしております。最近はシンガポールにおける新規感染の減少を背景に、会食に応じてくださるお客様も増えてきており、そのたびに改めて対面でのセールスの重要性、効果を再認識しています。

 もちろんニューノーマルの時代においてはオンラインセールスの傾向はより一般化していくと認識しております。このため、新規のお客様に対してオンラインセールスのみでどのように対面セールスのように深い信頼関係構築を実現するかは、今後考えなくてはいけない重要な課題であると感じています。

-旅行需要の回復が早いのはどういった方々だとお考えですか

Go Toキャンペーンの影響で需要が伸びているスイート。写真は帝国ホテル大阪 島田 どの地域もそうですが、ビジネスだけではなくレジャーでの海外渡航制限、特に隔離措置が解除されないと、旅行需要の本格的な回復は難しいと考えています。その前提の上で、ビジネスのお客様よりもレジャーのお客様、特に富裕層の方々が最初に動き出すのではと感じています。

 例えば日本/シンガポール間では、9月18日から短期出張者向けのビジネストラックが開始され、事前に行動計画を出せば隔離無しでの出張が可能になりました。しかし、事前手続きの煩雑さ、依然として出張中も公共の交通機関が使えないなど、かなり厳しい行動制限がかかっていること、そして何よりも各企業がニューノーマルのオンラインミーティングに適応してきているため、ビジネスのお客様はほとんど動いていない状況です。

 一方では先日、シンガポール/香港間でトラベルバブルの成立が発表され、近日中にレジャーの旅行が渡航後の隔離なしで可能になる、という報道がありました。すると、開始時期が未発表であるにもかかわらず、翌日から富裕層向けトラベルデスクにはカードメンバーから香港行きの問い合わせが殺到したそうです。したがって、日本においてもレジャーの海外渡航制限が解除され、隔離措置が免除されれば、インバウンドも徐々に動き出すのではと期待しています。

 富裕層向けのトラベルデスクとは定期的にコンタクトをとり、旅行ができない今の富裕層のお金の使い方などもヒアリングをして本社にレポートしています。都市封鎖が解除された後は「リベンジスペンディング(反動買い)」として車やワイン、時計、宝飾品などに沢山お金を使っているそうです。安全が担保されて隔離なしにレジャー旅行ができるようになれば、これまでの海外渡航自粛からの反動による旅行ブーム「リベンジトラベル」の時期も来るのではないかと期待しています。