海外教育旅行は、現地での体験重視型の内容にシフトしつつあるが、こうした流れの中で選択する宿泊形態の重要性も高まってきている。というのも、
宿泊形態が現地体験に大きく関わってくるからだ。従来であれば宿泊は、安全や清潔、快適が確保され生徒が安眠できる施設であればよかった。
しかし、濃密な現地体験が求められるようになるのと共に、宿泊をも現地体験のプログラムに取り込もうという傾向が強まり、
宿泊そのものを異文化体験として捉えようとの動きが出てきている。
こうした学校側の動きに合わせて、受入国側も日本からの教育旅行の受け入れに際して、自国の特色を反映したユニークな宿泊形態を提案するようになってきている。
この種の独自の宿泊プログラムの提案に最も積極的なのがマレーシアだ。マレーシアでは同国ならではの「カンポンステイ」の利用を積極的に呼びかけている。
「カンポンステイ」については、本号の「マレーシア政府観光局」のページでも詳しく説明されているが、カンポンとはマレー語で"田舎"を意味し、
農園が広がるマレーシアの田舎の村に滞在しながら現地の人々との交流を図るマレーシア版ホームステイである。カンポンステイの普及に力を入れる政府は、
受け入れレベルを高く維持するため受け入れ家庭の審査を厳格に行っており、各村ごとにホームステイ・コーディネーターがおり、受け入れの手助けをするシステムもある。
マレーシア全土にはこうした村が200〜300カ所もある幅の広さもカンポンステイの強みとなっている。
お隣のシンガポールも一般家庭へのホームステイの促進に取り組んでいる。国土の狭いシンガポールでは、国民の85%が公団住宅に暮らす住宅事情から、
ホームステイ先を探すのも簡単ではなく、ホームステイ斡旋会社がないのもネックとなっていた。しかし03年にホームステイの斡旋企業が登場し状況は改善。
間取りに余裕のある一戸建て住宅やメゾネット住宅で学生を受け入れられる家庭を中心に約800世帯がAssociation of Management Corporations in Singapore(AMCIS)に登録。
すでに日本人学生の受け入れ実績もある。全学校単位の受け入れは難しいが、数十名単位の受入なら十分に斡旋は可能という。
また教育立国のシンガポールでは教育機関に付属する寄宿舎などの宿泊施設も充実している。寄宿舎は大人数の受け入が可能で、学生向けの設備が整っているのがメリット。
短期間の宿泊なら300名程度の受入が可能な学校もある。
タイではタイ国政府観光庁が93年からホームステイプログラムを始めており、各地域の文化委員会が受け入れの仲介をしている。タイのホームステイの特色は、
単なる農村体験アドではなく、考古学遺跡の地でのホームステイ。人々の暮らしが歴史と身近に交わっている実態を体験できるのは、タイのホームステイならでは。
韓国でも農村体験の宿泊プログラムが用意されている。農家に宿泊して農作業を手伝ったり、韓国の農村文化を体験したりできる。
農村体験を楽しむ"緑農村体験町"といったプログラムが韓国人の旅行素材として人気を博すことによって、海外からの旅行者の受け入れ態勢も整ってきた。
農村体験の西洋版がニュージーランドやオーストラリアの教育旅行プログラムとして人気のファームステイだ。農耕を主とするアジアの農村とは異なり、
牧畜などを主な仕事とするニュージーランドやオーストラリアの牧場は、ケタ違いの広さとが日本では絶対にできないファームステイ体験を提供する。
隣の農場まで何キロも離れているような大農場は、一つの社会の縮小版。全てが農場内で完結するような独立した環境と広大なスペースの中で、
スケールの大きな体験が可能なのが魅力だ。ニュージーランドやオーストラリアは基本的な生活レベルが高いため、農場でも宿泊施設の清潔さや快適性は高く、
生徒も安心して滞在できる。
カナダではスモールタウンステイを積極的に受け入れる町が数多く認定されている。人口5000人から大きくても10万人規模の小都市の中でも、
海外からの旅行者受け入れに積極的、友好的で、なおかつ学習プログラムなどの受け入れ態勢も整っている町がスモールタウンと呼ばれる。
スモールタウンステイの町としてカナダ国内全域で100以上の都市が受け入れ実績がある。スモールタウンの受け入れの特徴は、
地域ぐるみで学校グループを受け入れること。同じ期間に複数の学校を受け入れることはせず、1校に限定するため地域により密着した交流が可能になっている。
ホームステイ、現地学校との交流、地域コミュニティーのイベントへの参加など、体験を総合的に演出できる点も他の滞在スタイルとは異なる点だ。
オーソドックスなホテル滞在であっても、ユニークな演出を実現できるケースもある。例えばハワイの海外教育旅行の宿泊先は通常のホテルとなるが、
世界でも有数の観光地であるハワイのホテルである特長を活かして、世界トップクラスのサービスやホスピタリティーについて体験しながら学ぶこともできる。
ホテルの協力により、西洋式テーブルマナーや基本的な対人エチケットを学んだりすることも可能だ。またホテルによってはサービスやホスピタリティーについての説明を行ったり、
日頃は見ることができないホテルの舞台裏の見学要望に応じてくれたりするケースもある。
逆にユニークな滞在スタイルとしては、オーランドやサンディエゴの海洋型テーマパーク「シーワールド」では、閉園後の施設を使った教育旅行プログラムを用意している。
シーワールドに1泊し、夜の海洋生物の生態観察なども織り交ぜたユニークな時間を体験できる。滞在中の1泊に組み込んで宿泊に変化をつける素材としても利用できる。
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