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MICEマーケットトレンド:クルーズのMICE手配-外航客船3社

  • 2011年7月26日(火)

船ごとの特徴をいかし、ミーティングやインセンティブに活用
限られた空間で団体意識強化、主催者にも利便性提供

レジェンド・オブ・ザ・シーズは2010年から年間を通して日本に寄港している

 MICEは現地のイベントのみならず、旅行先そのものの選択も重要な要素のひとつだ。一般的な人気のデスティネーションから、逆に珍しい旅行先、参加者のアクセスのしやすさなど、MICEの客層や目的に応じて選択基準はさまざまであるが、クルーズもまた特徴的なMICEを実施できる手段の一つとして多く利用されてきた。近年では、世界遺産や歴史的建造物、博物館のようなユニークベニューで他社との差別化をはかる傾向が強いが、そうした効果を期待する旅行会社も増えているという。今回はクルーズに焦点を当て、客船会社各社に傾向を聞いた。

インセンティブの需要がメイン

シンガポール発着のスーパースター・ヴァーゴ

 クルーズでのMICEの実施は、インセンティブがメインだ。世界最大の22万トンの「アリュール・オブ・シーズ」をはじめ22隻の客船を有するロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)の場合、同社の日本総代理店を務めるミキ・ツーリスト・クルーズセンター営業係長の糸川雄介氏によると、ネットワークビジネスの企業による利用が比較的多いという。また、研修旅行も多く、ミーティングでも活用されている。2011年の日本発のMICE実施件数は前年比約20%減。3月に発生した東日本大震災では、4月から6月に入っていたグループは関西圏ベースが多かったこともあり、特に影響はなかったという。

 アジアを中心にカジュアルなクルーズを運航するスタークルーズでも、主にネットワークビジネス系などのセミナー兼報奨旅行として利用されており、ディーラーや各販売店向けの報奨旅行として、感動を最大限に引き出せる客船は根強い人気があるという。日本発のMICEの実施件数は、2010年は22団体だったが、2011年は震災で取り消されたものが多く、現在のところ11団体に減少。実施団体は震災の影響が少ない中部や関西、西日本に集中したという。

 ラグジュアリークラスのシルバーシー・クルーズでも、インセンティブが主で、地中海やアジアでのクルーズが人気だ。同社日本地区総販売代理店を務めるインターナショナル・クルーズ・マーケティング(ICM)代表取締役の中川節子氏によると、同社ではクルーズをチャーターする団体をすべてMICEとして扱っており、日本発のMICEは前年に比べて増加。海外市場では全船チャーターが主だが、日本市場ではまだ少なく、少人数でVIPの接待を目的とした団体の予約が多数入っているという。

各船の規模や特性を活かした提案を

シルバー・スピリットは7月に日本企業がチャーターしたばかり

 同じインセンティブやミーティングの目的でも、各社の船の特性により、団体の規模や客層はさまざまだ。RCIの場合は20名から150名程度の団体がメインで、それに対して保有客船が定員1800人以上の大型であるため、規模の問題から全船チャーターは難しいという。日本発MICEのうち7割が船内泊が3泊から5泊の日程で、予約は1年前から6ヶ月程度前に入ってくる傾向のようだ。

 スタークルーズの場合は、少人数から300名規模までさまざまだ。滞在日数はアジア発着ということもあり、クルーズ2泊、移動含めて4泊6日に収まる短期間のものが主流で、1年前からの予約がほとんどだという。

 シルバーシーでは日数は7泊前後で、全船チャーターの場合は、通常の配船スケジュールが決まる前に、主催者がチャーターを希望する場所や時期について調整する必要があるため、2、3年前から打ち合わせを開始する。同社は乗客定員が300名弱から400名弱の小型客船が中心で、最大のシルバー・スピリットでも540名だ。何百名、何千名というグループを受け入れるのは難しい、との考えから、ターゲットとしてVIPのゲストを迎えるインセンティブに注力。中川氏は「シルバーシーはVIPや富裕層に特化している。VIP用のクルーズはシルバーシー、という風に使い分けていただければ」とアピールする。

限られた空間で主催者に高い利便性

プール、フィットネスセンターのほか、カジノやシアターでのショーなど、船内でさまざまな楽しみ方ができる。写真はRCIのショー

 クルーズをMICEで使う際、メリットとなる点は何か。糸川氏は、「陸で実施するMICEとは異なり、すべて船内で完結するため、主催者側の手間がかからない」点をあげる。

 また、船内でのショーやイベントなどが豊富にあることから、主催者側がアトラクションを用意しなくても参加者は十分楽しむことができるという。音響施設を備えたシアターや、ダイニング等の施設があり、スタークルーズも、「地上でできる事が高いレベルで洋上でも可能である」とクルーズでMICEを実施するメリットを語る。

 また、糸川氏はMICEでクルーズを利用するメリットとして、「1つの決められた環境、1つの屋根の下でともに過ごすことで、団体意識が高まる」ことも指摘。自然と意識づけがされるため、研修やチームビルディングにも最適だという。

 ただし、陸のホテルやコンベンションセンターとは異なり、クルーズは機材の持込み制限やゲストとして呼ぶ有名人の拘束時間が長くなるなど、制約もある。糸川氏によると、ブロックチャーターの場合レストランの貸切が難しいため、食事中のマイクの使用といった要望に対応しきれない場合もあるため、メリットとともに制約があることも検討段階で十分理解してもらうことが重要だという。

オールインクルーシブもメリットの1つ

 また、中川氏は、シルバーシーが宿泊費だけなく飲食費、サービス、クルーズの移動費用などがすべて金額に含まれるオールインクルーシブであるため、船内で特別な費用が発生しないメリットを強調。さらに、乗客定員を抑えているため、乗客総数に対するクルーの数が多く、例えばシルバー・ウィスパーやシルバー・シャドーは乗客1.3人客に対し1人の乗務員がサービスする。宿泊から飲食、船内イベントなど乗船中は常に質の高いサービスが提供できることも強みだとした。

販売は旅行会社との協力が不可欠

クルーズdeMICEではスーパースター・ヴァーゴのプランを紹介。3つの会議施設を持つ

 クルーズでのMICE販売は旅行会社を経由する場合がほとんどだ。RCIでは旅行会社との同行セールスや実施例を含めたマニュアル作成を実施。大型団体に直接提案することもまれにあるが、旅行会社の協力は不可欠とした。

 スタークルーズでは旅行会社を窓口に、「主催者側の要望を最大限かつ着実に具現化していくことが大切」との考えのもと、主催者からインセンティブの主旨や概要、コンセプトなどを綿密にヒアリング。企業名入りのロゴグッズを制作するなど、乗船前から参加者のモチベーションをあげるための取り組みも実施し、窓口となる旅行会社に継続して受注が入るようにサポートしているという。

 また、ICSコンベンションデザインとともに2010年7月から「クルーズdeMICE」というブランドも立ち上げており、チャーターやブロックチャーターをメインに、コンセプトの企画から船上でのMICE、アフターコンベンションまで、総合的にサポートしている。同ブランドを活用し、有名歌手のコンサートや企業のインセンティブも実施した。

 シルバーシーでも旅行会社とオーガナイザー双方と綿密にコミュニケーションを取り、プランニングから実施まで一貫して同じ担当者が担当し、インセンティブ実施の際も船に同乗することで現地でのフォローもかかさない。

 こうした取り組みをする一方で、旅行会社の経験不足、知識不足も課題としてあがる。糸川氏は「クルーズを売ってくれるのは、実際に乗船してクルーズのファンになってくれた旅行会社で営業担当がほとんど」と指摘。クルーズでMICEを実施する場合は、オーガナイザー側からの要望か、ファンになった担当者の提案、といった2つのパターンがほとんどだという。糸川氏は「一度経験された方がある意味ハマっていただくことで、部署が変わっても10年近くクルーズをセールスしていただいている方々もいる」とし、FAMツアーなどの機会をうまく利用してクルーズを体験するとともに、クルーズの知識を増やすため「セミナーや勉強会の機会をもっていただきたい」と述べた。

取材:本誌 栗本奈央子

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