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MICEマーケットトレンド:主催者、投資効果求める傾向進む-震災で新動向も

  • 2011年5月23日(月)
MICE実施の際は具体的な効果を示すことが重要だ

 リーマンショックや東日本大震災の影響により、MICE市場では厳しい状況が続く。そうしたなか、MICE専門家で構成された国際非営利団体、MPI(Meeting Professionals International)の日本支部であるMPI Japan Chapter会長の浅井新介氏は、単なる慰安旅行や娯楽とは一線を画す戦略的投資としてのMICEの提案が、今後のMICE受注で求められていると強調する。MICEの実施に対する具体的な効果を示すことが、企業の「MICE自粛」に対する手段となりそうだ。旅行会社は旅行の枠を超えたMICEにどう取り組むべきか。浅井氏に市場の動向と旅行会社の課題について聞いた。

リーマンショックで主催者の意識が変化 投資効果を重視

 浅井氏はリーマンショックにより、MICE市場に大きな変化が現れたと指摘する。同氏によると、主催者側がコストに関してよりシビアになり、MICEを実施することでどのような成果が上がるのかという「投資効果(ROI=Return On Investment)を強く求めるようになってきた」という。MICEの実施には、社員のモチベーション向上、売り上げの増加、顧客満足の向上といった目的があるが、それがどれくらい達成されたのか、主催企業のトップが担当者に対し、説明責任を課すようになってきている。

 MICEは企業がそれぞれ実施しており、各企業でMICEの捉え方が異なる場合もあることから、マーケットの規模や傾向を定量的に説明するデータが不足しているのが現状だ。しかし、浅井氏によると2010年7月にカナダのバンクーバーで開催されたMPIの世界大会、WEC(World Education Congress)においてもテーマの1つとしてROIがあがるなど、欧米でもROIを重視する流れが現れているという。

 浅井氏によると、以前はパーティやオプション旅行などの娯楽的な行動が、MICEにおける関心の中心だった。このように開催当日の行動を重視する考えを「アクティビティ・オリエンティッド」という。しかし、リーマンショック後はアクティビティにかける予算が減少し、実施後に参加者がどう変化したかという結果に重点を置く「リザルト・オリエンティッド」へと変化しつつある。

 また、浅井氏は各業界でさまざまな変化が起きていることから、「旅行会社は取引先の業界がどう動いていくかを予想していかなければならない」と、取引先を研究する必要性を述べた。特に医薬品業界では効率が要求され、2年ほど前からはミーティングの運営をひとつの部署で一括管理するようになりつつあるという。こうした流れに対し、旅行会社のなかでも担当する業界ごとにチームを作り、情報収集やブレーンストーミングをするといった動きが生まれてきている。

 一方、海外で実施されるMICEについては、そのほとんどがI(インセンティブツアー)であることは変わらない。デスティネーションの人気傾向にも大きな変化はないが、浅井氏によると実施内容については工夫が凝らされるようになってきた。パリやハワイといった定番の開催地については、ユニークな提案を生み出すために、社内でコンテンツを研究する会議を実施し、現地視察を行なうといった対策を実施している旅行会社もあるという。

学習効果など、事後の効果に重点 課題解決のための「提案力」決め手に

MPI Japan会長の浅井新介氏

 浅井氏によると、一般的にMICEでは、コストの95%がホテルや交通費、飲食費で占められている。しかし、ROIを向上させるためにはこのコストバランスを見直し、よりMICEの本質に叶った部分に予算の割合を増やすことが必要だ。浅井氏は「会議やセミナーの場合、帰社後に他の社員と知識を共有できるよう、内容をしっかりと理解できるようにすることが重要」と説く。旅行会社に対しては、「効果を出すための教育プログラムの充実などに力を注ぐべき」と提案した。

 さらに、「今後はアクティビティ・オリエンティッドと同時に、リザルト・オリエンティッドとしてビジネスの発想につながるような学習的側面の両面が要求されるようになる」と指摘。たとえばインセンティブツアー先として人気のハワイには、おなじみのフラダンスの鑑賞だけではなく、農業や水事業といったビジネス視察の要素も組み込む。浅井氏は3月に韓国の済州で開催された国際会議に出席した際、伝統文化の体験に加え、韓国の次世代電力網であるスマートグリッド事業の現場を視察したという事例を紹介。「人間には何かを学びたいという欲求がある。ビジネスや教養に役立つような頭の中のお土産を提供する視点も大切」と示唆した。

 また、以前は付き合い慣れた旅行会社に継続して発注する傾向があったが、リーマンショック以降は数社による入札が当たり前になってきていることから、今後旅行会社には主催者の課題や悩みを解決し、ROIを明確に示すための「提案力」が必要だという。国内のMICEには広告代理店が関わる場合も多いが、海外では旅行会社に要求される役割が大きい。こうしたなか、旅行会社に重要な点として、浅井氏はデスティネーション、航空会社、ベニューを提案する際、主催者とMICE参加者の特性や課題を踏まえた上で「なぜそこを選ぶのかという理由から明確に伝えていくことが大切」とした。

震災によるコスト削減で縮小傾向も 新ビジネス機会の可能性あり

 震災の影響で、震災直後に予定されていたMICEの実施はキャンセルになったが、延期の処置がとられたMICEも多い。大手旅行会社からの情報によると、7月頃からは回復傾向にあるという。浅井氏は今後の流れについて、急激に実施数は減らないが、人数の規模縮小や、開催地としてより近いデスティネーションが選ばれる可能性はあると分析する。

 また、震災の影響で日本での展示会を海外で実施しようという動きも現れてきている。浅井氏によると、日本社会の少子高齢化が進むなか、メーカー側には海外に販路を求めようとする意識が芽生えつつあるという。浅井氏は、「海外での展示会が増えたとしても主催者と現地ベニューの直接交渉となる」ため、旅行会社が関わることは難しいとする。しかし「日本の旅行会社はホスピタリティとサービスが素晴らしく、細やかな対応能力があって優秀」であることから、中国などの開催地で現地旅行会社に人材教育を実施するなど「日本の旅行会社が海外で活躍する方法の一つになるのでは」とし、旅行会社にとって新たなビジネスに参入するチャンスが生まれる可能性を示唆した。

取材:本誌 栗本奈央子

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