• マーケットトレンド
  • ケーススタディ
  • スペシャリスト
  • べニュー
  • セミナーレポート
  • コラム
  • ディスティネーション

MICEケーススタディ:イベント企画会社の企画・運営-ホットスケープ

  • 2011年7月5日(火)

「お客様の視点」で顧客との信頼関係を構築
目的を明確化し、記憶に残るイベントの実施が継続の鍵

 国内外で表彰式や入社式などの企業イベントを企画・運営するホットスケープは、会場の手配や映像制作、イベントの台本作りなどをすべて自社内で手掛け、顧客にワンストップのサービスを提供している。代表取締役の前野伸幸氏によると、一度取引のあった顧客はほとんどリピーターになるという。同社の取り組みから、旅行会社がMICEを継続的に取り扱うためのヒントを探っていく。

ワンストップサービスの提供で早く効率的に対応 他社の事例研究も

 ホットスケープで取り扱うイベントはインセンティブの表彰式が多く、1991年の創業時には約8割、現在でも約3割を占める。主な顧客は保険業界や自動車業界、メディア業界、ネットワークビジネスなどの企業だ。当初から「近い距離で企画することが成功の近道」と考え、主催企業との直接取引を重視していたという。

 会場選びからコンテンツ制作まで自社で担うので対応が早く、主催者から問い合わせがあった2日後には、具体例を盛り込んだオリジナルの企画書を持参する。迅速に対応し、たたき台を用意して打ち合わせに臨むことで、主催者に「他社とは違うという印象を与えることができ、この会社にまかせて安心という信頼につながる」という。また、前野氏自身、独立前にホールの貸し出し業や音響技術、舞台演出の経験があるため、会場の見極め方に精通しているほか、多くの企業のイベント実施例を目にしてきたことも提案の際に役立っているという。

 旅行会社とは時には競合するものの、相互に得意分野で協力しあう横並びの関係を保っている。サプライヤーとのパイプが強い旅行会社にホテルやベニューの手配を発注することもあれば、旅行会社から企画書作成の依頼を受けることもある。また、ピーアールでは、広告代理店と協働することある。自社完結に捉われず、顧客のための最善を優先しており、旅行会社に対しても「期待値を上回るビジネスパートナーをどれだけ持てるかが大事」との考えを示した。

 前野氏は、国内外の他社のショーやパーティ、展示会に参加するなど、事例研究にも熱心だ。旅行会社が同業他社の事例を目の当たりにする機会は少ないが、「普段の生活でも無駄な経験は何もない」と語り、「映画のワンシーンを演出に取り入れたこともある」と、イベントのアイディアに結びつけた例を示した。

主催者と参加者双方の満足が成功基準「お客様の視点」がポイントに

 前野氏は同社での成功事例として、7年ほど前に韓国で実施した、化粧品関連のネットワークビジネス企業による表彰式を挙げた。主催企業の韓国進出にあたり、キックオフを兼ねたイベントだ。参加者の規模は日本人が約2000人、韓国人が約1000人。参加者のモチベーションを高めるインセンティブだけでなく、企業の製品を韓国の参加者に紹介し、市場を拡大することも目的だったため、製品を説明する場も設け、製品を理解してもらえるようビデオを制作した。

 このイベントの課題は、「どうやって韓国人参加者を集めるか」。前野氏は「ただ開催するだけでは来てくれない。いかに『交流』できるイベントを創り上げるかがポイントだった」という。ちょうど韓国側から顧客企業に、プロモーションしたいアーティストがいるという提案があったことから、日本人アーティスト2グループと韓国のアーティストが交流するショーを企画。その結果、韓国側も目標参加人数を達成した。

 さらに、司会は日韓両国から立てて2ヶ国語で進行し、イベント自体もなるべく言葉が分からなくても伝わるように工夫した。前野氏は「主催企業と同時に参加者にも満足してもらうこと」が成功の定義とし、「お客様の気持ちになること」が重要だとする。いつもイベント直前に「お客様の視点で、お客様の気持ちを想像しながら、五感を張り巡らせて自分の足で会場全体を歩き、駅からの道のり、看板の高さや角度、入場して最初に目に入るものや聞こえるものはベストかどうかをチェック。顧客の視点を常に意識するよう心がけているという。

テーマを決め、記憶に残る演出を  華美なだけでなく目的を明確に

 また、広告関連企業による表彰式と事業方針発表を兼ねたイベントの事例も挙げた。国内で年に2回から4回開催されるイベントで、500人以上の規模だ。主催企業とは約20年前、まだスライドで画像を投影していた時代に、同社がいち早くプロジェクターを導入してデジタル化したことがきっかけで受注し、以来取引が続いているという。

 この表彰式では営業マンだけでなく、デザイナーや管理職も表彰される。表彰台の上では、あらかじめ撮影した家族からの喜びのビデオメッセージを流すこともある。前野氏は「大勢の前で表彰するのは、その人をめざしてがんばろうというモチベーションを招待者に与えるため」とし、「上がりたいと思わせるようなステージの演出が重要」という。ただし、「参加者数の確保や華美な演出だけをめざしても良い企画は生まれない」とし、イベントが成功するためのポイントとして「目的や目標の明確化」を指摘した。

 そのため、イベントの実施後に参加者がどう変化することが成功なのか、事前に主催企業とビジョンを確かめあう。目的次第では、「研修旅行では綿密なプログラムが組まれる一方、インセンティブ旅行では参加者の希望によりほとんど自由行動にする企業も増えている」といった差が生まれてくる。

 演出は、テーマを提案することも大切だ。約5年前、ラスベガスで実施したネットワークビジネス企業の300人規模の表彰式では、「X(エックス)」というテーマを掲げた。社内の各グループ同士での交流をめざして「クロスする」という意味を込めており、ロゴやチケットに「X」の文字を入れたほか、ステージもX型に設営。「テーマを決めることで、会場全体や細部の装飾も一貫してデザインしやすくなる」と前野氏。テーマカラーだけでも持つと、参加者の記憶に残りやすいという。

 このように、イベントが終わっても参加者のモチベーションが続くために、「大切なのは記憶に残すこと」という。また、「会場全体から見ると、盛り上がっているのは受賞者とその周囲だけの場合もある」と指摘し、「感動は共有することで印象に残る」と強調。表彰式でビデオメッセージを流すのも、受賞者の苦労やそれを支えた家族のエピソードを会場で共有するためだという。

 こうした演出のこだわりの結果、顧客の期待値を上回ることができると、顧客との信頼関係が生まれる。前野氏は「顧客の事業を掘り下げて知っているからこそ、企画を提案でき、長期の受注につながる」とし、「継続発注が、何より嬉しい成功の証」という。そのためには顧客企業の担当者だけでなく、その周囲の社員も巻き込んで話を聞くことや、迅速なレスポンス、正確性を重要している。こうした顧客企業との信頼の積み重ねが、リピーター獲得の決め手になっているという。

取材:本誌 栗本奈央子

こんにちは、ゲストさん

ログイン

PHOTO NEWS