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MICEコラム:「何を知っているかではなく誰を知っているか」

  • 2011年7月5日(火)

 旅行会社がMICEの取扱い拡大に積極的に取り組むなか、数々の課題が生じてきている。MICEを受注するために、旅行会社に求められる視点、取り組むべき対策は何か。マーケットトレンドにも登場していただいたMPI Japan Chapter会長の浅井新介氏によるコラムを3回にわたり掲載する。

 多くのMICEがリピートするという特性があります。少子高齢化が進み、経済も良くても横ばいの未来で、新規顧客を獲得するのは困難な時代です。まずMICEの一番の特性である「リピートする」に焦点を当て、継続してそのビジネスを獲得することが先決です。

 確かにコストのプレッシャーは存在するし、最近では多くの企業のポリシーが変わり、最低4社から6社の競争入札などが当たり前になってきました。それだからこそ、企業がマーケティング手法の一つとして計画・実施するMICEのゴールや目標を深く理解し、提案をし、周到な準備をし、運営をし、開催後のフォローをすることが、より継続した獲得に結びつくことは言うまでもありません。そして旅行会社と顧客という関係や構図ではなく、成果があがるMICEを顧客と同じマインドで成功をめざすという考え方が必要です。

 また、強調しておきたいことは、旅行会社の強みである旅行の部分を完璧にこなしてこそ、言い換えれば旅行会社の基本職務である3点セットの「あご・足・枕」は最低完璧にこなす必要があります。多くの企業の担当者(ミーティング・プランナー、イベント・プランナー)と議論をすると、実は多くの旅行会社がMICEの仕事を失った理由として、「ホテルのチェック・インに6時間もかかった」、「グループの荷物を積み残した」、「コンファームしていた宴会場が取れていなかった」、「打ち合わせと違うメニューがパーティで提供された」など、旅行会社の基本職務が疎かになっていたことに起因することが多いのです。

 このようなミスは企業の場合、次年度よりビディング(競合入札)にも入れてもらえないという結果になりますので、旅行会社としての得意分野は完璧にこなす必要があります。

 国内のMICEはというと、小さなものはさておき、あご・足・枕以外のMICEの領域は、大型のものであれば電通などの広告代理店やイベント会社、PCO(Professional Congress Organizer)などの会議運営会社、演出、音響、照明などもそれぞれの専門会社が関わるケースが多いと思います。反対に海外でのMICEは、旅行会社が得意な足の部分での航空座席の確保がからむせいか、最初に旅行会社に全てが依頼されるというケースが一般的なようです。これは依然として旅行会社の強みなので自社で可能な限り挑戦し、MICEの事業領域の拡大をはかる必要があります。

 世の中にはMICEのサプライヤーは天文学的に存在し、ベニュー(会場)の数も無限に存在します。換言すれば、それらのリソースを完全に掌握することはおろか、全てのデスティネーションの全てのリソースにインデックスをつけ、データ化して直ぐに引き出せるように整理しておくことなど不可能なのです。これは個単位で営業をしているセールスパーソンは言うにも及ばず、大手の旅行会社でも不可能なことなのです。

 例えば身近な例として、インセンティブ先として古くからトップ・デスティネーションとして知られているハワイにしても、ファイブ・スターからエコノミーまで色々なタイプのホテルがあります。また、会場としても何千人の大型なコンベンションが開催できるハワイ・コンベンション・センターから、500人規模のパーティが可能なカタマラン・ヨット、それほど大きくないグループの貸し切りが可能なハードロック・カフェなどがあります。顧客からチーム・ビルディングをやったり、イオラニ・パレスでウェルカム・レセプションなどのユニーク・ベニューで開催したい、などのリクエストがあれば、ハワイだけでも天文学的な情報や運営スキルが存在することになります。

 また、日本の海外旅行の歴史的な背景から、現地法人や現地の事務所は過去には団体、個人ともにレジャー需要を主に対応していたので、MICEの運営能力やMICE専門のベニューとのネットワークが弱い、といった弱みも存在するようです。

 MICE顧客が予見したMICEを実現する近道と、リピートの最大の思想は「何を知っているかではなく誰を知っているか?」だと考えます。

 それはまず提案書、企画書を提出する前に、顧客が出したい成果、つまりはゴールや目標を徹底的に理解することが必要です。シンプルに言えば「何がしたいのか?」をしっかりプロファイリングすることです。大手の旅行社の場合には過去に多くのMICEを世界中で計画、実施された経験則がありますが、自社中心の思い込みや考え方は捨てて、可能な限り顧客の実現したいMICEを解剖することが肝要です。

 「誰を知っているかが大事」を先述したハワイに戻り、順を追って解説してみましょう。「到着した日には、ホテルのボール・ルームではなく、ユニークなアウトドアのベニューで、ウェルカム・パーティをやりたい。社員のコミュニケーションを高めるためにチーム・ビルディングもしたいね。何かハワイと思わせるところで。翌日の朝食では、社員のモチベーションを高めるために、誰かハワイの著名人でモチベーションを高める講演者を呼びたいね。3日目、4日目は自由行動で良いのだけれど、現地で当社のCSR活動のメニューをしたい、最後のフェアウェルはハワイの歴史的でインパクトのある会場で表彰イベントも入れて、ハワイで一番のアーティストも呼んでやりたいね。これもユニークな演出でね」このような依頼を受けたとしたら皆さんはどうしますか?社内のリソースを最大限に活用してプロポーザルを作成するのは勿論ですが、それぞれ何に顧客が一番のプライオリティをおいているのか、まず優先順位を考えることが大切です。

 ミーティング・プランナーやイベント・プランナーは、MICE顧客がハイライトとしているイベント毎に分解し、それぞれの信頼できる「人」をキャスティングします。コストを勿論考えなければなりませんが、特に競合ともなれば目玉が必要です。

 ユニークなベニューでのイベントの期待を充たしてくれる人の一例を挙げれば、ハワイで行政にも顔が利き、多くのイノベーティブなイベントの実績のあるMr. Philip Richardson、Current Affairs(http://www.current-affairs.net/)の社長をしています。モチベーションを高めるスピーカーと言えば Speaker’s Association of Hawaii’ (http://www.hawaiispeakers.org/ )で、こちらはHVCBのアジア地区本部長の西茂さんに相談するといったように、こちらが期待をしている仕事以上のことを提案、提供してくれる人達がいて、MICE顧客が予見したMICEを実現してくれるパートナーとして良い仕事をしてくれます。

 またMPI会員の企業のMICEの担当者からは、「このようなデスティネーションでコーポレート・ミーティングを開催する計画なのだけれど、誰か知り合いはいますか?」との問い合わせが多く来ます。「知り合いがいないです。」と答えると「それでは推薦できるDMC(デスティネーション・マネージメント・カンパニー)はいますか?」となります。

 全くコンタクトのないデスティネーションでもインターネットの時代となり、良い仕事をし、顧客にも評判の高いDMCを捜索するのも簡単な時代となりました。私の変化球として、ケース・バイ・ケースで現地のピーアール会社とコンタクトを持つと良い仕事ができることもあります。彼らは雑誌やテレビの取材のアシストも仕事としていますので、トレンドには敏感で、良いベニューを知り尽くしていることが多いからです。

 MICEの領域は広く深いですから、全てのデスティネーションを把握するというのは不可能です。まず手始めに自分の強いデスティネーションを創る。そしてそこで皆さんの期待以上のプロダクツやサービスを提供してくれる「誰Who」とネットワーキングをして、アライアンスを組むことは大きな強みとなります。

 

筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International)Chapter 浅井新介 会長

プロフィール

MICEビジネスのプランナー/サプライヤーとして30年に渡る経験を持つ。ウェスティン・ホテルズ極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任。スターウッドホテルズ日本の依頼により、再建下の宮崎のシーガイアにセールス・マーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得と受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。財団法人日本ホテル教育センターMICE塾塾長。

 

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