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MICEマーケットトレンド:海外からのコンベンション誘致の課題

  • 2011年6月28日(火)

コンベンション誘致は施設整備が課題
開催地とオーガナイザーの「出会い」の場の創出も

(左から)一般社団法人MICE総研統括部長兼上席研究員の奥山隆哉氏、理事兼主席研究員の武内紀子氏

 実は日本国内でのMICE市場に関するデータは、明確な共通基準がなく収集が困難なため、取りまとめられていないのが現状だ。ただし、海外からのコンベンション誘致に限っては、各地にあるコンベンションビューローなどがもつデータなどから比較的開催件数が把握しやすいため、日本政府観光局(JNTO)が取りまとめたデータなどによりその推移や動向をうかがうことができる。今回は、国内・国際会議や展示・イベントの企画運営を扱うコングレが2月に設立した「一般社団法人MICE総研」に、コンベンションを中心とする国内MICEの現状について話を聞いた。

震災直後は中止や延期が続出も徐々に再開
誘致は日本の先進分野に高い可能性あり

 MICE総研統括部長で上席研究員の奥山隆哉氏によると、3月11日の東日本大震災発生後、日本で開催予定だったコンベンションの中止が相次いでいるという。同氏によると、4月は学会が多く開催される時期だが、各地で中止や延期が相次いでおり、関西方面に場所を移しての延期開催となるケースもあったという。観光庁の4月27日現在のデータによると、岩手、宮城、福島、茨城の被災4県で約10件がキャンセルとなり、被災地以外でも約50件のキャンセルが発生している。

 しかし、5月以降は予定通りに開催する会議もあり、大型学会も開催されている。MICE総研理事で主席研究員の武内紀子氏は事例として、5月に3000人規模で開催された第31回日本脳神経外科コングレスをあげた。岩手医科大学の教授が会長を務めたコングレスだが、同団体のウェブサイトによると、各学会が開催を軒並み中止していることが「アカデミズムあるいは医学・医療の危機であり、本学会はこれを食い止める役割もある」ことから、開催を決定したという。

 武内氏によると、日本への誘致の可能性が高いコンベンションは、先端技術や医学といった、日本が先進していると評価されている分野だ。ある分野で世界的に第一人者と認められる人がいたり、研究が進んでいたり、牽引する企業があると、その国で開催されるケースが多い。これまで日本は、アジアで国際会議の誘致を競った場合、圧倒的に強かった。しかし、国際会議自体は欧州などでの開催が多く、世界全体のレベルと比べると、アジア地域のMICEはまだまだ発展途上だという。近年、MICE業界のアジアへの関心は年々高まっており「アジアへの誘致に取り組めば、成功する可能性はある」という。


受入施設の整備が課題に
国際間競争への準備を

統括部長兼上席研究員の奥山隆哉氏

 ただし、日本には遅れている部分もある。奥山氏は課題として、ニーズにあった受け入れ施設が不足している点を指摘する。日本でコンベンション産業が注目され始めた1980年代から90年代にかけては知識の交流がメインとなる会議が多く開催される傾向があり、会議場があればよかった。また、コンベンション施設自体も箱物行政の時代で、何の目的でどんなMICEを招致するかといった明確なマーケティング戦略がないまま造られており、築後20年から30年経って大幅改修や建て替えなどの時期に来ている所では、コンセプトの見直しの議論もしなければいけないという。

 しかし、現在では学術会議や国際会議といった大規模なコンベンションを誘致する場合、会議場と合わせて展示場、ホテルの3点セットが必要だ。会議であれ展示会であれ、ビジネスに直結しないと企業は参加、出展しない。奥山氏が「企業の傾向として、参加することにより商談につながる、マーケットが拡大できる、といったメリットがないと参加しない」と言うように、実利を重視する流れが強い。会議が主体の場合でも、展示は付属ではあるが企業の重要な商談やプロモーションの場となっているため、展示スペースの確保が求められる。

 武内氏も「会議自体の収入は参加者が支払う参加費。それでは収支が厳しいので、あとは出展料、寄付、ネーミングライツなどの協賛金で賄っている。つまり、大型会議になると展示なくしては成り立たない」と指摘する。現状では、展示も可能な施設となると、必然的に受け入れられる会場は一部の大都市の大型施設に限られてくるという。

 同氏によると、国際間の競争を見ると、規模が大きく、1人あたりの消費単価が高いコンベンションは経済効果が高いため、近年韓国、中国、シンガポールなどのアジアやオーストラリアなどが誘致に非常に力を入れているという。これらの国は大規模な展示場を備えた大型の展示場を建設し、周辺にはホテルも次々とオープンしている。

 一方、これまで先進国的な立場にあった日本のアドバンテージは、続く円高に加え、今回の震災の影響もあり、相対的に落ちてきている。ここ5年から10年ほどは、日本から周辺の国へ流出する傾向があるという。奥山氏は、これからはアジア諸国が施設の整備を進めるなか、日本が国際競争で勝つための施設を準備しなければならないとし、「国のMICE政策が問われる」と述べた。


ユニークベニューが差別化の鍵
オーガナイザーとのマッチングも不可欠

理事兼主席研究員の武内紀子氏

 そうした課題があがる一方、武内氏はのコンベンションをはじめとしたMICE開催の強みとなるのは、博物館や美術館、古城、有名な建築物、風光明媚な公園といったユニークベニューだとした。同氏は開催地の競合となる他国がユニークベニューを強調してくるなか、「対抗し、差別化するためには、こちらもユニークベニューを積極的に打ち出す必要がある」と言う。

 しかし、奥山氏によると、地域の観光協会などから地元のユニークベニューやアイデアは出るものの、まだなかなか活用が進まないという課題も抱えているという。そのため、奥山氏は「今後はオーガナイザーのニーズをマッチングさせるための場が必要だ」と指摘する。


パートナーシップでコンベンションの受注へ
海外とのアライアンスも重要

 さらに、奥山氏は旅行会社がコンベンションの誘致に取り組むには「会議オーガナイザーの思いを読み込みながら会議全体を作っていく部分」が課題になると指摘。そのためには、「コンベンションのプロフェッショナルとパートナーシップを組むこと」が必要とした。奥山氏はパートナーシップを組んで「オーガナイザーが求めるワンストップサービスを提供する」ことが、旅行会社の強みになっていくとした。

 また、武内氏は「海外とのアライアンスも重要」と指摘する。世界各国は場合によっては競合することにもなるが、互いに誘致情報や開催手法を勉強したり、アウトバウンドでは協働の可能性もある。武内氏は「国内にとどまらず、世界的なネットワークを活用して誘致をしていかないと世界と互していけない」と考えを示した。


取材:本誌 栗本奈央子

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