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MICEスペシャリスト:JTB法人東京 企画仕入部企画販促課の福田敦氏

  • 2011年6月21日(火)

クライアント研究でMICEの新規参入に成功、イベント演出の受注が課題

 JTB法人東京で取り扱うMICEはインセンティブが中心だ。企画仕入部企画販促課の福田敦氏は、国内のMICE営業を経験後、5年ほど前から企画仕入部でMICEに携わっており、さまざまな法人に対するMICEの企画提案を行っている。MICEの第一線で働く福田氏に、成功のポイントについて、具体的な事例をまじえながら聞いた。

 弊社では企画のほか、営業とオペレーションが連動してチームを編成し、MICEの獲得から終了までを担当する。提案から実施までにかける期間は短いもので半年、長いもので1年半程度。毎年受注しているものを継続受注するケースと、他社が受注していたものを弊社が受注するケース、ゼロからMICEを提案するケースの3パターンがある。多いのは継続受注であるが、最近は新規で獲得する事例も増えている。多くのケースは実施直後に翌年の提案をするため、大概は1年前の提案となる。

 今回は、クライアントが旅行会社を通さず実施していたMICE案件を弊社で受注したケースを紹介したい。2011年2月に行なわれた国内のインセンティブで、クライアントは大手メーカー系列の販売会社。規模は250名。全国の販売代理店を対象に年1回実施する報奨イベントだ。

 そもそもこの報奨イベントは、20年以上前から固定のスタイルで継続されていた。会場は都内のホテル。全国の販売代理店を東京に招き、宴会場で表彰式や懇親会を開催していた。旅行会社は使わず、クライアントがイベント会社を通じて実施していた。

 こうした伝統ある報奨イベントでは、問題なく実施されている限り、クライアントはスタイルの変更といった冒険にはなかなか踏み出さない。しかし、今回のイベントは長年実施するなかでいくつか課題も生まれていた。1つ目はマンネリ化。イベント自体は成功しているものの、なんとなくマンネリ化した感じがクライアントと参加者の双方にあった。イベントの演出を工夫することで対応していたが、2010年はサプライズゲストを呼んだことが非常に好評だったこともあり、クライアント側の担当者によると、翌年にそれ以上のイベントを考案するのは難しいとのことだった。

 2つ目は、クライアントの社長の交代により、イベントの意味づけに変化が求められたこと。新社長は、自社と販売代理店が「招く側と招かれる側」に分かれるのではなく、同じ目線に立って共にひとつの方向に向かいたいと考えていた。そのため、クライアント側の担当者にはもっと親密感のあるイベントを企画するように指示が出されていた。そこで弊社の営業担当に相談がきたのだ。

 このように、会社の方針、経営者、マーケティングの方向性などの変更は一つの営業チャンスであり、常にそれを注視しておかないといけない。今回のようにタイミングを逃さず参入できたのは、営業が日頃からクライアントを研究し、こまめにコミュニケーションをとっていたおかげだ。

 弊社では、クライアントを徹底的に知ることから始めている。クライアントから打診を受けるとすぐにプロジェクト・チームを結成し、クライアントの研究に取りかかる。今回は営業担当5人と企画担当5人が、新社長のインタビュー記事を読むなど各自でクライアントの要望をリサーチ・分析し、3回ほどミーティングを重ねてコンセプトを立案した。

 ミーティングを続ける中、クライアントの「販売代理店との距離をもっと近づけたい」というニーズに応えるため、得意分野である旅行をイベントに組み合わせた。行き先はコミュニケーションが生まれやすいビーチ・デスティネーションで、人なつっこい笑顔が魅力的で、かりゆしウェアを皆で着て地元独自の音楽を楽しむといった、共通の体験ができる沖縄を選択。東京から距離は遠いが人との距離は近くなる「遠くて近い沖縄」をコンセプトに設定した。ただし、報奨イベントで都内から行き先を変更する際、クライアントが渋る理由として、第1に遠い、第2に(金額が)高い、第3に面倒くさいという理由があり、これらの点を解決しなければならなかった。

 第1の「遠い」に対しては、従来は1泊2日で実施していたため、2泊3日をベースにしながらも、忙しい場合など各自の希望に応じて1泊2日の短縮日程にも対応した。第2の「高い」については、交通費はかさむが、会場を沖縄に移すことで華美な演出をしなくてもイベント自体の魅力は低下しないということを説明。宿泊費、食事単価、会場設営費、演出費といった諸経費はむしろ安くなり、費用の総額は例年と変わらずに提案することができた。

 第3の「面倒くさい」については、これまでクライアント自身が手がけていた航空券や宿泊の手配を一手に引き受け、旅行会社が介入する強みを前面に打ち出した。旅行会社なので、これは得意分野だ。事務局として旅行会社を使うことで、招待客への航空券の送付などの手間がなくなり、クライアント自身にもむしろメリットがあるとアピールした。

 その結果、今まで旅行会社を利用したことがなかった本イベントを初めて受注することができた。クライアントの担当者も、都内から沖縄へと目先を変えることにより、例年のように演出内容で頭を悩ませることもなく、また沖縄の持つ「地域の魅力」により、当初狙った「親密感」という効果もあがり、満足を得られたようだ。

 今回は新規受注には成功したが、弊社で受注したのは往復の交通と宿泊、観光、それに付随する諸手続まで。イベントはクライアントが今まで依頼してきた外部のイベント会社が担当したため、その演出の受注はできなかった。弊社は、グループ会社にイベント会社があるため、共同でイベント演出まで請け負えるのも強みのひとつ。しかし、クライアント側で、ジェイティービー(JTB)グループでもイベントが演出できるという認知が、残念ながらまだ高くない。

 現在、イベント演出まで含めた受注は、首都圏に限ってもまだ一部にとどまっている。今後は、企画段階からグループ会社と共同で動いていき、受注を増やしていきたい。

 もうひとつの課題は、旅行やイベント終了後の効果を集約・分析する仕組みがないことだ。MICEにおける効果検証はもっとも重要なので、本来は自社でアンケートを実施し、集約すべきだが、現実はこれまでほとんど実行できていない。営業担当者は、まだまだ日々のルーティンワークが多く、なかなかそこまで手が回らないからだ。今回の事例は2011年2月に実施したので、現在は効果検証を実施すべき時期だ。クライアント側でアンケートを取り、ヒアリングする仕組みがすでにできあがっていたため、その結果をお預かりし、弊社で分析を行い、次年度への改善提案につなげたい。

 営業は、MICE実施後ただちに次回の受注に向けて動き出すので、その部分をカバーするのが本社や企画などバックヤードのミッションだと考える。終了後のアンケートの集約とデータ分析は、今年度から全社的に取り組んでいきたい。

 旅行会社が扱うMICE市場が発展していくには、商品が同質化して低価格競争になり、業界全体が疲弊する、という過ちを犯してはならない。旅行会社が単なる「旅行素材調達業者」だと、MICEに参入する価値をクライアントから認めてもらえない。それぞれの旅行会社がクライアントと強固な関係をつくり、ニーズに合ったプランをひとつひとつカスタマイズし、クライアントの価値向上を提供する事業パートナーとなっていくことで、旅行会社がMICEを取り扱う価値を明確にアピールしていく必要があるだろう。



取材:本誌 栗本奈央子

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