「そとあそび」買収でさらなる飛躍へ-アソビュー代表取締役CEOの山野智久氏

コロナ禍で人気集まるアウトドアを強化
チケット販売分野でDX推進も

-BtoB向けに展開されている、DX推進事業について教えてください

山野氏 山野 アクティビティ提供会社やレジャーチケットを販売する施設を対象に、オンラインでの予約・チケット販売管理ソリューションを提供し、DX推進をはかっている。消費者目線で言うと、チケットの場合、スマートフォンで購入し、入場口でスマートフォンをかざせば非接触で入場できる機能だ。仕組みは自社で内製している。

 DX推進のため、昨年12月には政府系ファンドなどから総額13億円の資金調達をし、コロナの影響を加味しつつも社員を50名増やすという攻めの採用をした。資金調達は今回が最終ステージだと思っているが、状況に応じて手段を柔軟に検討していきたい。

 そもそも、DXの目的は2種類ある。1つ目は企業や事業主の経営効率化、業務の生産性向上のためのもの。2つ目は消費者が享受する利便性の向上だ。我々がまず注力するのは1つ目で、重要なのは情報や商取引のデジタル化だと思う。例えば住所や電話番号、写真、紹介文など、今までポスターやタウンページなどに掲載していた情報をデジタル化する。さらに商取引における予約・購入・決済のデジタル対応は我々の本丸だ。それが対応できるようになれば、結果的に消費者の利便性向上につながる。

 コロナでデジタル化への抵抗がなくなってきた。今まで勘に頼って決めていたマーケティングコストのROI(費用対効果)を可視化し、最適化する事業者も出てきている。我々にとってDX推進はチャンスで、今後さらに取引企業が増えていくと思っている。特に中央省庁や自治体運営の博物館や庭園といった施設での導入が増えていくだろう。

 我々は観光産業の予約・販売・精算業務の効率化を推進するサービスを提供し、蓄積したデータを活用したマーケティングで投資対効果を上げる取り組みを実施している。チケットのダイナミックプライシング(価格変動制)への対応については技術的には可能だが、現時点では提供していない。必要に応じて検討していくが、どこまでお客様の購買意欲に影響するかは、今後検討すべき領域だと思う。

-最後に観光業界の皆様にメッセージをお願いします

山野 「耐えれば勝ち」ということに尽きる。もちろん、限られた予算やアセットのなか、お客様に対しできることを最大限やることは必要だが、本丸は耐えること。泥臭い戦略で華もなくきつくて楽しくないが、それを理解した上で、それでも耐える戦略を実行することが観光産業に求められていることだと思う。

 コロナ禍でともに耐えるという一体感が産業に生まれつつあり、業界のスクラム感は増した。全員で慰めあいながらも耐え終わったとき、さらにスクラムを強化できればいいと思っている。

-ありがとうございました