「銀行はこう使え!」-メガバンク元営業担当が本気のアドバイス vol.4

銀行の与信案件審査とは?
5つの格付で判定

銀行の融資先は5つの格付に振り分けられる

 与信案件検討の第一歩である格付について触れていきます。銀行は企業から提出される決算書を基に格付を行います。案件審査もそうですが、「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー表(C/F)」が審査のベースとなり、これら財務情報から格付に必要な各種指標を算出し数値化します。この数値に応じ企業の定量評価が決定し、必要に応じて定性評価を反映させて格付が付与されます。

 基本的に定量評価の方が比重が重く、定性評価は余程の内容でない限り加味されないと思った方が賢明です。この格付により銀行は以下のように「債務者区分」を判定します。

債務者区分 概要
正常先 業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者
要注意先
(要管理先)
金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者
破綻懸念先 現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)
実質破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者
破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、例えば、破産、清算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者


 金融検査マニュアル自体は令和元年12月に廃止となっていますが、銀行の考え方のベースは変わりません。債務者区分が「正常先」と判断されれば、与信検討も比較的前向きに取り組んでもらえます。

 「要注意先」となると、途端に与信判断のハードルが上がります。審査のための資料も事細かに求められますし、銀行の保全を確保するために各種担保の提供や保証協会の利用などが求められます。審査が通らないことも考えられますし、銀行によっては門前払いとなるケースも想定されます。

 破綻懸念先以下となると、与信検討はまず困難となるでしょう。余談ですが、銀行はこの債務者区分に応じて引当金を積みます(≒銀行が費用を計上する)。要注意先以下となればそもそも「回収懸念あり」と判定されている上に費用まで計上するので、相当の利息を取らなければ収支がマイナスとなります。一般的に要管理先で約15%、破綻懸念先で約70%の引当金を積むと言われますから、貸出金利が1~3%程度と考えれば何故消極的になるか容易に想像がつくと思います。

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