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澤田氏「HISは平和産業へ脱皮」-40周年&新春インタビュー

ホールディングス制移行で事業多角化を加速
期待の星は太陽光パネル、新たな航空券ビジネスも

-HISにとって、このような海外のトラベルテックのM&Aは初めてのことですが、不安材料などはありますか

新たなコーポレートロゴと澤田氏 澤田 今回のM&Aは旅行会社ではなくシステムの会社なので、確かに毛色が異なる。難しいのは企業としての文化が違うところで、国によって考え方が違う部分もある。安易に取り組むと失敗しかねないが、HISはこれまでに数々のM&Aを成功させており、ノウハウはある。

 旅行業はITとシステムの時代で、今後はそのための人材も大切になってくる。ヒューマンタッチのサービスも残るとは思うが、AIがもっと進化すれば、問い合わせに対してもすべてAIがチャットで回答し、最適な旅程を組んでくれるようになるだろう。

-昨年はユニゾホールディングスのM&Aに失敗した一方で、株式売却益により29億円を得ましたが、今後のホテル事業はどうなるのでしょうか

澤田 今後の3年から5年ほどで、国内と海外でそれぞれ100軒ずつ運営したいが、軒数だけにこだわっているわけではない。ホテル事業とあわせて不動産事業にも取り組んでおり、スピードも大切だが「良い物件と良い案件があれば進める」というスタンスで、無駄がない案件に投資していく。

 国内では現在、毎月1軒ずつ「変なホテル」を開業している。海外は4ツ星や5ツ星のホテルが中心で、最近ではウズベキスタンで土地を取得し、建設に取り掛かろうとしている。トルコでも2軒を建設中で、ニューヨークとロンドンでは開業を準備しており、そのほかニュージーランドやベトナム、韓国などでも計画を進めている。今後の経済成長が楽しみなウズベキスタンについては、金融事業でも進出を考えている。

-再び航空業界に挑戦するお気持ちはありますか

澤田 航空についてはスカイマーク(BC)とタイのアジア・アトランティック・エアラインズを立ち上げ、そのほかクルーズについても長崎と上海を結ぶ客船の「オーシャン・ローズ」を就航させたが、いずれも簡単ではなかった。HISはソフトの会社だからか、航空やクルーズなど「動くハード」の運営は難しい、というのが実感だ。一方で、ホテルや不動産などの「動かないハード」はうまく行っている。

-事業承継について、現時点のお考えをお聞かせください

澤田 いずれはしなければならないし、私が元気なうちに承継した方がいいだろう。海外旅行の分野でダントツの一番になれたら、社長は辞めようと思っている。

 早ければ来年、遅くても再来年には、現在の幹部のなかから次の社長を、皆で選べば良いと考えている。私がいなくても発展していける会社が理想で、今はその体制を整えているところだ。

-昨年、一昨年と個人で海外旅行をされたと聞いていますが、旅の途中で新たな気づきはありましたか

澤田 今の旅行者はみんなスマートフォンを使っている一方で、紙のガイドブックも持参していることに気づいて、面白いと思った。私にとってスマートフォンは「便利なのでついつい使ってしまうが、できれば使いたくない」という存在だ。スマートフォンだけを頼りにしていると、考え方が周りの人と同じになってしまう。私が求めているのは、周りの人々とは違う考え方のできる「変な人」だ。

 デスティネーションについて言えば、東欧やバルト3国が発展し、インフラが整ってきたと感じた。旅をすると、常に新たな発見や巡り合わせがあるから面白い。実はポーランドの会社の太陽光パネルも、ヨーロッパ旅行中に見つけたものだ。

-ありがとうございました