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週間ランキング、アクセス解散に圧倒的注目-2週連続で業界変化を痛感

[総評] 今週の1位は、当然アクセス国際ネットワークが2021年3月にサービスを終了することをお伝えした記事でした。驚天動地というと大げさかもしれませんが、旅行業界にとってはそれくらいのインパクトがあったのではないかと思います。

 3月のトラベルポート・ジャパンとの統合計画発表と9月の白紙撤回、そして解散決定とジェットコースターのような展開で、日本の大企業らしからぬ決断スピードと感じますが、内部ではどのような議論があったのでしょうか。

 3月の発表会見の場で日本航空(JL)執行役員国際旅客販売本部長の柏(かしわぎ)頼之氏は、「JALCOMの時代からすると50年以上の歴史があり、操作性に慣れておられて、アクセスしか触られていない方も多くいらっしゃる」と話され、アクセスをベースにすることが「旅行会社との関係にとっても旅行会社にとってもいい」と判断したと説明されていました。

 これをそのまま受け取って今回の決定を眺めると、アクセスしか使用したことがない旅行会社従業員もいるがもはや気にかけない、そして旅行会社との関係にとって、あるいは旅行会社にとって良くないことが起きても仕方がない、と考えたということになります。もちろん、国内線用の端末を新たに用意するなど実際には影響を最小化するお考えとは思いますが、印象という意味ではそうなってしまいます。

 JL側からすればトラベルポートに責任の一端を負わせたいところかもしれませんがトラベルポートにはトラベルポートの言い分があるはずで、さらにアマデウスを推奨GDSとしたこともあり、今後の展開次第ではさらに一波乱あるかもしれません。

 気になるのは旅行業界への影響で、記事でも書きましたがアクセスの製品は業界のインフラとなっている部分も多く、当然不要な混乱は避けられるように進められていくとしても、ユーザー側からすると早く決まらないことには落ち着いて仕事をすることができません。

 また、可哀想なのが専門学校などでアクセスの操作方法を学んでいる学生たちで、例えば年度の途中からインフィニに変わるようなことがありえるのか分かりませんが、もしすでにそのカリキュラムを修了して後は来年4月に就職してスキルを活かすだけという状態の学生がいるとすれば、同情を禁じえません。まあベースがあれば他のGDSの習得も早いはずですので無駄にはならないでしょうけれども、当人たちの心中はそんなに簡単には割り切れないような気がします。

 個人的には、2007年にトラベルビジョンへ入社した直後に当時の松原社長へのインタビューに同行し、GDSではなくCRSとしての矜持を持って、という趣旨のご発言をされていたことが強く記憶に残っており、その後のいつ頃からかGDSを自認されるようになったことと合わせてアクセス国際ネットワークに対する認識となっていました。

 しかし、今回情報収集のために同社のウェブサイトを見に行ったところ、ウェブページのタイトルが「AXESS - The Japan's Leading CRS Company | 株式会社アクセス国際ネットワーク」となっていることに気付き、アイデンティティ・クライシス的な印象を受けました。

 Internet ArchiveのWayback Machineで調べると2006年の2月19日から3月1日までの間に実施されたサイト刷新以来、タイトルもサイトの構成も変わっていませんので、単純に次のリニューアルがなく誰も気にしなかっただけかもしれませんが、そうだとすれば、どこをどうやってめざすのかという意識が組織全体に浸透していなかったのではないかと感じるところです。

 それにしても、トーマス・クックの破綻について書いた翌週にこんな話題が飛び込んでくるとは思いもせず、偶然といえば偶然なのでしょうけれども、やはり潮目の変化が大きく表面化しているような気がしてなりません。今年も残り3ヶ月弱ですが、これ以上に大きな話題が飛び込んでくることがあるのかないのか、あるとすれば悪い方の話題である気もし、なるべくであればこのままつつがなく年越しを迎えたいと願ってしまいます。

 なお、これほど重要な記事であるにも関わらず号外の配信時に別のURLをお送りしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。私が設定を誤りました。そういうミスをする人間であると自覚し、気をつけなければと思っていたにもかかわらずのこの結果で、明石家さんまさんの「生きてるだけで丸儲け」、箕輪厚介さんの「死ぬこと以外かすり傷」といった言葉にすがりつつも、なかなか大きなかすり傷でしょげかえっています。

 これを機会としてもう二度と、というつもりはもちろんあるものの、そう思っていての今回なので軽々には言えません。とりあえずは、「こういう人間でもなんとかやっているんだから」と思っていただけるのであればそれで良いと考えるようにします。(松本)

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