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時間外労働はいかに削減すべきか-座談会レポート(後・匿名編)

  • 2018年11月12日

違反すれば刑事罰、訴訟・賃金倍返しも
弁護士と大手6社による「本音」の意見交換

会場の様子  日本旅行業協会(JATA)はこのほど開催した「ツーリズムEXPOジャパン2018」で、「旅行業界で時間外労働削減は本当にできるのか ~マネジメントの意識改革は実現できるのか~」と題したセミナーを開催した。毎年「人事担当の本音シリーズ」として実施している企画の第3弾で、今年は大手旅行会社6社からJATA研修・試験委員会の所属委員がモデレーターやパネリストとして登壇。各社の取り組みについて説明するとともに、基調講演を務めた弁護士との意見交換も実施した(前編へのリンク)。後編では会社名と氏名を伏せた上で、各パネリストの「本音」を紹介する。

モデレーター
東武トップツアーズ執行役員能力開発室長 山田徹氏

パネリスト
JTB人事部人材育成担当マネージャー 山内浩世氏
ジャルパック人事総務部長 鈴木健司氏
日本旅行総務人事部マネージャー 大賀賢一郎氏
農協観光総務部人事教育課長 浅野弘巳氏
名鉄観光サービス総務部課長 吉田雅子氏

講師・コメンテーター
御堂筋法律事務所 弁護士 谷口和寛氏

 各社の現況説明の後の意見交換では、まずは複数のパネリストが「意外と効果がある」と語ったパソコンの強制シャットダウンについて議論。あるパネリストは「導入前はハレーションが大きいのではと心配していたが、導入してしまうと意外とみんな『仕方がない』と諦めて帰宅する」と様子を伝えた。

 一方で他のパネリストは「トップダウンで1ヶ月だけ実施した。社員からは不満の声が挙がったが、ルールが明確なので(取り組みとして)分かりやすかったかもしれない」と振り返った上で、結果的には本来の趣旨とかけ離れた状況が生まれたことを説明。具体的には、繁忙期ではないにもかかわらず、平日のうちに仕事を終えることができずに休日出勤につながったケースや、始業時刻には制限を設けなかったことから早朝出勤が発生したケースなどを紹介した。また、あるパネリストは「20時でシャットダウンする旨を伝えると、一部の社員には『20時までは仕事をしても良いんだ』と理解してしまう人もいる」と述べ、趣旨を理解してもらうことの難しさを伝えた。

 なお、あるパネリストは強制シャットダウンに関連したエピソードとして「例えば18時半開始の飲み会などを企画すると、みんな『何が何でも終わらせる』という意気込みで仕事をする。意外と効率的だったりする」と語り、「終業時刻を強く意識する必要があるし、それぞれの仕事についてもデッドラインを設けることが必要」と強調。強制シャットダウンについては「社員を苦しめるリスクも考えたが、形から入ることで意識が変わることもありうる」と肯定的な見方を示した。