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HIS澤田氏が語る「成功するビジネス」と未来-十人会例会から

  • 2015年4月23日

業界関係者向けに貴重なトークショー
旅行業への思いを改めて力説

スカイマークの運営には戻らず

 何もかもうまくいっているように見える澤田氏の取り組みだが、未だに成功モデルに辿りついていないものがあるとすれば、それは“乗り物ビジネス”だろう。現在、再建に向けた取り組みが注目を集めているスカイマーク(BC)は、澤田氏が創業し、黒字化した上で手放した。そして今回の再生にあたり、HISは支援会社として名乗りを上げている。

 澤田氏は今回のBCの経営破綻について、「理由ははっきりしている。中距離路線を同一機種で効率的に運航するモデルは、既にサウスウエスト航空(WN)が作り出していた」と述べるとともに、「長距離路線に手を伸ばすと経営が難しくなる」と指摘。今後のBCの再起については「あくまでも第3極としてやるべき。第3極がないと良い競争にはならない」と強調し、「日本の航空業界のためにも譲れない選択だ」との見解を示した。

 BCには創業時からのメンバーである井手隆司氏が、現在も代表取締役会長として在籍している。筆者からの「澤田氏が再度、BCの運営に関わる可能性はあるか」との質問については、「BCの創業時は手続きだけでも実に大変だった」と振り返り、現在は創業時よりも経営しやすい環境にあることを示唆。しかし運営に参画する意向は示さず、「次の世代での取り組みになると思う」と答えた。


旅行業は「厳しくてもやめない」

 トークショーの最後の質疑応答では、フロアから澤田氏に対して、海外OTAのエクスペディアの台頭に対する見解を問う質問が挙がった。これに対して氏は「新しい時代のビジネスモデルであり、欧米の市場を見ると脅威を感じる」と述べたものの、「日本やアジアでは、戦う余地は十分ある」と明言。これまでの経験を生かしながら、さまざまな取り組みによって戦い抜く姿勢を見せた。

 そのほか、「ハウステンボスの利益率に比べて、本業のHISの利益率は極端に低い。旅行業に取り組むことが馬鹿らしく感じるのでは」との質問に対しては、旅行“代理店”業の厳しさについて説明した上で、「旅行産業は平和産業であり大切な産業。やめるつもりはない」と宣言した(関連記事)。

 そのほかに澤田氏は、「自分の運を強くするためには、運が強い人と付き合うべき」などの持論を展開し、参加者に強い印象を残した。トータルで1時間40分に及んだトークショーは、氏のベストパフォーマンスの1つと断言して良いだろう。突っ込んだ質問にも笑顔を絶やさず回答する澤田氏の姿を目の当たりにした参加者からは、「会場に居られて本当にラッキー」「トークに感動した」との声も多く聞かれた。