奥日光「400万円ツアー」が不発 いまだに申し込みゼロ

山下龍一
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 【栃木】海外富裕層の利用を念頭に、東京都内から奥日光へヘリコプターで直行する「400万円ツアー」が苦戦している。県が昨年10月中旬から売り出したが、申し込みはゼロ。価格を290万円に下げても成約がない。県は訪日客の受け入れ拡大をうたうが、戦略の見直しを迫られそうだ。

 ツアーの事業主体は県。観光庁の「観光再始動事業」に採択され、全額国庫負担で、県の一般会計予算に1500万円を計上した。

 2泊3日の行程で、都内と奥日光の往復はヘリコプターを使い、「ザ・リッツ・カールトン日光」(日光市中宮祠)にとまる。日光東照宮造り酒屋の見学もくみ込まれている。

 費用は1人あたり400万円。紅葉のシーズンに合わせて2023年10月中旬から12月上旬まで販売したが、申し込みがなかった。

 これを受けて、県は募集を今年1月末まで延長し、1人あたりの料金を290万円に下げた。イタリア大使館別荘記念公園でとる予定だった夕食を、日光田母沢御用邸記念公園での昼食に変更することなどで値下げした。

 訪日客専門のJTB関連会社を通じて販売に力を入れ、国内富裕層にもPRしているが、年が明けても成約に至っていない。県観光交流課によると、国に対する事業報告の関係で2月末には事業の清算を終える必要があり、大幅な募集期間の延長は難しい状況だ。

 担当者は「当初は紅葉を楽しんでほしいと売り出したが、販売の周知期間が短かったことが悔やまれる。もっと早く売り出したかった。より内容をオーダーメイドにして自由度を高めた方が富裕層の好みにあったのかもしれない」と話す。

 状況は追い風だった。県内分の23年の外国人宿泊者数は過去最多を記録。観光庁が発表している「宿泊旅行統計調査」(速報)によると、23年1~10月の累計は36万1130人と、これまでで最多だった19年の35万4830人を上回った。

 福田富一知事は1月5日の年頭会見で「海外富裕層をターゲットにした受け入れ環境の整備などにより、外国人観光客のさらなる誘客と観光消費を促進する」と、訪日客の取り込みに意欲を見せていた。(山下龍一)

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