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「コロナ禍で原点回帰、明るい光が先に見えている」
クラブツーリズム代表取締役社長 酒井博氏-新春インタビュー

「クラブツーリズム ニュースタイル」で新機軸
「新・クラブ1000構想」をプラットフォーム化

—約20年前に立ち上げられた「クラブ1000構想」を新たに「新・クラブ1000構想」に発展させると発表されました。その内容を教えて下さい。

1月1日にオープンした「新・クラブ1000構想」のサイト。今後さらに機能やサービスを拡充していく予定だという 酒井 クラブツーリズムはテーマ旅行を推進しているが、そのひとつひとつがコンテンツだ。たとえば、鉄道、歴史、写真、芸術、登山、ハイキングなど、趣味のコミュニティをオンライン上で創っていきたい。

 現在700万人ほどの会員を持っているが、「新・クラブ1000構想」のコンセプトは、その人たちの旅マエで接点を持つということだ。メインは65歳〜75歳だが、このあと10年間、減少していく。2030年になると団塊ジュニアがシニアになり、またメインターゲット層が増えてくるが、減少するこの10年を指をくわえて見ているわけにはいかない。また、クラブツーリズムの認知度が低い若い層にも、将来のメイン顧客として、名前と存在は売っていかなければならないと思っている。

 さらに、パートナーを組む企業の顧客にも注目している。これまでもさまざまな企業とパートナーを組んできたが、これまでは旅行サービスでの協業に限られていた。新しい取り組みでは、企業が持っている顧客とクラブツーリズムの顧客を融合すれば、両社がウィンウィンになることも出てくるだろう。たとえば、写真であれば、カメラ関連の企業と組めば、そのパートナー企業は写真を趣味とする人に確実にリーチできるようになる。

—課題はどのような点ですか。

酒井 クラブツーリズムからパートナー企業側の顧客へのリーチだろう。企業側の顧客にはより深く趣味を追求している人たちが多い。その人たちが、テーマ旅行の中で何を求めているのかを探っていく必要があるが、逆にこれまで経験したことがないような旅の要素が出てくるのではないかと楽しみにしている部分でもある。それよって、我々が成長できるチャンスにもなるだろう。

 クラブツーリズムの企業理念のひとつには「顧客参画」というものがある。新しく立ち上げるプラットフォームでも、クラブツーリズムの顧客とパートナー企業との顧客がマッチングして、新たなコミュニティができれば、さらにおもしろくなると思う。趣味だけでなく、地域という括りでもいいと思う。たとえば、京都でもいろいろなニーズがあるだろう。我々としては、試行錯誤をしながら、発展させていきたいと考えている。

 クラブツーリズムから会員向けの一方的な情報発信は今月あたりから始めるつもりだが、今年6月か7月に正式に双方向のコミュニケーションツールにしていく予定だ。

—このコミュニティ・プラットフォームでの収益化はどのようにお考えですか。

酒井 ひとつはサブスクリプション。月額課金プランを購入された会員向けには、毎月趣味に合わせた特別なサービスを提供していく。旅行はそれほど頻繁に行くものではないが、コミュニティサイトは毎日触れてもらえることで価値が高められるのではないかと考えている。また、さまざまな企業と協業していくが、そのパートナーとなる企業の広告などでもマネタイズできるのではないか。さらに、コミュニティの中で資格試験などを設けて、合格するごとに段位が上がっていくような仕掛けも考えている。特にシニア層は学びの意欲が高い。

—旅行事業ではフランチャイズ化を進めるとおっしゃられていますが、もう少し具体的に教えて下さい。

酒井 ここでのフランチャイズとは、地域での展開という意味になる。たとえば、このコミュニティモデルがある地域で成功すれば、それを他の地域に移植していく。我々が運営するのではなく、プラットフォームを貸すという考え方だ。地域事業に入り込み事業費を取りに行くビジネスは持続性がない。そういう地方創生はやりたくない。観光地域づくり法人(DMO)などは、情報発信で悩んでいるのではないか。そこをお手伝いできればと考えている。