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五輪や羽田枠拡大で飛躍、出国2000万人達成後は-年頭所感(1)

全国旅行業協会(ANTA)会長 二階俊博氏

 今年は2月に熊本城ホールで「第15回国内観光活性化フォーラムinくまもと」を開催する。全国47支部の代表をはじめ、自治体や旅行・観光関係者など多くの方々に、地震からの復興が進む熊本の地にご参集いただき、本大会を成功させて国内旅行の活性化につなげていきたい。

 昨年は台風15号・19号などによる災害が各地で発生し、送客キャンペーンの実施や観光復興に向けた情報提供などに努めたが、今年も被災地域の観光の1日も早い復興をめざし、行政や関係団体と協力して国内旅行の需要喚起を通じた振興に努める。今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、東日本大震災からの復興の後押しと旅行・観光交流の一層の盛り上がりが期待されるので、日本の旅行・観光業界にとって大きな意味を持つ大会となる。

 国際観光については、昨年12月に山梨県北杜市で第1回の「日中観光代表者フォーラム」が開催され、双方向交流1500万人の目標実現をめざす「山梨宣言」がまとめられた。観光交流はノコギリを引くような行ったり来たりの繰り返しが大切で、私たち旅行業界が先頭に立って、さまざまな国・地域との双方向交流を積み重ねて、旅行需要の喚起に取り組むことが何よりも重要だ。

 今年も旅行業協会として会員への情報提供と指導に努め、旅行取引の適正化、旅行の安全確保、旅行者の利便の増進に万全を期す。観光が明るくなれば世の中は必ず明るくなる。今こそ行政と産業が一体となって、これまでに培ってきた長年の経験と英知を結集し、旅行産業の発展に努めたい。

日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)会長 大畑貴彦氏

 昨年は旅行業界にとって悲願だった、日本人出国者数2000万人に辿り着く大きな節目の年になりそうだ。1964年の海外渡航自由化から数えて55年もの歳月が経過したが、ここに至るまでにはさまざまな出来事があった。自由化当時の海外旅行は費用も高額で、渡航者もごく一部の富裕層に限られ、一般庶民には夢だった。

 現在では所得も増え、旅行費用は下がるなど、特に海外旅行については手軽に旅行に行きやすい環境となり、国内旅行並みに楽しんでいる方も増えている。また、顧客の嗜好やライフスタイルそのものが変わり、より便利な方向へと進んでいる。

 しかしその一方で、大手OTAに対し公正取引委員会の立入検査が実施されるなど、便利さだけでは解決しない部分も露呈されている。背景には価格競争の激化があり、事業者間取引のあり方や消費者にとってのメリットなどについて、旅行業界に一石を投じた。また、178年間続いたイギリスのトーマスクック社が破綻するという衝撃的なニュースもあり、我々も今まで以上に旅行業界のあり方を熟考し、新たな旅行業界のビジネスモデルを探索する時だと痛感している。

 世界ではAIとツーリズムの関係について討論され、一部の歴史学者などは、AIに雇用市場を変えられてしまう絶滅危惧種として旅行業を挙げている。今後の動向次第では、本当に旅行業界が絶滅するかもしれない。しかし私は、旅行ビジネスはまだまだこれからで、AIの次に何が来ようとも我々の知恵次第で旅行ビジネスを発展させることが可能で、何事にもポジティブに冷静に対処することで未来は切り開けると信じている。「海外旅行の振興」と「真のツーウェイ・ツーリズムの実現」を心から願う皆様との「協働」を通じて2020年をより良い年にしたい。

日本外航客船協会(JOPA)会長 坂本深氏

 今年は初めて新しい元号で新年を迎えた。平成元年に始まった「クルーズ元年」から31年が経ち、令和の幕開けとともにクルーズ業界にも新しい時代が訪れる予感がする。2018年の日本のクルーズ人口は過去最多を更新し32万1000人に達したが、19年と20年も30万人の大台を維持し、過去最多記録を更新することを祈念する。

 近年の外国船社による日本発着クルーズは、国内市場の拡大に貢献している。参入船社の数が増えただけでなく、外国客船をチャーターする旅行会社も増え、JTBによる初の「サン・プリンセス」チャーター世界一周クルーズは、JOPA主催の「クルーズ・オブ・ザ・イヤー2019」でグランプリの国土交通大臣賞を受賞した。新規参入する旅行会社も増え、通信販売関連会社が大型客船を年に複数回にわたってチャーターするなど新しい動きもあり、新規マーケットの開拓に寄与するものと期待している。

 日本船社の集客も好調に推移している。瀬戸内海エリアとのコラボレーション企画を開始したにっぽん丸は瀬戸内国際芸術祭と連携した新たなクルーズを展開し、ぱしふぃっくびいなすは日本海側の地方発着クルーズが好評で、市場の拡大に貢献した。また、飛鳥IIが昨春の大型連休に実施したサイパン・グアムクルーズでは、同船の10泊以上のクルーズでは初めて乗客の平均年齢が50歳代を記録した。いずれも「クルーズ・オブ・ザ・イヤー2019」では優秀賞を授賞している。

 03年に導入したクルーズアドバイザー認定制度による、クルーズ・コンサルタント認定試験の合格者数は昨年までに8422人に達した。クルーズに精通した販売要員の育成は市場拡大に不可欠と確信しており、クルーズアドバイザー1万人時代をめざして、引き続き人材育成に取り組む。

 一方、18年の国際定期旅客船の利用者数は、韓国からのお客様に支えられ、10年以降キープしている100万人の大台を維持して146万3000人となったが、日本人利用者数は過去6年間、ピーク時の半分に満たない水準で推移している。また、日韓関係問題による19年の利用者数の大幅な減少が見込まれるなか、取り巻く環境は厳しいものがある。1日も早く関係改善が進み、物流にとどまらず人流でも大きく貢献できる時代がやってくることを願っている。

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