週間ランキング、1位はJTB組織再編、卒業旅行企画コンテストも

[総評] 今週の1位は、ジェイティービー(JTB)が来年4月に予定している組織再編について計画の一部が発表されたもので、最も目につくのは、記事のタイトルにもありますが社名を「ジェイティービー」から「JTB」へと変更するという点です。トラベルビジョンでは常に「ジェイティービー(JTB)」と表記してきており、私のパソコンでは「じぇいt(jeit)」と入力すれば変換できるように登録もしていましたが、これも不要になります。

 ジェイティービー、あるいは似たようなところでジェーシービーといった会社はローマ字表記を前提としているのにカタカナが正式名称ですが、これはかつて登記の際にローマ字の使用が認められていなかったことによると思われます。2002年からはローマ字や数字、記号が使用できるようになっていたのですが、変えるには至っていなかったということでしょう。

 業界外で見ても、例えばSONYは「ソニー株式会社」であるのに対して売却されて独立したPC事業は「VAIO株式会社」、といったことはよくあり、JTBにしてもグループ会社はカタカナ表記だったりローマ字表記だったりと様々です。

 だからなんだといわれると困りますが、そうはいっても名前というものは非常に重要です。以前にも当欄で書いたことがありますが、名付けとは名前のないものの集合からそれを取り出すということです。

 例えばサザエさんの磯野家が飼う猫は「タマ」という名前ですが、それがなければオープニングで魚をくわえて逃げる個体と同じ一匹の猫でしかなくなります。また固有名詞でなくても、猫という呼称がなければ、あるいは哺乳類、生き物という言葉がなければ世の中はどのように見えるでしょうか。

 名は体を表すという言葉もあるなかで、ジェイティービーがJTBに変わるからといってどのような変化があるかは分かりませんけれども、仮に目に見える効果がなかったとしても、変化していくのだという社内外へのメッセージとしての意味は十分にあるのではないかと思います。

 また、名付けという意味では、7位の記事でもその大切さを感じます。記事は、日本旅行業協会(JATA)が実施した「海外卒業旅行企画コンテスト2017」の選考結果をお伝えしたもので、文教大学の学生たちの企画「それ行け!後回し女子~『現』体験でフッ軽女子への第一歩~」がグランプリを受賞しました。

 情報量が多すぎるような気もしますが、「海外旅行には行きたいが後回しにしがちな女子」を「後回し女子」、海外旅行を体験してフットワークが軽くなった姿を「フッ軽女子」とそれぞれ名付ける試みは、学生らしい軽さやエネルギー、そしてスピード感もありとても印象的です。

 優秀賞と審査員特別賞の企画名「情熱大陸スペインでエネルギーチャージ」や「行かなきゃなにもはじまらない」、「未来に向かう私たちに」、「未来への足跡~卒業アルバムのラストページ」と比較すると、こちらはありきたりであったりメッセージが不明確であったり、企画の中身はさておきタイトルの差は一目瞭然であるように感じます。

 もちろん好みによっても評価は変わるはずですが、言葉というものは誰かに何かを伝えるためにあるわけで、独りよがりでは意味がありません。

 言葉について苦手意識を持たれる方もいらっしゃるでしょうし、多少はセンスであるとか先天的な部分もあるのかもしれませんが、本当に大切なことは言葉の使い方以前に、もし自分が相手の立場だったらこの言葉をどういう風に受け取るだろうか、という客観的な視点です。そして、そのために大事なのは、どれだけ具体的に相手の立場に立って考えられるかという想像力です。

 「言うは易く行うは難し」かもしれませんが、本来こうした客観的な想像力はサービス業にとって必須のスキルでしょう。いいかえれば、お客様(や話し相手、読者など)の気持を理解しようとすることが、効果的な言葉の使い方にもつながるのだと思います。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2017年09月29日0時~10月06日12時)
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第10位
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※除外した記事(本来は10位以内にランクイン)
人事、日本旅行管理職-10月1日付(17/10/01)
人事、ANAセールス役員-10月1日付(17/10/01)